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    ヨコハマ観劇記

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     今を去ること二万年前よりちょっと後、わたしは演劇を見るためヨコハマに行ってきた。

     さすがにヨコハマまでは、わたしの家からワープ航法を繰り返しても主観時間で百日以上かかる。しかも、途中でガ○ラス帝国の三段空母などによる妨害をかわしながら行かねばならぬのだから、その旅は苦難に満ちたものとなった。

     しかしそれにしても暑い。銀河常磐線と銀河京浜東北線を乗り継いで精神的に百日の行程だが、どうして夏の宇宙はこんなにも暑いのだ。

     艱難辛苦の末、わたしはヨコハマ終着駅にたどりついた。そこから地上移動用のエアカー(タイヤつき)に乗り換えるのである。時間があったので、半径十キロ未満の円を描くような巨大な地下構築物である駅をベルトウェイで歩き回り、怪しげな料理屋で、冷やし中華を食べ、本屋でほしかった『イントレランス』のDVDを買った。ちなみにこの『イントレランス』、百六十四分もあるのでおいそれと見られないのがつらいところだ。しかも見る前によく眠っておかなければ、確実に寝るという噂もある。でも半ば手に入れるのを諦めていた映画のDVDがわずか五百クレジットで買えたのだから、さすがはヨコハマ終着駅だ。

     エアカーの乗り場で待っていると、ひとりの黒衣の男が現れた。招待主だった。持ってきた自作の同人誌を数冊渡す。招待主は受け取ると、これから現地に着くまでは一切の命令に従ってもらう、という意味のことをいった。

     それくらいは呑まねばなるまい。であるからして、その劇場までのアクセスについては明言を避けることにする。

     それにしても暑い日だった。わたしは持ってきた水を飲み干してしまい、水売り場で水を買う必要に迫られた。いろいろと売っていたが、結局、わたしは電解質の水溶液を買うことにした。それがもっとも合理的だろうと思ったからである。

     劇場は非常に集約的に作られていた。わたしや他の客たちは、システマティックに、臀部を保護するある種のクッションのようなものが並べられた階段状構造物に座らされた。

     ここに来られるのはある種の特別な人間だけらしい。それが証拠に、開演前に『見ることを拒否されて明日に回される』人間が多数存在したからだ。立って見ていた人間もいた。それが彼らの身分とどう関係あるのか、わたしにはわからなかった。

     冷房装置については期待はしていなかったが、意外にも存在してくれた。これでこの異様な建築物内にいても、快適に演劇を見ることができる。

     だが、席について(この文明にとって、『席』というのがわれわれ人類と同じものを意味するかについては考察の余地がある。全てが終わったとき、わたしの足はしびれ尻は痛くなっていたからだ)、わたしが最初に見たものは、異質な、われわれの文明とはかなり異質な肉体表現だったからだ。それを見るにつけ、自分はもしかしたらとんでもないところに来てしまったのではないかという恐れがわたしを襲った。

     肉体表現を見ること三十分、ようやく演出家らしき人物が現れ、銀河公用語で劇の開始を告げた。

     ありがたいことに、劇はわたしのような文化果つる地の人間にも理解可能なものだった。

     招待主の話では、「B級サスペンス」ということだったが、なに、これだけ二転三転するシナリオを、俳優たちががんばって演じてくれて、なんの文句があるものか(文句があるとしたら劇中出てきたアリバイトリックだが……これについては触れないほうがいいだろう。思い出は美しいままに)。わたしはすっかり劇の世界にのめりこんでしまい、時間の経つのを忘れてしまった。尻が痛いのまで忘れたのだから、どれだけよくできた劇だったかはわかるだろう。もっと詳細に書きたいのもやまやまだが、招待主が、できるかぎりぼかして書いてくれといったのだ。

     とにかく楽しかった。

     面白い劇を見て気が大きくなっていたわたしは、アキハバラステーションで途中下車し、魔窟とも呼べる場所で『DIXIT』なるものを買ってきた。これがなにを意味するかについては、後に述べる機会もあろう。

     さらに気が大きくなっていたわたしは、マツドステーションでさらに途中下車し、前にもらったものの使い道がなかった店限定の割引券で古本を買い、一年に一度は摂取せぬと身体の調子が悪くなる『カシミールカレー』なる食物を摂取した。

     まことに満足の行く旅行であった。

     唯一の心残りは、無料カンパ制とこそ書いてあったが、千クレジットくらいはカンパしないといかんなあ、と思っていたにもかかわらず、キャストと演出のかたと裏方のかたがたに、暑い日だったから汗をかいただろう、と塩飴を配るのに夢中で、カンパを忘れてしまったことだろう。人間、誰しも間違いはある。

     これだけぼかして書けばいいでしょうか、トゥデイさん? ぼかして書いたけど、嘘は書いていないつもりですが……。
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    ~ Comment ~

    Re: トゥデイさん

    いえいえ、こちらこそまた誘ってください(^^)

    土日なら割引切符が使えることもわかったし、怖いものは……コミケの締め切り……(汗)

    ありがとうございます。

    記事ありがとうございます。これくらいぼかしてくれたら大丈夫です。
    改めて、楽しんで頂けたようで何よりです。
    立ち見と追い出された人は、全員OBや他公演のメンバーなどの関係者です。全員翌日には観られました。
    開演前のあれは私も直前になるまで知らなかったので驚きました。

    何にせよありがとうございました。友人から「冬公演用に何か書け」と言われて焦ってます。
    これからも頑張ります。
    あと8月中にアニメの新作も作ります。

    Re: ねみさん

    まあ、北陸は北陸でいいところがいっぱいあるではないですか。

    ちょっと思いつかないけれど。(←ひでえやつ)

    Re: 矢端想さん

    ちなみに冷やし中華は800クレジット(笑)

    NoTitle

    俺も横浜行きたいです!
    とうけうとか遠すぎます。

    どんだけ距離があると思って・・・。
    こちらとて新潟市に県なのに
    人口で負けてるぐらいのど田舎だというのに。

    下から三番目だったかなぁ・・・。

    NoTitle

    「京浜東北線」とか「冷やし中華」とか「同人誌」とか、
    話がどんどん卑近になっていくのがおもしろかったです・・・。
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