FC2ブログ

    クリスタルの断章

    そのクリスタルは、無限とも思える情報を記録できる情報媒体だった。現代にこぼれ落ちた微細なかけらには、小説のようなものが記録されていた……。オリジナル小説ブログです。

    日本ミステリ98位 異郷の帆 多岐川恭

    東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

     大学で勉強にも生活にもサークル活動にも行き詰まり、就活するパワーもなければ進学するほど勉強もしていない、という時期に、下宿先の市立図書館で初めて読んだ。地味な作品だな、と思った。そのときは、やはり、評価できるほどの精神的余裕がなかったのだろう。

     それから幾星霜。昭和の謎解きミステリを再評価したブックガイド「本格ミステリ・フラッシュバック」が出版されたとき、ふと興味を覚えて再読することにした。完全に内容を忘れていたので、再読してびっくりした。すさまじいまでの大技トリックが盛られた、江戸時代を舞台にした本格ミステリだったのである。

     今回で読むのは三度目。感想だが、「長崎出島という狭苦しい環境で長年過ごすと、人間はこうもなるのか」という、苦い人間ドラマを強く感じた。出てくる主要登場人物が、みんな人生に倦んでいるのがつらい。これは江戸時代がどうだというよりも、一種の「牢獄ミステリ」と呼んだほうがいいのかもしれない。それくらいにビターである。

     そうした視点で眺めると、この「異郷の帆」がこの位置にあるのもわかるような気がする。読んでいて痛快な小説ではないのだ。そういう作品を最後の「締め」の位置に持ってくることによって、編者はひとつの「意図」を込めたのではないだろうか。ミステリ界に安住せず、そこから外へ出ていけ、と。謎解きだけの作品ではない、という最終行のメッセージには、そうした裏があるのではないかと思う。

     それが合っているかどうかはわからないが、示唆に富む作品だとは言っておこう。歴史小説や時代劇が好きで、さらにミステリまで好きなら、必読の作品のひとつである。

     これで日本ミステリの100冊も完走した。相互リンクしてくださってる「いぢわるこみ箱」のこみさん、人間には、こうして、五年間の時間さえあれば、東西ミステリーベスト100を踏破することも可能なのだ。なんちゃって。

     さて、これからだが、後顧の憂いを断ち、「85年版東西ミステリーベスト100」を文字通りに完走するために、「101から198までの海外ミステリー」を踏破することにしようか、それとも、「2012年版東西ミステリーベスト100」のベスト100踏破にかかろうか。うーん、悩ましい。どっちのベストにも、面白そうな本がごろごろしているんだよなあ……。問題は、やったところで誰かそれを望む人がいるのだろうか、ということくらいだが……。
    スポンサーサイト

    ▲PageTop

    2019暑中見舞い

    いただきもの

     すっかり立秋も過ぎてしまいましたが、暦なんざ関係ねえ! 暑いもんは暑いんじゃ! というわけで、いただいた暑中見舞いイラストをUPします~(^^)

    e_sy19.png

     毎度おなじみECMさん。健康的な女の子に健康的な(?)軍用機に夏空、という王道のコンビネーションですね。
     機は野心的かつ使える機体をどんどん作ったのにヒトラーに嫌われて知名度でメッサーシュミットに勝てないハインケルです(我ながらひどいいいようであるな……)

    aioibashi_8.jpg

      こちらも毎度おなじみ黄輪さん。相生橋だそうです。地理名所に疎いので、あいおいばし、のスペルがこれで正しいのか自信がありません……。

    ellie-2019-暑中見舞い

     おなじみ、というか、いつもながらむちむちの女の子を描いてくださった矢端想さん。どうしてこれだけの絵を描ける人が毎年新人賞に投稿していてプロ漫画家になれないのか、編集者の鑑賞眼を疑ってしまいます。もう全ページカラーで応募したらどーやろ。

     今年もありがとうございました~!!!

