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    「エドさんとふしぎな毎日(童話)」
    探偵エドさん(童話掌編シリーズ・完結)

    エドさん探偵物語:44 砂時計出世道

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    砂時計出世道



     私立探偵のエドさんは、うなだれて席につく相手を見て、ため息をつきました。なぜならそれは、砂時計だったからです。

    「あの、ここは、職業安定所じゃないんですけどね」

    「はあ、でも、仲間から、悩んでいるときはここに来たほうがいいって聞いたので」

     誰だそんなことをいっているのは、と、エドさんは思いましたが、とりあえず相談にだけは乗ってみることにしました。

    「で、要するに砂時計さん、なにか一人前の職に就きたい、というわけなんですね」

    「はい。見てのとおり、おれは出来損ないの、三分に十一秒足りない三分計なんです。二分四十九秒しか計れないので、これまでどんなに人様の役に立とうと思っても失敗ばかり……おれはどうしたらいいんでしょう」

     たしかに難問です。エドさんは、腕を組みました。

    「二分四十九秒じゃねえ……」

    「ええ。ある家では、ヌードルがぼそぼそになってしまってクビ、というか捨てられまして、また、ある家では、おれよりももっと優秀なキッチンタイマーとやらが入ってきて仕事を干され……とにかくそんなことばっかりなんです。探偵さんが最後の希望なんです。このままじゃ、おれ、どんな悪の道に入ってしまうか……」

     エドさんはこの壊れた砂時計が気の毒になってきました。

    「二人で考えましょう。そのうちなにかいい思いつきも……」

     エドさんがそういいかけたときです。扉が開いて、なにか……「時計」のようで「時計」でない、なにか変なものが入ってきました。

     驚くエドさんに、その「変な時計」はいいました。

    「すまん……齢を取ると、外で待つのが辛くてな……」

    「あなたは誰ですか」

     ちょっと机に潜りたくなったエドさんでしたが、勇気を出して尋ねてみました。

    「わしは、『永遠を刻む時計』じゃ。代々、宇宙の時を刻むのが仕事なんじゃが、仕事が退屈で、激務じゃから、もう、後を継ごうとするものがいなくてな。わしの代でもう、『時間』は終わりにしようかとなあ……」

     そんなことされたらたいへんです。止めようとエドさんが口を開く前に、椅子にいた砂時計が、椅子からぴょんと飛び降りると、「永遠を刻む時計」の前に、両手(のようなもの)を突いて頭を下げました。

    「お願いします! おれを弟子にしてください!」

     エドさんにはなにが起こっているのかよくわかりませんでしたが、そのまま事態を見守ることにしました。

    「砂時計くん、この仕事は難しく、退屈で、しかも才能がいるのだ。君にその才能があるかは、難しいところだ」

    「でも、でも、おれ、おれ……!」

    「わかった。ひとつテストをしよう。時間を計ってみたまえ」

    「おやすい御用です!」

     砂時計はひっくり返りました。

     エドさんの前で、ものすごく長く感じる二分四十九秒が過ぎていきました。やがて、さらりと最後の砂粒が、下のガラスに落ちたとき、「永遠を刻む時計」は聞きました。

    「何分経った?」

    「二分四十九秒です」

    「三分計なのにか?」

    「はい。二分四十九秒です」

    「よし。お前には、才能があるようじゃな。時間を正確に刻む才能が。この宇宙を探しても、ここまで正確な『二分四十九秒計』は、ほかにないわ。だが、わしのような、『永遠を刻む時計』になる道は、辛いぞ。苦しいぞ。それでも、やるつもりか?」

     砂時計は、先ほどまでとは打って変わって明るい声で答えました。

    「はい。師匠。おれ、半人前以下ですが、がんばって修行します!」

    「よし。たしかに聞いたぞ。では、行こう、若者よ! 探偵、これはわしからの礼じゃ! 受け取ってくれ!」

     エドさんが目をぱちぱちすると、ふたつの時計は消えてしまい、テーブルにはなにかの『化石』が乗っていました。

    「コレクションに入れとくか……」

     エドさんは化石を大事にしまいました。

     今も、エドさんは夜空を見上げると思うことがあります。エドさんが死んで、人類も滅んで、それから果てしなく時間が流れたころ、宇宙の彼方で静かに地道に時を刻んでいるのは、あの砂時計なのかと……。詩句にもありますが、宇宙がその寿命を終えたとき、永遠はまだ始まってもいないのです。


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    ~ Comment ~

    Re: YUKAさん

    「変なもの」のほうが人間よりも押し出しが強いもので(笑)

    ここだけの話、エドさんですが……おや誰か来たようだ。こんな早朝に宅急便?

