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    「エドさんとふしぎな毎日(童話)」
    探偵エドさん(童話掌編シリーズ・完結)

    エドさん探偵物語:42 願い事の花

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    願い事の花



     エドさんは、私立探偵としての仕事もそこそこに、なぜか、花屋の前をうろうろしていました。色鮮やかな花がいくつもいくつも並ぶ中、エドさんは花を見てはため息をつき、値札を見てはまたため息をついていました。

     ついにたまりかねたのか、従業員がエドさんに声をかけてきました。

    「そこの人、買うんですか、買わないんですか」

     エドさんは逃げるようにその場を離れ……いえ、違いますね。その場から逃げました。

     路地に入って、自分のふがいなさを呪っていると、誰かがエドさんに声をかけてきました。

    「花はいりませんか?」

     ふと見ると、幼い少女が、一本の花を持って立っていました。見たことのない花です。

    「いくらだい」

     エドさんは、我知らずそう答えていました。なにか、変わった雰囲気をその少女から感じたからです。

    「お値段は、白銅貨一枚と、飴玉ひと粒。飴玉はなくてもかまわないわ」

     少女は、歌うようにそういいました。

     エドさんは、ポケットを探りましたが、私立探偵というものは、あまり飴玉を持ち合わせていないものです。

     財布を出したエドさんは、白銅貨を二枚取り出しました。

    「その花をもらおうか。この、もう一枚の白銅貨で、この辺りにあるお店へ行って、飴玉を一袋買うといい」

    「いらないわ。あたしが欲しいのは、飴玉ひと粒だもの。お金を一枚もらえれば、それでいいわ」

     少女は、エドさんの手から白銅貨を一枚取ると、花を渡していいました。

    「これね、願いがかなう花よ。飴玉をくれたら、願いが三つかなうけれど、飴玉がなかったから、二つしか願いはかなえてくれないわ。残念だけど、掟なの。力を使い果たしたら、しおれるのですぐにわかるわ。じゃあね!」

     後には花を手に呆然としているエドさんだけが残されました。



    「変な商売に引っかかったのかなあ」

     エドさんは、ひとりごとをぶつぶついいながら、花を手に大通りを歩いていました。

    「願いがかなう花なんて……」

     そのときです。

     道路を走ってきたトラックの荷台が、突然ぱっと開いたかと思うと、積んであった無数の鉄骨が、がらがらがらっと恐ろしい音を立てて道じゅうに転がったではないですか。そして、その後方からは子供を満載したスクールバスが……。

     エドさんは反射的に叫びました。

    「助けてくれっ!」

     次の瞬間、信じられないことが起こりました。鉄骨が、まるで時間が逆戻りしたかのごとく、するりするりと宙を浮いてトラックの荷台に自分から収まっていき、トラックもスクールバスも、その後ろに続くいくつもの車も、そのままなにごともなかったかのように道を走っていったのです。

     エドさんは、へたへたと道路に座り込んでしまいました。

    「本物だったんだ……」

     しばらくそのままへたりこんでいたエドさんでしたが、やがて気を取り直すと、がぜん、勇気百倍してくるのを感じました。

    「よおし、これさえあれば、わたしだって」

     決然と歩き出したエドさんの前に、いつもエドさんを助けてくれる、栗色の髪の女性芸術家が現れました。

    「や、やあ」

     エドさんは、少々どもりがちになって右手を挙げました。

    「あら! エドさん! こんなところで会うなんて珍しいわね。ところで、手に持っている、そのしおれた花はなあに?」

     そういわれて、エドさんは、はっと、自分の手にした花を見つめました。花は、見るも痛々しいほどにしおれていました。

     あの、交通事故を未然に防いだことで、力を使い果たしてしまったのでしょうか。

     いや……もしかすると……二つ目の願いがかなってしまったのでしょうか。彼女と早く会いたい、という願いが……。

     エドさんは、苦い笑みを漏らすと、花を背広のボタンホールに挿し、いいました。

    「ボリスの店で、食べませんか。わたしのおごりなので、たいしたものではないですが」

    「いいわよ」

     これ以来、エドさんは外出時にはかならず飴玉を二、三粒持って出かけるようになりました。あいにく、不思議な花と花売り娘を見たのはそれっきりでしたが。


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    Re: YUKAさん

    この手の話で一番笑ったのは、たしかシェクリィの短編だと思ったのですが、どこか別次元の魔術師に、「願いをかなえる魔人」だと思われて呼び出されたこの地球の「保険外交員」の話ですね。