    ▲PageTop

    「大殺陣」見る

    映画の感想

     「ジョーズ」の埋め合わせというか、毒を食らわば皿までというか、そんなつもりで、工藤栄一監督が「十三人の刺客」の次に撮った集団時代劇「大殺陣」も図書館から借りてきた。世の中に暗くてやりきれない時代劇選手権というものがあったとしたら、ベスト3に入ること間違いない作品である。大学時代に「十三人の刺客」がめちゃくちゃ面白かったのでレンタル屋に走って行って借りたのが懐かしい。見て、あまりにも暗いストーリーに「ずーん」という気持ちになったことを覚えている。

     それ以来敬して遠ざけてきたわけだが、「ジョーズ」が面白かったのでノリノリで見た。

     見たけどやっぱり暗くてやりきれないストーリーで会った(笑)。

     前作「十三人の刺客」の面白さは、やはり暗殺対象を周到な作戦をもって誘導した末、脱出不能の罠に閉じ込めた上で総攻撃にかかる、というゲーム性にあると思うのだが、この「大殺陣」の面白さは、そちらではなく、クライマックスの斬り合いに持ち込む前の、刺客たちの業の深すぎる生活描写にあるといえる。業が深すぎたせいか、爽快感が微塵もない仕上がりになっているのが、この作品を「永遠の二軍選手」にしているゆえんであろう。

     結末もやりきれない。今のテレビ時代劇では考えにくいようなものすごい結末もあるし、脚本の池上金男先生、容赦ないなあ。

     と、こうもドロドロでやりきれない時代劇なのだが、見た後は結構気分がよかったりする。そこはイタリアのネオレアリズモみたいに、暗い結末を突き詰めればなんとなく気分がプラスになるということだろうか。

     それと、35歳で早逝したがために、こんな映画を作られてしまう甲府宰相・徳川綱重と、同時代に生きたがゆえにとんでもない役をやらされてしまう大老・酒井忠清と軍学者・山鹿素行は、いったいどんな悪いことを前世でしたのかのう(笑)

    ▲PageTop

    「ジョーズ」見る

    映画の感想

     ブログDEロードショーの今回の企画は夏恒例の「きもだめし大会」だそうである。ホラー映画が苦手なわたしには酷な企画だが、今年も参加することにした。自分の変な所でのつきあいの良さがイヤになってくる(笑)。

     今回は、サメが襲ってくるホラー映画の原点にして決定版と名高い、スピルバーグ監督の「ジョーズ」を図書館から借りてきて見た。ホラー映画は嫌いなわたしは、心の中で「これから見るのは怪獣映画だ、これから見るのは怪獣映画だ」と自分に言い聞かせながらDVDをセットし、あきらめて見た。

     ほんとに怪獣映画だった(笑)。

     怪獣出現、人々のパニック、急造の防衛隊の出撃、敵味方双方、知恵を駆使した作戦(秘密兵器までありやがる(笑))を繰り出す死闘の末の勝利、と、、まさに完璧な怪獣映画。

     怖がるつもりが、どきどきしながら見入ってしまった。ちくしょう、ダマされたぞ。ひたすら面白いだけで、コワくなんかないじゃないか。

     俳優もみんな好演してるし、1億ドルの興行収益もよくわかる。しかしこれを撮ったときのスピルバーグが27歳か。天才っているもんだなあ。

     でも「2」以降の映画は見たいとは思わない。だって、第1作でこうなら、「2」以降は、ジャンプマンガによくある「強いやつのインフレ理論」により、バズーカ砲かビームライフルでも持ってこないとバランスが取れないじゃないか(笑)

     いや~面白かった。映画っていいもんですなあ!

    ▲PageTop

    日本ミステリ98位 ひげのある男たち 結城昌治

    東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

     高校に入り、ミステリとSFを中心に読書する、という願ってもない同好会があることを知ってそのまま飛び込み、先輩たちが買っては寄贈した膨大な蔵書にうへうへいいながら耽溺していたころに読んだ一冊で、結城昌治の長編デビュー作である。その時の読後感では面白かったように思う。内容をすっかり忘れてから30年ぶりくらいに再読。その結果、この小説の犯人を覚えていたことに気づいた。この東西ミステリーベスト100に入っている、別な小説の犯人だと思っていたのだ。別な小説のその立場の人には悪いことをしたと思う。30年もたつと記憶もあいまいであるなあ。

     さて、本書であるが、よくできたユーモア・ミステリである。読んだ感触としては仁木悦子の「猫は知っていた」と似たような、ソフィスティケートされた感じ。終始のほほんと話が進むように見えて、けっこう真実はビターなところも共通している。だが、登場人物のエキセントリックなところから、わたしはこの「ひげのある男たち」のほうが好きだ。作中でもっとも生き生きしている郷原部長刑事が、いい迷探偵ぶりを見せていてくれてにやにやできる。

