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    「エドさんとふしぎな毎日(童話)」
    探偵エドさん(童話掌編シリーズ・完結)

    エドさん探偵物語:40 考える人

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    考える人



     エドさんは、とある高級なレストランで、依頼人とテーブルに差し向かいで座っていました。

    「君を優秀な私立探偵と見込んで頼みがあるのだ」

     大学で教授職に就いているという依頼人は、苦悩に満ちた表情でエドさんにいいました。エドさんも、真剣な表情でうなずきました。

    「わたしは今、深刻な問題を……」

     語りかけたとき、給仕がやってきました。あまりマナーには詳しくないエドさんには、なんという役職なのかはわかりませんでしたが、どうやらワインを専門に扱う職種のようです。

    「食前酒ですが、いかがいたしましょう? 当店としては、二五年ものと、三八年ものをおすすめいたしますが。いずれもヴィンテージです」

     教授は眉間にしわをよせて、目をつぶって考え始めました。

    「ううむ……二五年ものは、いささか重い。とはいえ、三八年ものは香りにわずかながら棘のようなものが混じっている……」

    「では、二五年ものになさいますか?」

    「いや、三八年ものには、かすかながら薔薇を思わせる芳香があるのだ。薔薇に棘はつきものというものだ」

    「では、三八年ものに」

     教授は給仕を制すると、額に手を当て、目をつぶりました。

    「君、こういうものごとは綜合的に考えるべきものなのだ。味と舌触りでは、二五年もののほうが勝っている」

    「では、二五年ものに?」

    「とはいえ、二五年ものはワインに慣れていないものには少々敷居が高すぎるのも事実なのだ。ここは熟考を要するところだ……ううむ」

     エドさんは、高級レストランということもあっていらいらしてきました。なにせ、「高級」と聞いたため、昼飯を抜いてきたので当然です。

    「わたしだったら、二五年ものでも三八年ものでもかまいませんよ」

     教授はそんなエドさんに首を振りました。

    「わたしが選んだレストランだ。君に満足のいく味を味わわせられなかったら、君をここに呼んだ申し訳がたたん」

    「……は、はあ」

     エドさんは、なにか納得のいかないものを感じながらも、ここは教授にすべてまかせることにしました。

    「他のものはないのか? 一七年ものとか。あの年は天候がよく、ぶどうがよく育っていたと記憶しているが」

     給仕の顔が明るくなりました。

    「ああ、一七年ものですね! ございます、ございます。当店では、三本ほど保存してございます」

    「三本……」

     教授はまた、眉間にしわを寄せました。

     エドさんは、悪い予感を覚えました。

    「その三本はどんなものかね?」

     エドさんは、気づかれないように足の指を曲げたり伸ばしたりしました。いらいらが少しはなんとかなるかと思ったからです。結論からいえば、無駄でした。

     結局、ワインをひとつ選ぶのに、三十分もかかってしまいました。

    「失礼した、エドくん」

    「いいえ」

     エドさんは、どんな素晴らしいワインなのかと、心の中で舌なめずりをしていました。

     教授は苦しみに満ちた顔でエドさんに語り始めました。

    「わたしの抱えている問題だが……」

     そのとき、ワインが運ばれてきました。

     教授は、さっと顔色を変えました。

    「君」

    「は?」

     給仕は驚いて立ち止まりました。

    「早すぎる」

    「はあ」

    「食前酒といっても、出すタイミングというものがあるだろう」

     ちらりとエドさんを見た教授は、また深刻に考え始めました。

    「いや、しかし、彼をもてなすには。だが、それでは、わたしの良心が。うわあああっ」

     結局、食前酒が飲めたのはさらに後で、しかも食事の間じゅうというもの、同じようなことが続きました。

     ようやく食事が終わり、教授は自分のトラブルを語り始めました。

    「それで、エドくん。わたしは……わたしは……なにで悩んでいたんだろう?」

    「知りませんよっ!」

     エドさんは呆れかえって叫びました。


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    ~ Comment ~

    Re: 涼音さん

    映画の話は始めると楽しいですからね。(^_^)

    調子がよければぜひ表ベストも(^_^)

    エドさんの教授は……病気ですな一種の(笑)

    お久しぶりです♪

    ご無沙汰しています。
    ここまで極端な人は居ないかもしれませんが、こういう印象を持つ人たまにいますよね^^;
    エドさん的にはたまりませんが、読んでる方はかなり楽しいお話でした。

