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    「エドさんとふしぎな毎日(童話)」
    探偵エドさん(童話掌編シリーズ・完結)

    エドさん探偵物語:43 悩めるキューピッド

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    悩めるキューピッド


     その日、小さな町で私立探偵事務所を開いているエドさんの前の椅子に座っていたのは、羽根を生やして背中に矢筒を背負い、手に弓を持った、どことなくありがたい感じのする存在でした。

     キューピッドです。

     もうなにがあっても自分は驚かないんだろうな、と、どこか人生について達観するところがあるエドさんでした。

    「で、どうされたんです?」

    「最近、陰謀が、ぼくの周りで行われているようなんです」

    「陰謀?」

     エドさんは、なんとはなしの恐怖にかられました。いろいろと、将来について考えることがあったからです。

     エドさんは身を乗り出しました。

    「いったい、その陰謀とやらは、どういうものなんですか?」

    「はい。ぼくが弓に矢をつがえて撃つと、必ずといっていいほど、恐ろしいトラブルが起こるんです。結ばせるはずだったカップルが別れてしまったり、いきなり関係のない人間が横からカップルの中を壊してしまったり、もうめちゃくちゃです」

     エドさんは真剣に聞いていました。

    「でも、キューピッドって、そういうものでしょう? いたずら好きで、人間を右往左往させるのが大好きだった、と記憶しているんですが」

    「それはそうですが、それでも、中には、どうしてもこの二人を幸福にしてあげたい、と思う人たちがいるんです」

    「ほう」

     エドさんは、さらに身を乗り出しました。悪い予感しかしなかったのです。

    「で、そういったカップルに、トラブルが起こってしまうわけですね?」

    「そうなんです。これでは、わたしは、胸を張って天界に生きることができません」

    「それで、どうしてわたしのところに」

    「ペニアーのところの精霊から聞いたんですよ。精霊の相談にも親身に乗ってくれる私立探偵がいるって。あいにくと、あいつはまだ、一人前になってはいないようですが」

     貧困の女神の手下に一人前になられてたまるか、と思うエドさんでした。

    「どうしたらいいでしょう。これは、ぼくの周りで、なにか、ぼくを陥れるための陰謀が練られているのだとしか思えません。でも、ぼくには、その陰謀を企んでいるものが誰かすらわからないのです。わかったら、この弓と矢でひどい目にあわせてやるのに」

    「しかし、わたしも、天界に知り合いなんていないしなあ。それとも、いるのかなあ。天界の人間関係なんて、知らないからなあ。まあいいでしょう、わたしが力になれるなら、喜んで力をお貸ししましょう」

    「感謝します」

     エドさんは、しばし考えました。

    「まず、その陰謀家は、あなたの道具に、なにか仕掛けをしている可能性があります。あなたの道具を見せてくれませんか?」

    「道具といっても。この弓と……あ、この弓、短弓ですが、狙いは正確なんですよ」

    「はあ」

    「そしてこれが、黄金の矢……」

     エドさんは、まじまじと、その伝説に名高い矢を見つめました。

    「これを射ると、どうなるんですか」

    「心臓に射ち込まれたものは、燃えるような恋情の虜になります。これと対になっているのが、この鉛の矢です」

     キューピッドは矢筒からもう一本の矢を取り出しました。エドさんは、腕を組んでその矢を見つめました。

    「これを心臓に射ち込むと、射られた者は恋愛のことなんか、まったく考えられなくなります。そうやって、人間の運命に介入するのが、ぼくの仕事なんです」

     エドさんは、机の引き出しから拡大鏡を取り出しました。

    「まあ、これを通してのぞいてください」

     エドさんはキューピッドの前に拡大鏡を押しやりました。

    「あれっ? 金の矢と鉛の矢が、逆になった! 何の魔法なんですか、探偵さん!」

    「わたしの結論からすれば、あなたを陥れようなどと企んでいるものはいませんね。あなたの敵は、ずばり、眼です。鍛冶の神か、医薬の神のもとへ行って、『遠近両用メガネ』を作ってもらうのがいちばんですね」

    「ありがとうございます。これですっきりしました。お礼に、この矢のどちらかを、あなたの望む相手に……」

    「けっこうです」

     眼の悪いキューピッドなんかに心を射られてたまるか、と思うエドさんでした。


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    ~ Comment ~

    Re: 椿さん

    実は現代日本の少子化の原因は……

    ウソです(^_^;)

    NoTitle

    ある意味究極の、運命のランダム性というか。
    意志を持って運命に介入されるのも考えてみればビミョウなので、矢を射られる方にしたらそんなに変わらないかもしれないですが。

    しかし、メガネ(遠近両用)のキューピッドとか。想像すると笑えます。

    Re: ダメ子さん

    コメントの大幅な遅れ、大変申し訳ありません。

    キューピッドさんの目は、もしかしたら恋愛シミュレーションゲームのやりすぎかもしれません(笑)

    キューピッドもハマる恋愛ゲーがあったら見てみたいものですが。

    キューピッドさんも
    だいぶお年を召されているのでしょうか?

    Re: YUKAさん

    たぶん今のエドさんなら、宇宙から隕石が落ちてきてなにもかもうやむやになっても驚かないに違いない(笑)。

    このキューピッドさんは書いていて楽しかったです(^^)

    こんばんは♪

    あはは^^近眼のキューピット♪
    確かに、そんな理由で人生を変えられたら堪らない^^

    もう何があっても自分は驚かないんだろうって
    そりゃあエドさんもここまできたら
    目の前に起きている現実を受け入れなきゃですね~

    Re: 有村司さん

    うーむちょっと即物的にすぎたか(^^;)

    ♪ いつまでたっても恋の矢は あなたの胸には刺さらない~ ♪

    なんて歌が頭の隅にあったのかなあ。

    キューピッド界にも…

    こんばんは!

    キューピッド界にも高齢化の波が…?
    ああ、夢がない、世知辛い…orz

    Re: limeさん

    でも遠近両用メガネが必要ですよこいつ。もしかしたら乱視も混じっているかもしれません(笑)

    NoTitle

    恋の矢は要らないから、キューピッド、君がほしい。
    ・・・とか言ったら、鉛の矢を打たれるかな・汗

    Re: LandMさん

    たぶんキューピッドは目隠しをして弓を乱射しているに違いありません。

    そうでなければわたしにもひとりくらいいたって。

    くそう(海へ向かって小石を投げる)。

    NoTitle

    確かにキューピットが意中の相手を外す場合が良くありますが・・・。実際問題それが生じたら色々なトラブルの元なような気がしないでもないですね。軽率にそういうものを使わないほうがいいような・・・と思ったりしないでもないですけどね。まあ、天界の話なのでアレですが・・・。天使は天使でそういうノルマがあるのだろうか・・・。と思ったりしますね。

    Re: ぴゆうさん

    脳休めになったようで幸いです。

    あと数話のストーリーがなかなか出てこない……(^^;)

    NoTitle

    最後がやたらと現実的だこと。
    ぷぷ
    脳休めになったわ。
    ニャハハハ
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