     トリックもよくできているが、一番の白眉は、小説の中盤で起こるあのサプライズであろう。東西ミステリーベスト100のあらすじ紹介では、このサプライズまで書いてしまっているため、ちょっと興ざめだが、まるで落語を聞いているかのような笑いどころがあるのだ。

     こういう作家が、やるせないスパイ小説「ゴメスの名はゴメス」だとか、やるせないハードボイルド「真木シリーズ」を書くようになるのだから世の中はわからない。いや、あっちも好きだけど。

     わたしが「真木シリーズ」より「佐久シリーズ」のほうが好きなのは、あの愛すべき郷原部長刑事が登場したりして、ユーモア・ミステリでありながら、渋い私立探偵小説でもある、「過渡期」的なところに惹かれるからかもしれない。くすぐりを入れて笑わせながらも、ビターな真相を暴いていく「面白くてやがてかなしき」小説であるところに、わたしは結城昌治の最大の魅力というか、「本領」を見るのだが。

     こうなると読みたくなってくるのが、戦後の大阪での万引き集団を扱った、作者のユーモア路線の最高傑作といわれる「白昼堂々」である。小学生の時に押入れから掘り出し、読みかけて挫折して以来読んでいない作品だ。結城昌治は「軍旗はためく下に」よりもこちらで直木賞を取るべきだったと嘆く評者もいる。宿題にしておきたい。

    ▲PageTop

    伝奇小説ベスト10選

    おすすめ小説

     ひゃくさんから希望があったので、あまり読んでないが個人的ベスト。一作家一作品。

    1位 半村良「妖星伝」 江戸時代を舞台に、邪教集団、超能力者、宇宙人、UFO、なんでもありのエロスでバイオレンスなメチャクチャストーリーながらも高度にハードで哲学的なSFアイデアが炸裂する、SF伝奇小説の代表選手。最終巻にいたっては作者曰く「わかる人だけわかればいい」というもので、出版社ともめて十年以上お蔵入りしていたいわく付き。中学生のわたしをニヒリストにした作品(笑)
    他に…「産霊山秘録」

    2位 隆慶一郎「捨て童子・松平忠輝」徳川家康の子どもたちの中で、野心だけが人一倍大きかったにすぎないアホ、としかみなされていなかった松平忠輝を主人公に起用し、陰謀あり忍者あり美女ありなんでもありのデタラメを信憑性たっぷりに描き切った一大痛快巨編。本編では伊勢に配流されるまでで終わっているが、史実の松平忠輝はメチャクチャ長生きした人なので、作者の急逝でそれ以降が描かれなかったのは非常に残念。
    他に…「影武者徳川家康」

    3位 山田風太郎「魔界転生」 「忍法帖」シリーズの中でも、ひときわゲーム感覚あふれる作品。太平の世に魔人として蘇った剣豪たちから、美しい少女たちを守るために立ち上がった柳生十兵衛の痛快無比な冒険譚。敵役味方役含めて、オールスターキャストという言葉がぴったり。天草四郎も出るけど、映画とは違って普通の敵幹部。
    他に…「柳生忍法帖」

    4位 宇月原晴明「聚楽 太閤の錬金窟(グロッタ)」 力量に比べてあまりにもマイナーな気がする、「力作しか書かない伝奇小説家」。よくもまあこんな細かいことまで知ってるもんだ、と舌を巻くような博覧強記を駆使して、ムチャクチャな物語を書く人。本書は作者の作品の中で、いちばん道具立てが派手で分かりやすい。好き嫌いは分かれるが、癖になると後を引くタイプ。
    他に…「黎明に叛くもの」

    5位 宮本正孝「剣豪将軍義輝」 足利将軍のうちで、剣術にハマったことで知られる足利義輝を主人公にした伝奇巨編。すがすがしいヒーローを描かせたら右に出るものがない宮本正孝の筆になる、天下万民の平和を願い、政治的陰謀の中で徒手空拳で戦う青年将軍のカッコいいことといったらない。SF作家時代にヒロイック・ファンタジーで鍛えた活劇シーンも迫力満点。なんでも作者の一番のお気に入りのヒーローだそうである。
    他に…「風魔」

