更新履歴

    さわりを読む▼をクリックすると更新された内容の冒頭部分がご覧になれますので、久しぶりのご訪問の方はこちらで未読・既読のご確認ができます

    日付別の更新チェックはカレンダーの日付をクリック ▼

    【  2009年06月  】 

    闇は千の目をもつ 7-2

    2 闇は千の目をもつ(完結)

    2009.06.30 (Tue)

      午前中ならいつでも空いていた。わたしは島田女史に必ず行くと返事をした。「どこで待ち合わせしますか?」『「ガーディアン」知ってる?』 知らなかった。「喫茶店かなにかですか?」『喫茶店よ。まるで名古屋みたいなモーニングを出すの。そこで九時にどう?』 かまいません、と答えて詳しい場所を聞き出した。百草園駅からちょっと入ったところだった。 名古屋みたいなモーニングというのがなんだかはわからなかったが、人...全文を読む

    PageTop▲

    闇は千の目をもつ 7-1

    2 闇は千の目をもつ(完結)

    2009.06.29 (Mon)

     7 もらうべきものはきちんともらってから、高宮秋子を帰した。良心的な値段で抑えることは、わたしのモットーである。 その後すぐに、電話帳を繰ってフィリップ・ピネル記念病院に連絡を取った。 運が良かった。病院の受付は愛想が良く、わたしは島田春江が明日非番だということを教えてもらった。『……しかし、島田さんに、どんなご用件なんでしょうか?』「妹さんの元のご主人についてお聞きしたいことがある、とお伝えくださ...全文を読む

    PageTop▲

    闇は千の目をもつ 6-4

    2 闇は千の目をもつ(完結)

    2009.06.28 (Sun)

     「島田さんか……!」 懐かしい名前が出てきて、わたしは大学病院で研修医をしていたころのことを思いだした。あのころは島田春江看護師にはまったく頭が上がらなかったものだ。(当ブログ「ナイトメアハンター桐野・1」で読める小説「ナイトメア・ハンターの掟」参照のこと) わたしが高宮秋子の顔に見覚えを感じたのもそのせいだったのだろう。「島田さんは、わたしのことをなんと?」 つい好奇心に負けた。「ええ、医師免許を...全文を読む

    PageTop▲

    闇は千の目をもつ 6-3

    2 闇は千の目をもつ(完結)

    2009.06.27 (Sat)

     「『闇は千の目をもつ』?」 高宮秋子は首をひねった。「それって、『夜は千の目を持つ』の間違いじゃないんですか?」「いえ。……『闇』です」 わたしは記憶をあらためた。「高宮さん、そちらの『夜は千の目を持つ』とは、なんですか?」「ウィリアム・アイリッシュという作家の書いた小説です。あたしは読んだことありませんけど」「道徳さんは」「あの男なら、読んだことあるかもしれませんが、知りません」 わたしは脳内のメ...全文を読む

    PageTop▲

    闇は千の目をもつ 6-2

    2 闇は千の目をもつ(完結)

    2009.06.26 (Fri)

      別れたとはいえ妻にここまでいわれるとは、あの鈴木道徳という男がなんとなく気の毒になってきた。 わたしの顔色にそれが出たのか、高宮秋子は思いきり不審そうな顔になった。「……先生?」「ああ、いや。なんでもありません」 こんなことで高宮秋子の機嫌を損ねて、二度と来ないだなどということになったらまずい。わたしの財布にもまずいし、高宮秋子の精神の安定にとってもまずい。 わたしは無理してビジネスライクな声を絞...全文を読む

    PageTop▲

    闇は千の目をもつ 6-1

    2 闇は千の目をもつ(完結)

    2009.06.25 (Thu)

     6 高宮秋子には、なんとかしたつもりではあるけれど、どうなるかまではわからないので、なにかあったらまた来てくださいというよりほかになかった。まるで落語に出てくる藪医者のような台詞である。 しかし、それよりも先に聞いておかなければならないことがあった。「高宮さん、あの男の名前はなんというんですか?」「鈴木みちのりです。あたしは離婚したときに旧姓に戻しました」「みちのり?」「道徳と書きます」 とんでも...全文を読む

    PageTop▲

    闇は千の目をもつ 5-4

    2 闇は千の目をもつ(完結)

    2009.06.24 (Wed)

      飛びずさった。そう思ったのはわたしの思い込みで、本当はよろよろと二、三歩後退しただけに過ぎないのかもしれない。 とにかく、わたしは男との間に距離を取った。 男が立ち上がるのが見えた。 そのときには、わたしはすでに銃を構えていた。 男はわたしに向けて突進してきた。 引き金を引いた。 ちょっとでも銃器についてかじったことがある人なら、こうした至近距離で散弾銃をぶっ放されたらどういうことが起きるかわか...全文を読む