    実は今日は少しゆっくりエドさん読もうと思って来たら裏ベストにすっかりハマリ読み漁ってしまいました^^;
    「ヤマト」「ガンダム」「タブチくん」「平成たぬき」「オペラ座の怪人」「Mr.Boo」どれも懐かしい・・・・。
    ヤマトは凄く好きなんですが、さらばで終わってくれてた方が名作になってたと思う・・・・。
    ガンダムはロボットものには珍しく人間ドラマが多く盛り込まれているのが好きでした。
    タブチくんは何かの映画の同時上映で観たんですが殆ど記憶無し。
    平成たぬきは、何故だか高畑作品(火垂るの墓以外)にあまり魅力を感じない。どうしてでしょう?宮崎監督は滅茶苦茶好きなのに・・・・。
    オペラ座の怪人は絶対に舞台の方が良い!舞台を見た人は絶対にそう言うと思います!
    「Mr.Boo」ジャッキーチェンにハマって一時期カンフーもの多く観ましたがハチャメチャやって楽しいと思いつつ、後に残らなかった記憶あります。でも声は耳に残っていて声優陣の偉大さを感じさせる作品ですね。
    そう言えば幼稚園の頃「ゴジラ対メカゴジラ」とか「ガメラ」とか「ヘドロ」とか見た気がする。もうすっかり内容忘れてますが^^;
    読んでいて結構同世代のニオイが・・・・^^?

    Re: YUKAさん

    ちなみにわたしは新刊書店とホビーショップに入るとこうなります(笑)

    古本屋だとリミッターが外れて買い込みますが(爆)

    こんばんは^^

    えぇ~~と笑っちゃいました^^
    そうそう。こういう人いますね。(ここまで極端でないにしても)
    面白かったです^^
    エドさんには悪いですけど~^^

    女性は、洋服を買う時にこういうキャラに変身することがあったりします。
    私は即決即買いなので、違いますけど。

    女の子のお買いものには、つきあえません(笑)

    Re: 有村司さん

    まあわたしもエドさんだけ書いているわけではないので、ほかの作品もよろしければ(^^)

    う~ん、早めに続きを書かなくちゃいけないかな、こりゃ。

    イメージが湧くまでしばらくかかると思いますが、期待せずにお待ちください……。

    私の愉しみが…。

    ハアイ!キャンディーは噛まずに最後まで舐める方、有村です!

    …と、最近大流行のアニメ調で自己紹介してみました^^
    気が付けばもう40話!!
    それこそ飴を噛まずに最後まで舐めるように、一篇一篇じっくり味わってきたこのエドさんの物語が、残りあと10話になってしまいました…orz
    私の愉しみが、あとたった10話!!10話だなんて!!

    …あれ?私は何を話そうとしていたのでしょう?
    ああ、そうそう、特に哲学の大家には、この手の「変人」が多いそうですね(笑)
    ですので、この先生も哲学の教授かな?などと思ってしまいました。

    エドさんお疲れ様…^^

    Re: 黄輪さん

    一癖ないような知識人を書いても面白くないですからな(笑)

    「へんな教授」は、昔からジョークのいい対象でしたし(^^)

    NoTitle

    ポールさんの書く知識人は、みんな一癖ありますね。
    こんな人たちによく巡り遭うエドさん、災難ですね。

    Re: コウさん

    わたしだってこんなはっきりしない人いやです(笑)。

    でも教授になれたということは、論文はものすごくびしっとはっきり書く人だったりするのかもしれませんね。

    ワインのめききもできるみたいですし。

    Re: limeさん

    仕事とはいえ、エドさん、ちょっとかわいそうだったかな(^^;)

    結局、エドさんは相談料をもらえたのかなあ、もらえなかったのかなあ、本人は話してくれないのですが(笑)。

    Re: ぴゆうさん

    お褒めいただいてありがとうございます。

    わたしは、旅行などに持っていく本を本屋で買うときにこういう精神状態になります。

    なにせ古本屋で買う値段の数倍するのですから(^^;)

    え? ただのケチですって? そうですねとほほ(^^;)

    ワイン

     ポール・ブリッツさん こんにちは。

     私は いらちなので、教授のような人とは付き合えないでしょう(・・。)ゞ テヘ
    でも、ワインは飲みたい(‘-‘*)エヘ
     悩みごとを忘れられるのは、いいですね(゚―^d)グッ!

     ではまた☆

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    NoTitle

    ははは。
    かわいそうなエドさん。
    すっごく気持ちわかります。
    「どうでもええやないか!」と叫びたくなりますね。

    価値観の違いというものは、やっぱり大きな問題でして^^;

    とにかく・・・エドさん、お気の毒。

    NoTitle

    おもしろい、これは文句なしにおもろい。

    決められない人っているよねぇ。
    決めたとしても
    「こうした方が良かったか?いやいやそうではない」
    ナンテいつまでも迷っている。

    猫国でも何年か先に紹介をするキャラにそういうのがいる。
    いつも迷っているしょうもないのが。

    さっきくれたコメなんだけど、
    あの書き方だとラ・ラ・ラさんがポールに怒られているのかと誤解するよ。
    わたしだけを怒っていると云うのがもっと分かり易いように書き直した方がいいね。
    昇太風のツッコミも中々良かったざんす。
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