    6位 海道龍一朗「乱世疾走 禁中御庭者綺譚」 ある日あるときいきなり登場して、伝奇小説の読者を狂喜乱舞させた、陰謀渦巻く戦国時代を舞台にした痛快娯楽巨編。タイトルに偽りなく、疾走するかのようなパワフルでスピーディーな物語なのだが、一つ重大な欠陥がある。結末がないのだ。どうやら、全体の半分まで書いたところで作者が飽きてしまったらしい。とほほ。
    他に…「惡忍 加藤段蔵無頼伝」

    7位 谷崎潤一郎「乱菊物語」 誰もが知っている純文学の大家、谷崎潤一郎が生前に唯一書いた「娯楽に徹した大衆小説」。嘉吉の変をモチーフにしたと思われるが、明からやってきた船が謎めいた美姫とともに積んでいた秘宝とは何か? という冒頭のシーンから、ムチャクチャな話が展開される。しかし本書も話がここから本番、という時点で中断しているのが無念でならない。何度か再開の話はあったようなのだが。

    8位 安部龍太郎「関ヶ原連判状」 天下分け目の決戦を指呼の間に控えた時期、関ケ原の合戦を左右する「連判状」の秘密をめぐり、徳川方、豊臣方、細川家が卍巴で争う一大陰謀劇。サービス精神過剰でめちゃくちゃ面白い。問題は、展開が「史実」に収束してくるとパワーもスピードも衰えてくることと、サプライズエンディングの後味の悪さだろうか。それを抜いても読んでしかるべき作品である。

    9位 柴田錬三郎「柴錬立川文庫」 柴田錬三郎は何を読んでも面白い作家であるが、本書は真田幸村と真田十勇士を軸に、大阪城落城までの裏面を描き切ったエロスとバイオレンスあふれる作品。女性はみんな色っぽく、剣戟は実に殺伐と、柴田錬三郎らしい作品ではある。生まれて初めて読んだ大人向け伝奇小説でもある。
    他に…「赤い影法師」

    10位 池宮彰一郎「四十七人の刺客」 伝奇小説は本書以前と以後に分かれるのではないか? とまで思えてくる、斬新極まりない忠臣蔵小説。ここでは、吉良邸討ち入りはひとつの「軍事作戦」として討論され、立案され、実行されるのだ。いわば忠臣蔵をネタに軍事スリラーを書き上げてしまったようなもので、リアリズムに裏打ちされたスピード感は、実際に浪士たちに混じって陰謀を練っているような気分にさせられる。討ち入りのシーンの剣戟描写も見事。
    他に…「平家」

    ▲PageTop

    日本ミステリ98位 殺しへの招待 天藤真

    東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

     天藤真の代表作のひとつというわけで、「大誘拐」を読んだ直後に古本屋で手に入れ、期待して読んだ。高校生のころである。その時の感想では、「こんなものか」だった。それほど感心もしなかったように思う。それ以来、現在まで25年間読んでいない。実にひさしぶりに再読。

     いま読んでみると、実にきついブラック・ジョークが炸裂するミステリだった。天藤真のユーモア・ミステリの代表作に上げる人もいるそうだが、こんなきついジョークで笑える人間の気が知れない。「牧歌的ユーモア」と評した「東西ミステリーベスト100」の解説担当者に至っては何を考えているのか、である。たしかに「大誘拐」は誰でも笑える万人向け作品だったが、本書「殺しへの招待」はかなりマニア向けの作品である。なんにしろ底意地があまりにも悪すぎる小説なのだ。

     角川文庫版の解説でジャプリゾなどのフランスミステリとか「クライム・クラブ」的な作品だといわれていたが、むしろ読んだ印象としては、タイトルは上げられないがクリスティの「あれ」の現代的な再解釈という感じを強く受けた。結末のどんでん返しも「あれ」を強く意識しているだろう。初読時も思ったが、ひどい人間不信もあったもんである。