    PageTop▲

    闇は千の目をもつ 5-3

    2 闇は千の目をもつ(完結)

    2009.06.23 (Tue)

      コミュニケーションは取りたいものの、なんと呼びかけていいのやらわからない。わたしの頭は真っ白になった。 それを見逃す相手ではなかった。 うずくまるようにして空間それ自体をむさぼり食っていた男は、急にバネのように身をたわめると、ぱっとわたしに飛びかかってきた。 その瞳は、高宮秋子のいったとおり、確かに尋常ではなかった。 恨み。悪意。憎悪。その他その他、ネガティブな心理が煮詰められたような、どろりと...全文を読む

    PageTop▲

    うわあああごめんなさい

    未分類

    2009.06.22 (Mon)

     私用により「闇は千の目をもつ」今日も休んでしまいました。こんなことじゃいかんのだがなあ(汗)。おわびに小咄をひとつ。「となりの空き地に囲いができたってねー」「昨夜ね(柵やね)」...全文を読む

    PageTop▲

    ごめんなさい

    未分類

    2009.06.21 (Sun)

     きょうの「闇は千の目をもつ」の更新は休ませていただきます。すみません(汗)。...全文を読む

    PageTop▲

    闇は千の目をもつ 5-2

    2 闇は千の目をもつ(完結)

    2009.06.20 (Sat)

      水と睡眠薬を飲ませたら、あとはしばらくじっと待つばかりである。患者が眠ってくれるまでは、ナイトメア・ハンターはなにもできないのだから。 もちろん、病院でも薬局でもないのに、睡眠薬など飲ませていいのかという問題はあるだろうが、そこはそれ、危ない橋のひとつも渡れない男に、こんな商売などできるはずがないのだ。 子守歌もアロマの芳香もクーラーの涼気もなかった割りには、高宮秋子はすぐに眠ってくれた。これだ...全文を読む

    PageTop▲

    闇は千の目をもつ 5-1

    2 闇は千の目をもつ(完結)

    2009.06.19 (Fri)

     5 ここでなにもしないで帰すと、高宮秋子は二度と来てくれないことは明白に思われたので、なにかしないわけにはいかなかった。 とはいえ、女殺しの魅力とか、膨大な財力や権力をもっているわけではない平凡なナイトメア・ハンターのわたしに、たいした選択肢があるわけもない。 結論として、いちばんまっとうで当たり前の道を選ぶことになった。 夢に入るのである。 高宮秋子はまだちょっと怒っているようだったが、わたしが...全文を読む

    PageTop▲

    闇は千の目をもつ 4-4

    2 闇は千の目をもつ(完結)

    2009.06.18 (Thu)

      写真と、持ち込んできた高宮秋子の顔を、穴が開くほど見た。 高宮秋子はとまどっているようだった。「あの……先生、なにか……?」「高宮さん」 わたしは写真を指さした。「この人が……?」「そうですよ。あたしの前の夫です」 はっと思い当たったように、「先生、お知り合いだったんですか?」 その目に咎めるような色が混じったので、わたしはあわてて否定した。「知り合いではありません。が、しかし、似てるなあ」「似てる?...全文を読む

    PageTop▲

    闇は千の目を持つ 4-3

    2 闇は千の目をもつ(完結)

    2009.06.17 (Wed)

      恐ろしい笑みか。 割り引いて考える気にはなれなかった。かつて夢に入った経験からいうと、こういう場合で人間が見ている光景というものは、精神により偏向がかけられているため、実際に見ると悲鳴を上げたくなるほど恐ろしいことが多いのだ。 わたしは手元のノートに「恐ろしい笑み」とメモを取って続きをうながした。「それから、なにがあったんですか?」「それで終わりです」 高宮秋子はしゃべるのも嫌だ、とでもいうよう...全文を読む

    PageTop▲

    闇は千の目をもつ 4-2

    2 闇は千の目をもつ(完結)

    2009.06.16 (Tue)

      そんな怪しげな生業の男のもとに相談に来たということは、悪夢がかかわっていると思って間違いはないだろう。 でもまあ、聞いてみるだけ聞いてみる。可能性だけであれば、彼女が新人作家発掘中の編集者で、ナイトメア・ハンターなどという仕事をしている男に原稿書きを要請に来たとか、ナイトメア・ハンターとしての活動が急に市の条例かなにかにひっかかって違法行為となり、高宮秋子はわたしを逮捕しに来た腕利き捜査官であっ...全文を読む

    PageTop▲

    闇は千の目をもつ 4-1

    2 闇は千の目をもつ(完結)

    2009.06.15 (Mon)

