「ほら吹き大探偵の冒険(児童文学)」
扇風機盗難事件(完結)
扇風機盗難事件 3‐1
3
パラダイスが出て行った後も、女ガンマンは我輩とシャーリー嬢にオートマティック・ショットガンの銃口を向けたままこの部屋に残っていた。
「お前は行かんのか」
「あたしは、ビジネスのほうに興味があるのよ」
「ビジネス?」
「ハイダラケ王国の主要輸出作物、サガリスク茸の栽培ノウハウといえばいいかしら?」
「サガリスク茸?」
シャーリー嬢が首をかしげた。
「ふふ、薬学に詳しくなくては、その名前を聞いたこともないでしょうね。ここ最近になってハイダラケ王国が特許を主張した有効成分抽出技術により、心臓疾患や脳梗塞のリスクを劇的に下げる効果が医学界に革命的な大騒動をもたらした薬用菌類よ」
「サガリスク茸のエキスだったら、先進国の大病院へ行けば、いくらでも……」
「いったでしょ? あたしがほしいのは、栽培法のノウハウ。サガリスク茸は、非常に生育条件が限られていて、それこそ二十世紀以前は白トリュフよりも珍しい茸だった。それが、ここ近年での産出量はそれまでとは比べ物にならないほどに増加している」
我輩は舌打ちしたくなるのをこらえた。この女、我輩の国の事情をよく承知している。
「その栽培ノウハウさえわかれば、あたしはひと財産作れるというわけよ。あのおかしな大富豪も情報をほしがっているみたいだけど、この手のビジネスは早い者勝ち」
我輩は唇を固く結んだ。そんなこと、断じていえるものか。それは弟と我輩の間だけの永遠の秘密だ。
「しゃべりたくないの?」
女ガンマンは卑劣にも、オートマティック・ショットガンの狙いをシャーリー嬢に向けた。そんなことしなくとも、ひとつ引き金を引けば、マシンガンのように連射された散弾が、鉄の砂嵐のように部屋中を穴だらけにしてしまうというのに。
「卑怯者め」
我輩は歯ぎしりした。
「卑怯でもなんでもけっこう。最後に金を握って立っていたものが勝ち、というのがあたしの哲学よ。さあ、しゃべる?」
「とてもノウハウをひとことでは……」
「王家のものにのみアクセスできる形でノウハウのデータが保管してあるはずよ。パスワードと秘匿サイトのアドレスを吐きなさい」
だから我輩は弟に、残すにしろ書類だけにしろ、といっておいたのだが!
「まずは我輩とシャーリー嬢の縛めを解くことだ。そうでなければ、交渉すらできん」
女はにやりと笑った。
「太っていてカイゼル髭でも、話がわかる人だと思っていたわ、探偵さん」
「まずはシャーリー嬢からだ」
パラダイスが出て行った後も、女ガンマンは我輩とシャーリー嬢にオートマティック・ショットガンの銃口を向けたままこの部屋に残っていた。
「お前は行かんのか」
「あたしは、ビジネスのほうに興味があるのよ」
「ビジネス?」
「ハイダラケ王国の主要輸出作物、サガリスク茸の栽培ノウハウといえばいいかしら?」
「サガリスク茸?」
シャーリー嬢が首をかしげた。
「ふふ、薬学に詳しくなくては、その名前を聞いたこともないでしょうね。ここ最近になってハイダラケ王国が特許を主張した有効成分抽出技術により、心臓疾患や脳梗塞のリスクを劇的に下げる効果が医学界に革命的な大騒動をもたらした薬用菌類よ」
「サガリスク茸のエキスだったら、先進国の大病院へ行けば、いくらでも……」
「いったでしょ? あたしがほしいのは、栽培法のノウハウ。サガリスク茸は、非常に生育条件が限られていて、それこそ二十世紀以前は白トリュフよりも珍しい茸だった。それが、ここ近年での産出量はそれまでとは比べ物にならないほどに増加している」
我輩は舌打ちしたくなるのをこらえた。この女、我輩の国の事情をよく承知している。
「その栽培ノウハウさえわかれば、あたしはひと財産作れるというわけよ。あのおかしな大富豪も情報をほしがっているみたいだけど、この手のビジネスは早い者勝ち」
我輩は唇を固く結んだ。そんなこと、断じていえるものか。それは弟と我輩の間だけの永遠の秘密だ。
「しゃべりたくないの?」
女ガンマンは卑劣にも、オートマティック・ショットガンの狙いをシャーリー嬢に向けた。そんなことしなくとも、ひとつ引き金を引けば、マシンガンのように連射された散弾が、鉄の砂嵐のように部屋中を穴だらけにしてしまうというのに。
「卑怯者め」
我輩は歯ぎしりした。
「卑怯でもなんでもけっこう。最後に金を握って立っていたものが勝ち、というのがあたしの哲学よ。さあ、しゃべる?」
「とてもノウハウをひとことでは……」
「王家のものにのみアクセスできる形でノウハウのデータが保管してあるはずよ。パスワードと秘匿サイトのアドレスを吐きなさい」
だから我輩は弟に、残すにしろ書類だけにしろ、といっておいたのだが!
「まずは我輩とシャーリー嬢の縛めを解くことだ。そうでなければ、交渉すらできん」
女はにやりと笑った。
「太っていてカイゼル髭でも、話がわかる人だと思っていたわ、探偵さん」
「まずはシャーリー嬢からだ」
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~ Comment ~
Re: ぴゆうさん
プロットどおりに話を進めるのに懸命でそこまで考えていなかった(爆)。
ザリグを連れてきたのは、「2-4」で語っていた通りに、「自分の計画に気づいて警察に情報提供を依頼した探偵」に対して自分の力を見せびらかしたかったのと、計画終了後にサガリスク茸の栽培ノウハウを聞き出すために、生かしたまま手元においておきたかったのと、「単なる虚栄心」と、「単なる『36枚で終わらせるためのご都合主義』」によるものです(^^;)
うーむ
ものな回答だなあ我ながら(^^;)
ザリグを連れてきたのは、「2-4」で語っていた通りに、「自分の計画に気づいて警察に情報提供を依頼した探偵」に対して自分の力を見せびらかしたかったのと、計画終了後にサガリスク茸の栽培ノウハウを聞き出すために、生かしたまま手元においておきたかったのと、「単なる虚栄心」と、「単なる『36枚で終わらせるためのご都合主義』」によるものです(^^;)
うーむ

NoTitle
パラダイスはイカレテイタのか?
まっ納得するけど、なんの為にザリクを連れて来たのかな?
この展開だと女ガンマンがザリクを必要としている。
・・・・
近頃はアップするとその日はダレダレで使いものにならん。
疲れMAX。
困ったもんだ。
まっ納得するけど、なんの為にザリクを連れて来たのかな?
この展開だと女ガンマンがザリクを必要としている。
・・・・
近頃はアップするとその日はダレダレで使いものにならん。
疲れMAX。
困ったもんだ。
- #4631 ぴゆう
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- 2011.07/18 13:53
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