     それにしても、細かいところまで実に丹念に考えられたミステリであり、「トリックの非現実性と不可能性」をいうのは野暮の骨頂だ。思うに、「トリックの非現実性」については作者もよく知っており、その非現実性を非現実的でないものと読者あるいは日本に納得させるために数段階にわたる予防線的なトリックを講じている。その芸術的なまでの技の冴えは一読の価値がある。特に、この小説の開幕を告げる、謎の人物からの手紙だが、「なぜわざわざ手紙を出さなければならなかったのか」の理由なんて、常人の考えうる範囲を超えている。たしかに必然的な理由があるのだが、こんなこと考えつくなんて、天藤真、悪魔みたいな脳髄の持ち主だ。

     大学の図書館に角川文庫版の天藤真が全冊揃えてあったので、「大誘拐」と本書に限らず、天藤真はよく読んだ。日々精神の安定を失い、地獄の底をさまようような気分になっていたときに、地獄にもいささかの笑いと安らぎはあると思わせてくれる「鈍い球音」などの人間味あふれるミステリの数々はいい気分転換になった。それにしても、ライフワークとしての大長編小説の序章として発表された長編「炎の背景」の続きが出る前に作者の天藤真自身が急逝してしまったのは残念であるなあ……。完成していたらミステリ界でも屈指の、波乱万丈の恋愛ドラマになっただろうになあ。

    ▲PageTop

    剣と魔法の国の伝説 第2章・その1

    剣と魔法の国の伝説 第2章

    2019年7月27日

     わたしは茨城歴史ゲームの会が行われている土浦市生涯学習館の一室で、Mさんと版を広げてにらみ合っていた。

    「これで……いいのかな」

    「あ、すみません、宝物カード、2枚ほど、間違えたみたいです。大きい宝物カードの代わりに小さな宝物カードを入れてしまったらしくて」

    「しかたないとしかいいようがないなあ。この数だもんなあ。それとも、また、カードを全部めくって、配置し直す?」

     わたしは時計を見た。セットアップを始めてからすでに1時間が経過していた。

    「このままやっちゃいましょう」

     わたしはルールブックを読んだ。

    『第1の場面では、移動、潜伏、探索、取り引き、が紹介されている。モンスターと原住民もマップ上に現れるが、戦闘は起こらない……』

    「おれはホワイトナイトをやろうかな」

    「白騎士ですね。じゃあわたしは、アマゾンでいいや」

    IMG_20190727_232014.jpg

     ホワイトナイトは、白魔法を使う恐るべき戦士である。それが、どうしてこんな「ゲームにおいて戦闘も魔法も使わない」段階で出ているのかといえば、こいつは、正義の味方だから、みんなに信頼されており、「物の売買で優位に立てる」のだ。要するに、ここでは「口のうまさ」だけで勝負する商売人にすぎない。また、力持ちなので、重い宝物をいくつ持ってもへっちゃら、というところも見逃せない。

     対してアマゾン。身軽でタフな女戦士である。中型のモンスター相手には抜群の強さを見せる。巨大なモンスターにはさすがに勝てないが、そういう相手と出くわしたらさっさと逃げ出してしまえばいいのだ。それに、ステップアップ方式の最初歩である第1の場面では、戦闘自体が発生しないので、その点でも有利であった。マップじゅうを走り回って、誰よりも先に宝を頂いてしまおう。