    落ちが絶妙でした。

    願い? 「世界人類が平和でありますように」じゃないんですか(棒読み)

    こんばんは♪

    可愛いお話しでした^^

    願いを叶えると言えば――
    昔、星先生の話で、魔法のランプの魔人に願い事を聞いて貰おうとして
    小賢しい人間が散々考えた挙句、魔法の使える魔人になりたい……
    みたいな願い事をして魔人と入れ替わり
    魔法のランプに閉じ込められた話を思い出します。

    何を願うのがいいんだろう~~と無駄に妄想する私です^^;

    Re: 有村司さん

    魔女っ娘花売りさんは、すぐそばにいて、わたしたちも日常的に目にしています。

    ただ、それに気づかないだけなのです……。

    と、ウルトラシリーズのナレーターみたいな口調でいってみたりして(^^)

    飴玉と500円玉

    こんにちはー。

    ワタシは子供の頃舐めていて舌を切ってから「飴」というのがどうも苦手です。
    なので持ち歩いてはいないのですが、飴と500円玉(白銅貨なので)は、これから常に持ち歩こうかな?などと考えてしまいました。

    ですが、こんな邪心に満ち満ちた汚れた大人の前に、この魔女っ娘花売りさんは現れてくれないだろうと思います^^;

    Re: limeさん

    だから、途中までは気に入るっていったでしょう。

    うーむ、やっぱりこうなったか……(汗)

    NoTitle

    え~~~~ん゜゜(´□`。)°

    ハヤが~~~~~ 。゜゜(´□`。)°゜。゜

    ポールさんの、バカーーーーーーーーーーー゜。゜゜(´□`。)°゜。゜

    でも、・・・最期まで読むもん(>_<)

    Re: limeさん

    limeさんお若いじゃないですか(棒読み)

    「飴ちゃん」を入れるような年齢ではないですよ(棒読み)

    あれ? どうしてわたしの手にはすり鉢とすりこぎが?(^^;)

    NoTitle

    今回も、とっても夢のあるかわいいお話でした~。
    こういうの、大好きです。

    そうです。大阪のおばちゃんは、カバンの中に絶対「飴ちゃん」を入れています。
    私は入れていませんよ・・・( ̄▽ ̄)ふ。

    Re: 矢端想さん

    それはそれでいい光景のような(^^)

    しかし「じゃりン子チエ」でそんな光景見たことないぞ(笑)。

    NoTitle

    東京方面では「飴玉」というようですが、
    大阪方面では「飴ちゃん」といいます。

    大阪のオバチャンはなぜか常にポケットに飴ちゃんをいっぱい持っていて、なにかっちゅうと「飴ちゃんあげよか」と言って、くれます。

    Re: ぴゆうさん

    いいですね、『願いをかなえる花』のドライフラワー。

    いや、ドライフラワーじゃないな、ポプリだな(^^)

    毎朝、一日の幸せを祈るとゆっくりと効いてくる、という。

    しまったこのネタで書くんだった(^^;)

    NoTitle

    そんな花があったら何をしよう。
    欲が深すぎるからすぐに萎れちゃいそうだ・・・
    あーーあ。
    ドライフラワーになったら効き目はないのかね。

    Re: ねみさん

    なんじゃそりゃ~!!

    人間不信もいいところまで来てるなあ。

    最もそういう不埒者が混ざっているらしいのは事実だけど……。

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    このコメントは管理人のみ閲覧できます

    NoTitle

    今の日本では飴玉を持ち歩くだけで
    道行く人から不審に思われるそうです。
    それで子供を釣って・・・みたいにするんじゃないか的な。

    なんというかもう歪んでますね。
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