     4 ナイトメア・ハンター。 それは、精神を集中することで他人の夢に入ることができる特殊能力者のことである。 夢に入る。言葉の通りだ。 わたしをはじめ、この能力を持つものは、他人が見ている夢の世界を、あたかも現実世界のように体感することができるのだ。 わたしがいつ、この能力を得たのかについては、はっきりとした記憶はほとんどない。それについては、過去に物語ったことがあるので、そちらを読んでいただこう。...全文を読む

    PageTop▲

    闇は千の目をもつ 3-4

    2 闇は千の目をもつ(完結)

    2009.06.14 (Sun)

      診察室に入って、高宮秋子と向き合った。印象はついさっきと変わらない。特に目立ったところのない顔をしている。「ロシア人」という顔を描けば、独ソ戦の英雄、ジューコフ元帥になるという逸話があるが、この場合、「日本人」という顔を描けば高宮秋子になるといってもいいのではないだろうか。 しかし。それにしても。 この顔にはどこか見覚えがあった。単なる日本人顔、という以上に。「あの……なにか?」 職務を忘れてつい...全文を読む

    PageTop▲

    闇は千の目をもつ 3-3

    2 闇は千の目をもつ(完結)

    2009.06.13 (Sat)

      診療所に入ってきたのは、三十ちょっと前くらいの女だった。 美貌というにはあまりにも十人並みすぎる顔の持ち主。どこにでもいるようなぱっとしない女だった。「桐野メンタルヘルスはここですか」 女は受付のガラス窓越しに、わたしにいった。「そうです」 わたしは答えた。ここが桐野メンタルヘルスで、わたしが責任者の桐野俊明であるのは、ここが地球という惑星の上であることよりも確実なことだ。「開業時間前ということ...全文を読む

    PageTop▲

    闇は千の目をもつ 3-2

    2 闇は千の目をもつ(完結)

    2009.06.12 (Fri)

      気を取り直してビートルを走らせた。診療所についたのはお昼前だった。 わたしの診療所は、ちょっとしたビルの一階にあった。ちょっとしたというのは、ほんとうにちょっとした、という意味だ。たたずまいは悪くないものの、どこにでもある雑居ビルみたいなもので、世人が指をくわえてふりかえるタイプの、エンパイア・ステート・ビルのごとき摩天楼ではない。 ビートルを駐車場に停めると、わたしは診療所の鍵を開けて中に入っ...全文を読む

    PageTop▲

    闇は千の目をもつ 3-1

    2 闇は千の目をもつ(完結)

    2009.06.11 (Thu)

     3 いくらあの奇妙な本がわたしに取り憑こうとしていても、わたしには仕事と生活というものがあり、日々の糧を稼がなければ、たちまち飯をくいあげて日干しになってしまう。 というわけで、わたしは今日も愛車のフォルクスワーゲン・ビートルで自分の診療所に向かっていた。はるか昔に時代遅れになった車だなどといってビートルをバカにする人間は多いが、好きなものは好きなのだからしょうがない。 いくら古くて時代遅れの車で...全文を読む

    PageTop▲

    闇は千の目をもつ 2-4

    2 闇は千の目をもつ(完結)

    2009.06.10 (Wed)

      シャワーの栓を止め、身体を拭いてから寝巻きに着替えた。机の上にペットボトルを置き、マガジンラックから本を取り出す。 電気スタンドの電気もつけ、わたしは本を開いた。 まず、手触りを確かめる。 普通の紙だ。 それから、ページを一枚一枚繰り、どこかに変なところはないかどうかを入念にチェックした。 探していたものはあった。ページの一枚で、蚊が押しつぶされて死んでおり、かすかに血の痕が残っていた。 わたし...全文を読む

    PageTop▲

    闇は千の目をもつ 2-3

    2 闇は千の目をもつ(完結)

    2009.06.09 (Tue)

      二十分も歩くと、わたしのワンルームマンションに到着する。徒歩にせよ車にせよ電車にせよ、交通の便がいい位置に建っているのだ。 アルコールの作用と警察の質問のおかげで、喉が渇いていた。マンションのそばにある自販機に百二十円を投入し、「おーいお茶」のペットボトルを買った。部屋で生ぬるい水道水を飲むのは今の気分に合わなかったし、今日は「虎奇亜」で飲むつもりだったのでビールもウォッカも買っていない。不覚と...全文を読む

    PageTop▲

    ごめんなさい

    未分類

    2009.06.08 (Mon)

     きょうの「闇は千の目をもつ」の更新は休ませていただきます。すみません(汗)。...全文を読む

    PageTop▲

    闇は千の目をもつ 2-2

    2 闇は千の目をもつ(完結)

    2009.06.07 (Sun)