    「じゃあ行きますか」

     わたしはコマに手を伸ばし、盤面の様子の一部を明らかにした。建物が配置され、スタート地点が決まった……。


    IMG_20190727_122714.jpg

    IMG_20190727_122723.jpg

    ▲PageTop

    剣と魔法の国の伝説 第1章・その7

    剣と魔法の国の伝説 第1章

    2019年4月28日

     転機は突然訪れる。そしていきなり動くこともある。

     わたしは、映画を見に誘ったゲーム仲間のMさんから、どさっと、分厚いルールブックを渡された。

    「……これは?」

    「茨城会でいっしょにやってるHさんから。なんでも、やりたいって、このゲーム。ポールさんもやりたいっていってたじゃん」

     それは「剣と魔法の国」の完全なルールブックの全訳だった。

     唖然としていたわたしは、「じゃあ、映画が終わったら、とりあえず、家へ来て、セットアップの練習しますか?」としかいえなかった。

     Mさんもわたしもいい大人の、ヘテロセクシュアルの男性だから、アパートに行ったところで、ゲームしかしないのであった。

     カードを黙々と並べ、タイルを黙々と並べ、コマを黙々と並べ、さて、ゲームができる、となったときは、アパートに来てから2時間が過ぎていた。

    「慣れたプレイヤーでセットアップに45分必要、ってのは嘘じゃないみたいですね」

    「そうだなあ」

     セットアップが終わった後の盤の様子を見ていると、やはりゲームファンはムラムラ来るらしい。

    「とりあえず、テストで、第一の遭遇、やってみますか?」

    「いいよ。でも時間的に、最初の数ターンだけだな」

     とりあえず、曲がりなりにもゲームを進めてみた。

    「意外とサクサク行きません?」

    「うん」

     そこで電気釜のブザーが鳴った。

    「じゃあ、帰るんで」

    「いいですよ。片づけはやっときます」

     わたしは片付けと、夕飯の支度をしながら、興奮冷めやらぬ頭で考えた。

     とりあえず次の目標はできた。第一の遭遇、「宝探し」を、対人プレイするのだ!

    ▲PageTop

    日本ミステリ98位 五十万年の死角 伴野朗

    東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

     最初に読んだのは高校のころ、図書館で借りてだった。それ以来、どういうわけか何回か文庫本を買ってしまったりして、五回以上読んでいる。最後に読んだのは、古本屋に本を売りに行く直前だったから、十年くらい前か。

     というわけで再読。感想であるが、戦中の中国を舞台にした面白いスリラーだが、それだけ、という感が強い。作者は結末にあっと驚く人名を放り込んだりと、やりたいことはわかるのだが、当時は「あっ、あの人か!」でわかるネタが、いま読むと。、「誰?」になってしまうのがつらいところだ。世界史の教科書に載るような人なのだが。

     なんというか、この作品が98位に入れたのは、「僥倖」というやつであろう。江戸川乱歩賞受賞、ということと、冒険小説の読者数が日の出の勢いで伸びていた「冒険小説の時代」にこの85年版「東西ミステリーベスト100」がまとめられたことと、作者の伴野朗自身のネームバリューで、奇跡のようにこの98位に滑り込めたという感が強い。冒険小説としてもスリラーとしても、船戸・北方・志水という熱い冒険小説群に比べると、かなり弱いのだ。また、中国を舞台とした小説では、生島治郎「黄土の奔流」や影山民夫「虎口からの脱出」という痛快編もあり、それらと比べてもいささかワリが悪い。

     個人的に、伴野朗の作品を読むのならば、、この「五十万年の死角」よりも、大航海時代の百年前、明の時代に大洋をまたいで船を出し、はるかアフリカ方面まで船団を率いていった鄭和の航海を、信頼できる資料がまるで残っていない中、想像力と大法螺だけで目の前に見えるかのように描き出した、「大航海」のほうが質量ともにはるかに面白いと思う。「影武者徳川家康」が入るのならば十分許容範囲内の血沸き肉躍る大ロマンだと思うのだが。伴野朗は、やはり本質が歴史作家であり、「五十万年の死角」や、グルメ名探偵陳展望シリーズなどは、歴史小説家として世に出るための「方便」のようなつもりだったのかもしれない。

     というわけで、こんなことを考えながら、今回も、ごく普通にすいすいと北京原人の化石にまつわるこのスリラーを読んでしまったわけだが、うん、こんなに何度も読んでなお普通に面白いというのは、この「五十万年の死角」、やっぱりすごい作品なのかもしれない。古本屋を物色しているうちに、ふと気がつくとカートに入れているような、そういう「ぴったり感」がある。あまり読後に残るものはないが、何度読んでも読んでいる間だけは確実に面白いというのは、エンターテインメントとしては最高の評価ではないだろうか。今度から、古本屋へ行くときは注意せねばならないなあ。あっ、陳展望シリーズ、アマゾンでプレミアついてやがる。あのとき買っとくんだった!

    ▲PageTop

    Menu

    最新記事

    最新コメント

    月別アーカイブ

    カテゴリ

    FC2ブログランキング

    ランキング

    アルファポリス「第1回 ホラー・ミステリー大賞」にエントリーしました。 どうぞ読んでいってくんなまし。

    カウンター

    おきてがみ

    検索フォーム

    Powered By FC2ブログ

    今すぐブログを作ろう!

    Powered By FC2ブログ

    ブロとも申請フォーム

    QRコード

    QRコード