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    「ショートショート」
    ミステリ

    ちょっとしたミスなどするもんか

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     計画は完璧なはずだった。過去の推理小説での黄金のパターンを流用するのだ。いつもいつもこの手の犯人というやつは、ちょっとしたミスを犯しては警察の御用となるのだが、ぼくがそんなミスをするもんか。
     天気はおあつらえ向きの雪。しかも、積もるほどの雪。今日まで待った甲斐があるというものだ。
     トリックは単純。古典的な雪の日の殺人だ。足跡を偽造するのである。
     ぼくは、殺すべき相手、田村の靴から靴底の型を取った。
     後は、計画を実行するだけだ……。

     ぼくがどれほど巧緻な計画を考え、そして実行に移したか、なんてことはどうでもいい。
     そう。どうでもよくなってしまったのだ。
     田村を呼び出したあずまやで、殺人という大仕事を終え、偽の靴底を靴から外し処理してから自分の靴に履き替えて寮に帰った。ぼくが残した田村の靴跡は、今夜やつが歩き回ったことを雄弁に物語るというわけだ。計画では、翌日の早朝、ぼくが第一発見者になることで舞台装置が全部整うはずだった。
     だが、自分の靴を下駄箱に置いて一息ついたとき。
    「あれ?」
     隣で頓狂な声が上がった。見てみると、田村と同室の山本である。
    「どうしたんだよ」
     ぼくは目を丸くしている山本に聞いてみた。怪しまれないための芝居のつもりだった。
    「いや、ね……」
     ぼくはなぜか心臓がバクバクしてくるのを感じた。落ち着け、計画は完璧なはずだ!
    「田村のバカが、間違えておれの靴を履いて行きやがったようなんだよ。まったく、あいつは昔からズボラなやつで……」
     ぼくは足元が音を立てて崩れていくのを感じた。
     というわけで、ぼくは今刑務所でこんな手記を書いているわけだ。出てこられるのは二十年後だということである。
     確かにぼくはちょっとしたミスはしなかった。
     代わりに、大ボケなミスをしでかしてしまったのだった。
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    ~ Comment ~

    >神田夏美さん

    はじめまして。お読みいただいてありがとうございます。
    本当は、「巧緻な計画」のほうを書きたかったのですが、立案するには頭が足りずにこういう小説になってしまいました(笑)。
    思うに、完全犯罪は、実際にやるとしたら、巨大な組織を作って誰か他人に手を下させるか、はたまた優秀な弁護士を雇って法の網目をくぐりぬけるかくらいの道しかないような気がします。
    それじゃあ社会派推理小説になってしまって本格ファンとしては苛立たしいのであの手この手を考えるわけですが、「いかにバレるか」のほうが面白いですよね、こういうミステリって。

    よろしければ「短編小説」カテゴリにある、ほかのショートショートも読んでいってくださいね(^^)

    はじめまして、神田夏美を申します。通りすがりにこちらの小説を読ませて頂きました。やはり完全犯罪は難しく、ちょっとしたミスで崩れてしまいますね。自分のミスではなく、他人のミス(間違い)によって崩れてしまうというのも、オチがきいていていいなあと思いました。
    では、いきなり乱文失礼致しました。
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