    こんばんは♪

    スケールの大きな話ですね。
    永遠の時――
    宇宙規模のお話しです^^

    もう、エドさん自体が人ではないのではないかと思うに至ってます。
    普通の人の依頼はさっぱりになりましたね~^^


    >誰だそんなことをいっているのは

    エドさんについてどんな噂が飛び交っているのか、
    私も知りたくなりました~

    Re: 有村司さん

    砂時計くんが立派に時を刻めるようになるのを祈りたいものですね(^^)

    エドさんもエドさんでいつもは些末なことばかりやっていますがたまにはでかいことも(爆)

    壮大な出世物語!

    おはようございますー。

    エドさんの物語を拝読していると、些末なことで悩んでいるのが「アホらし」ってなります^^

    今ワタシの頭の中では、宮内タカユキさんの歌う「映画サイボーグ009のエンディング曲」が流れてます。

    今頃、あの砂時計君は、広大な宇宙のどこかで2分49秒を刻み続けているのでしょうかねえ…。

    Re: ぴゆうさん

    これを書いたときは頭がウニ状態になっていました(笑)

    いちおう話に収拾がついたのがウソみたいです(←そんなことでいいのかわたし)

    ちなみにアイデアのもとになったものをふたつ挙げろといわれれば、前述の「死霊」と、みんなのうたの「一円玉の旅がらす」。なんてミスマッチな組み合わせだ(^^;)

    NoTitle

    インスタントを食べた所、ある意味タイムリーだわ。
    へへ
    スケールが大きくて、そして何やら心温まる話だった。
    頑張ってほしいね。
    二分四十九秒計君。

    Re: 矢端想さん

    とにかく50話まで書き上げると決めた以上やり抜くつもりですが、最後の一週間がつらすぎ……(^^;)

    もう使えるものは何でも使おう、と(^^;)

    追い込まれていたりするのであります。他に書かなくてはいけないものもあるし。

    ふらふら(^^;)

    NoTitle

    へへ、知ってんだぜ。「ネタがない」ことを不自然に宣伝し出したときはすっげえ自信作が控えてんだぜ。(あっ、言っちゃった・・・)

    「ぺヤングソース焼きそば」子供のとき(三重県)からCMで知ってたけど、未だに食べたことないです。今は関西でもどっかで売ってたと思うのだが。・・・あっ、確かローソンにあったぞ!

    Re: ねみさん

    そういや最近カップ麺などあまり食ってないなあ。

    ちなみにわたしはカップ麺では頑迷な「ペヤングソース焼きそば」党ですが、関西以西では売ってないと知ってガガーンです。全国区だと思ってたのに~!!

    Re: 矢端想さん

    ひとことで説明しよう! ネタがないのだ!(^^;)

    ちなみに、これを思いついたのは、埴谷雄高の「死霊」を読んでのことです。あれ、見た目の難解さに比べて、表層だけを追うのなら中身はSF的でミステリ的でひどく面白いけれど、読む人を選ぶな……(^^;)

    ちなみに今回の話、次回以降への伏線だったりします(マジ?)

    NoTitle

    ちょっと固めのラーメンとかどうでしょうか・・・?
    個人的には三分より少し前にあけて固めの麺をすするのが
    好きだったりします。

    NoTitle

    物語が大きすぎて、頭がくらくらします。ネコの話かと思えば宇宙の永遠の話だものなあ。本質はみなどこかで繋がってる気がしますが。これだから哲学出身って奴は・・・。

    ここで「ミもフタもない宇宙論」なんか出さないでね、気持ちはわかるけどロマンが台無しだから。

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