更新履歴

2011.09.05 （Mon）

　五番目の女　わたくしはこれまで、あのかたたちよりも哀しいご夫妻を見たことはございません。　あのかたたちというのは、わたくしがお仕えしておりました、サシェル・イルミール様とその最初の奥方であるクレア様にございます。　サシェル様は、思えば生まれるべきではない家に生まれたのが、身のご不幸の始まりでございました。　平凡な家に生まれていたら、どこかのお屋敷に奉公に出て、その優れた算術の能力を駆使して、それな...全文を読む

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2011.09.05 （Mon）

　四番目の男　イルミール男爵家創始者、ハシャク・イルミール男爵はその謹厳な顔をまったく緩めずに執務室に入ってきた。　イルミール家をよくいうものは少ない。それは、ハシャク自身がよく知っていた。そのせいもあるのか、執務室は豪商として当然のごとく享受してしかるべき、莫大な富からは想像もつかぬような質素なものであった。　質素ではあるが、それは使い心地が悪い、ということを意味しはしなかった。必要ならばどんな苦...全文を読む

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2011.09.05 （Mon）

　セキュリティ会社からのメールと首っ引きで慣れぬPCを操作し、なんとか事態を収拾……。疲れた。お詫びに今日は、昨日のぶんと二作併せてUPいたします。スタンドアロンもあるだけでずいぶんと違うなあ。なにせワープロになるもんなあ。今回の作品、影の主役は「あの人」です。みんなが知ってる「あの人」に対するまったく正反対な視点をお楽しみください。疲れたので今日はもう寝ます。おやすみなさいぐーぐー。...全文を読む

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2011.09.03 （Sat）

　三番目の女　エリカお嬢様のことですか？　ええ、ええ、はっきり覚えておりますとも。エリカ・バルテノーズ公爵閣下とお呼びしなければならないのはわかりますが、わたくしにとって、エリカお嬢様は、いつまでも、あの幼いエリカお嬢様のままなのです。　わたくしがエリカお嬢様づきの乳母になったのは、お嬢様がお生まれになってから、そう、三ヶ月目というところでしたか。エリカお嬢様のお姿がとてもかわいらしいということで、...全文を読む

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2011.09.02 （Fri）

　二番目の男　あの女のことかい？　よく覚えてるよ。話してほしけりゃ、麦酒をおごってくれ。　そう、そうそう。　あの女のことだな？　あの女が、おれの店に現われたのは、あのとんでもない年の、秋のことだったなあ。あのころはおれも羽振りがよかったなあ。なにせ、店を持っていたんだからなあ。お前さん、知ってるか？　酒場をやっていくコツを。なによりも、有力者の庇護を得ることだな。おれの場合は、イルミール男爵家だった...全文を読む

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2011.09.01 （Thu）

　最初の男「へったくそですね、この木彫り」　部屋に入ってきた若者は、棚に置かれた馬の小品を手にすると、呆れたような声を出した。「どこでこんなものがコレクションに混ざったんですか？　まったく、みっともないったらありゃしない。捨てときましょうか？」　ベッドに半身を起こしたその老人は、なにかをいいかけて咳き込んだ。　若者は木彫りを放り出すと、慌てて老人に駆け寄った。「す、すみません」　老人は手を振った。「...全文を読む

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