      警察署で手続きを済ませた。警察署は、どちらかといえばわたしの診療所に近いところにあったが、診療所には戻らず、自分のワンルームマンションに向かってまっすぐ帰ることにした。 夜だというのにまだ熱気が逃げ去りきっていない七月のアスファルト歩道を歩きながら、なんとなく自分に対して腹立たしい気持ちを覚えた。 こんな本がいったいなんだというのだ! とはいえ、簡単にゴミ箱に放り込む気になるには、この本は立派な...全文を読む

    PageTop▲

    闇は千の目をもつ 2-1

    2 闇は千の目をもつ(完結)

    2009.06.06 (Sat)

     2 警察による事情聴取は、あまり楽しい体験ではなかった。唯一の救いはスピーディに終わったことだ。この生年もなにも、まったくといっていいほど不詳の男は、わたしたちにとってはありがたいことに心臓が弱かったらしく、ごく当たり前の病死、突然死ということで警察と警察医は納得したらしい。この東京には、一晩でいくつという単位で死人が出ているんだ、そうひとつひとつにかまっていられるかというんだ? わたしの話を聞い...全文を読む

    PageTop▲

    闇は千の目をもつ 1-4

    2 闇は千の目をもつ(完結)

    2009.06.05 (Fri)

     「死んだ」 わたしはつぶやいた。「このかた、ナイトメア・ハンターといってましたわね」 電話を終えたバーテンダーが、カウンターを回ってこちらへやってきた。「そうだ」 額の汗をぬぐう。「君」 いいかけて、わたしはこのバーテンダーの名前を知らないことに気づいた。「君、名前はなんていうんだい」「ユミコです。ツヅキ・ユミコ」「ツヅキさんか」「ユミコと呼んでください」「じゃ、ユミコさん。君がいっていた、わたし...全文を読む

    PageTop▲

    闇は千の目をもつ 1-3

    2 闇は千の目をもつ(完結)

    2009.06.04 (Thu)

     「今日は早めに切り上げて帰るべきかな」 わたしの前に二杯目を置いたバーテンダーはうなずいた。「そのほうがよろしいのではと思います。あたしは、自分のカンというものに、自信がないわけではありませんので」 わたしはマティニに口をつけた。これはほんとうに真面目な話らしい。もしかしたらこのバーテンダーは、わたしを単に早く帰らせたいだけかもしれないが……いや、それならば、こんな怪しげなことをいわなくても、わたし...全文を読む

    PageTop▲

    闇は千の目をもつ 1-2

    2 闇は千の目をもつ(完結)

    2009.06.03 (Wed)

     「貧乏神が取り憑いているのはよくわかりますけど」 女性バーテンダーはよく考えると失礼千万なことをいった。「桐野さんのご職業上、なにか悪いことが起こるのではないかとちょっと心配なんです」 わたしはバーテンダーを見直した。「真面目にいっているのか」 バーテンダーは申し訳なさそうにうなずいた。 後ろ暗いところがないわけではなかった。というよりもありすぎだった。 とりあえずわたしは努めて冷静な口調で酒を注...全文を読む

    PageTop▲

    闇は千の目をもつ 1

    2 闇は千の目をもつ(完結)

    2009.06.02 (Tue)

     1 その日わたしは裕福だった。内職でやっているドイツ語の下訳のバイト料が入ったのだった。桐野メンタルヘルス、一名ナイトメア・ハンターなどという怪し気な看板だけでは、現代人がこのうだるように暑い中を生き抜いていくには力不足なのだ。 それにしても、とわたしは思った。実にくだらない文章だった。まさかこの歳になって、ネオナチのアジビラを何十枚も訳させられるとは思わなかった。脳内が一九四五年で止まった連中が...全文を読む

    PageTop▲

    闇は千の目をもつ 0

    2 闇は千の目をもつ(完結)

    2009.06.01 (Mon)

      エピローグ・A わたしの診療所に、その珍しい客が現れたときには、事件はすでに終わっていた。「桐野先生」 客人は頭を下げた。「このたびは、なんとお礼を申したらよいか……」「先生はないですよ」 わたしは苦笑いした。「ここは病院じゃないんですからね」 そこで、当然抱いていいはずの疑問を思い出した。「で、どうして今日はここに?」「これを」 客人は、かたわらのバッグを開くと、一冊の本を取り出した。 わたしは...全文を読む

    PageTop▲

    前月     2009年06月       翌月

    Menu

    最新記事

    最新コメント

    カテゴリ

    FC2ブログランキング

    ランキング

    アルファポリス「第9回 絵本・児童書大賞」にエントリーしました。 どうぞ読んでいってくんなまし。

    カウンター

    おきてがみ

    検索フォーム

    Powered By FC2ブログ

    今すぐブログを作ろう!

    Powered By FC2ブログ

    ブロとも申請フォーム

    QRコード

    QRコード