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    「ショートショート」
    SF

    人類の太平洋横断は無かったろう論

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     皆様、今日はわたしの研究発表会にいらしていただいてまことにありがとうございます。本来ならば、わたしの娘、さゆりと、孫娘の菫も参っているはずなのですが、ちょっと都合が悪くなって、ここに不在なのが残念なかぎりです。
     私事はおいておきまして。
     これからわたしが説明いたしますのは、「人類の太平洋横断は無かった」ということです。そうです、数百年に渡って、日本人はペテンにかけられていたのであります。世界でもこの事実を知らないのは日本人だけであり、外国の連中は腹を抱えて笑っていたのであります。
     こんなことが許されてよいものでしょうか!
     では、論証に移りましょう。

     まず、考えなければならないのは、最初に太平洋を横断したと自称した人物です。こいつが大変にうさんくさい。
     マゼランというこの男は、ずかずかと島に上陸したかと思うと、なにも罪のない島民を殺しては食料を略奪し、怒った島民が抵抗すると島を焼き討ちにしてしまうようなひどい男であるのです。本人は、太平洋に出てから百日間も食料補給のチャンスがなかったなどといっておりますが、食料の欠乏したまま百日も航海ができるものでしょうか。できるわけがありません。これだけでも、マゼランの世界一周などという説が妄説であることはご理解いただけると思います。
     わたしが思うに、マゼランは大西洋に出てから西へは行かず、こっそりとアフリカ大陸の南端を回ってインド洋経由でフィリピンへ行ったものと思われます。あのような小汚い悪党面した男はなんだってやるのです。
     ここで、コロンブスは大西洋を横断してアメリカ大陸へ行けたのだから、太平洋も横断できるのではと考えておられるかたがあるとすれば、それは根本的な誤解をしているというしかありません。
     なぜなら、コロンブスは大西洋など横断していないからであります。新大陸発見だなどというのはコロンブスとスペイン・ポルトガルによる、国内の不満をよそに持っていくための詐欺行為であります。彼らは実際は暗黒大陸アフリカのどこかで銀と香辛料とタバコを手に入れ、何食わぬ顔をして母国へ持ち帰ったのであります。
     そうです。アメリカ大陸などは存在しません。虚妄の産物であります。
     太平洋戦争で日本はアメリカと戦ったではないかとおっしゃられるかもしれません。そうです、アメリカ大陸は存在しませんが、アメリカはあるのです。ではアメリカとはなにか。ハワイであります。今、アメリカと称している国はハワイなのです。山本五十六元帥がアメリカ大陸を攻撃できず、ハワイしか攻撃できなかったのも無理はありません。
     アメリカへ飛んでいると称している便は、みな途中で進路を変え、オーストラリアのほうをぐるっと回ってからハワイに着陸、ここはアメリカでございといっているのであります。
     ハワイだけで、南北アメリカ大陸全土をカバーできるかとおっしゃられるかもしれませんが、それについては、わたしはこの前実に参考になる映画を見たのであります。
     「メガゾーン23」というその映画においては、存在するのは日本の東京二十三区だけで、海外へ行ったつもりになっている人間はみな政府により幻覚を見せられているということになっておりました。
     この映画は根本的なところで正しいのであります。現実は、存在しないのは南北アメリカ大陸だけで、ユーラシア大陸とアフリカ大陸とオーストラリア大陸は存在するのでありますが。
     ではなぜ、政府はそんなことをしなければならないのでしょうか?
     それは、卑劣なペリーが軍事力を背景に江戸幕府に開国を迫ったことに由来します。このときペリーは秘密裏に日本に対し屈辱的な条件を飲ませたのであります。
     それが、「アメリカ大陸の存在を認めること」だったのであります。この裏には、日本を裏切った破廉恥漢のジョン万次郎の存在もありました。苦渋の決断の末、咸臨丸はアメリカに行ったふりをします。日本の今後を憂えた勝海舟らは、密かに明治維新を煽動しますが、より卑劣で日和見主義だった薩長の新政府は、「アメリカ大陸の存在」を認めてしまったのであります。以後の歴史は皆様もご存知の通りです。
     そう、太平洋横断もデタラメなら、アメリカ大陸の存在もデタラメなのであります。
     だからさゆりと菫は生きているはずなのであります!
     ニューヨーク行きの飛行機が墜落して炎上し、乗客乗員全員死亡などと、いったい誰が信じられますか! アメリカ人と称する輩が、密かに隠して、閉じ込めているに違いないのであります!
     日本にいて生き残った婿は、あの報道以来腑抜けになって鬱病と化し、今も精神科で入院しています。隙を見ては自殺を図るようになってしまったので、会社もクビになってしまったのであります。
     あの幸せそのものだった娘夫婦が、どうしてこんな理不尽な仕打ちを受けなくてはならないのでありますか! 特に菫は、菫はまだ四歳だったのであります!
     菫はわたしを、わたしを「おじいちゃん」と呼んで……。
     わたしは……。
     わたしは……。
     失礼しました。もうわたしは満足にお話しできません。
     これまで話をお聞きいただいたことに感謝いたします。
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    ~ Comment ~

    Re: ひゃくさん

    日本語なんて、通じさえすればいいんです(笑)。

    ウィトゲンシュタインもそういって(いない)。

    NoTitle

    > リンクの件、いいですよ~。こっちも張っときますね~。

    ご無沙汰で、それ、全然やってなかったです。
    早速張らさせてもらいます。
    うん?日本語合ってるか?(笑)

    Re: ひゃくさん

    個人的にはマイベスト級の作品ではないかと思っているのですが、あまり人気はないようで口惜しい作品でもあります。

    もうちょっと長くしたら……でも長くするとオチが台無しになるしなあ。

    まあいろいろともやもやしている作品ですね。


    リンクの件、いいですよ~。こっちも張っときますね~。

    NoTitle

    ま、なんとかの一念、岩をも通すと言うわけで、おじいちゃんには桃栗三年柿八年とばかり頑張ってほしいところです。

    ていうか、アメリカなんて、まー見えないところではいろいろ生活に影響してるんでしょうけど、でも日常的にはあってもなくても関係ないですもんねー。
    ていうか、そんなもん関係なし!で生きている人、普通にいますよね。
    …って、あ、それじゃ感想になってないのか!(笑)

    ってことで、そろそろまたハラが減ってきましたのでお暇したいと思います。
    リレー小説ではいろいろお迷惑おかけしましたが(でも、終わってみれば楽しかったですよね)、ホントありがとうございました。何より、いい刺激貰いました。
    そんなこんなで、もしよろしければポール・ブリッツさんのブログのリンク張らさせてもらいたいんですけど、どうでしょう?

    また、読みに寄ります。どうぞよろしく(笑)

    Re: YUKAさん

    この小説、自分ではものすごく自信があったのですが、ウケなかった作品でもあります……(^^;)

    わたしの脳、というわけではありませんが、そのものずばり、「頭の中がのぞかれている」というショートショートもございます。SFにカテゴライズしてあるけど、やっぱりあれもホラーかな(^^;)

    眠い。

    おはようございます^^

    最初はどういうオチは読めず

    >だからさゆりと菫は生きているはず……で

    これか!!と思いました^^
    さすがですね~~~。
    冒頭からの論文解説風な話も、とんでもないことを言っているようで
    その盲執のこじつけ理論がちゃんとあって、かなり面白かったです^^

    最後は被害者遺族であるおじいちゃんの哀しいお話だったのかと。
    やはりお話の作り方が上手いですね。
    本当に、ポール・ブリッツさんの脳はどんな構造か見てみたいです(笑)

    そんなネタの話もあるのでしょうか?^^

    Re: 土屋マルさん

    いつもお読みいただいてありがとうございます。

    こちらも、「シリアルキラー」楽しく読ませていただきました(^^)

    このショートショートはけっこう気に入っているのですが、あまりウケはよくなかったみたいです。

    「トンデモ」に見えてしまうんでしょうね。狙ってやっているので文句もいえませんが。

    とにかくショートショートだけで、ぜんぶ合わせると百篇近くなるはずですので、まあゆっくりとご覧になっていただければと……(^^)

    はじめまして|ω・`)

    ポール・ブリッツ様。
    先日は、私のブログへのご訪問とコメントを、ありがとうございました。
    いつもコッソリやって来ては、ショートショートを上から順番に読んで無言で帰っていたのですが、今日は「ぜひお礼を」と思い、コメントしてしまいます^^;

    最初はホラーから入り、今ようやくSFのカテゴリのここまで来たのですが、いつも、どの作品もとても楽しませてもらっています。
    このお話も、最初はトンデモ論を展開するちょっとアレな学者さんだと思って読んでいたのですが‥‥
    オチがすごい。
    アイデア、語彙、どちらも豊富で、本当に羨ましいです。

    (トンデモ本を書く人は実は頭がいい‥‥納得です。
    今、手元に「虚構新聞」というコンビニ本があるのですが、
    アホなことを書いている割に、騙し方が実に見事なのです。
    もしご興味がおありでしたら、一度ググってみて下さい。
    本当に面白いんですよ^^;)

    ではでは。
    またお邪魔させていただきます。

    >神田夏美さん

    突飛な論法を考えるのは楽しかったけど難しかったです(^^)
    創作トンデモ本を書くつもりで書きましたが、やってみてわかったことは、トンデモ本を書ける人というのはあれはあれでえらく頭がいいということですね(^^)
    オチはちと残酷すぎたかもしれません。人間せっぱつまると残酷なオチしか書けなくなるのかもしれません。残酷なオチって、どこか安易な面がありますもんね。
    八方丸く収まるハッピーエンドが、ある意味一番難しいのかなあ。

    突飛な論法に、最初この人は何を言っているのだろうなあと思ったのですが、まさかこんな哀しいオチだったとは……!ポール・ブリッツさんの小説はいつも最後で驚かされます。
    最初から最後まで描写を挟まない、語りだけの構成というのも面白い手法ですね。
    無駄なくまとまっていて、素晴らしいです。
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