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    「エドさんとふしぎな毎日(童話)」
    探偵エドさん(童話掌編シリーズ・完結)

    エドさん探偵物語:47 とある気持ちのいい朝

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    とある気持ちのいい朝



    「うーん……」

     エドさんは、ベッドの中で目を覚ましました。ずいぶん寝心地がいいベッドです。とても自分のアパートのあの安くて硬いベッドと同じだとは思えません……。

    「……!」

     エドさんは、思わず跳ね起きました。自分のパジャマですが、こんな部屋、見たことがありません。

     大きい窓からは、朝の陽光がさんさんと入ってきます。床はフローリング、それも小さな木を組んで作る本式のフローリングで、贋物の板一枚を張っただけの安物のそれとはまったく違います。屋根は吹き抜けになっていて、しかも、このベッドは……ダブルベッドではありませんか。

    「わたしは……いったい、どうしてしまったんだ……?」

     エドさんはゆうべのことを思い出そうとしました。ゆうべは自分の探偵事務所からまっすぐ帰ってきて、このところ疲れ気味だったので、パジャマに着替えると、なんとかいう睡眠薬を飲んで、そのまま自分のベッドにばたんと倒れるように寝てしまったのでした。とても、こんな居心地のいい部屋にいていいわけがありません。

    「なんなんだ……これ……」

     エドさんは、探偵としての経験と、理性を総動員して、なんとかこの事態を説明しようとしました。

     誘拐でしょうか? それとも幻覚?

     結局、エドさんの理性は、次のことに落ち着きました。

    「わたしは夢を見ているんだ」

     月並みですが、ほかにどう考えろというのでしょう。

    「夢なら……」

     エドさんは、ダブルベッドを占領するように、再び横になりました。

     実に寝心地がよく、ついうとうとと……しかかったとき、エドさんはふと枕もとを見ました。

    「これは……」

     エドさんは身を起こすと、それを手に取りました。

     それは、「永遠を刻む時計」が謝礼として置いていった、なにかの化石でした。

    「なんでこれだけが……」

     エドさんは首をひねり……ある結論に達しました。

    「ここは……!」

     エドさんは周囲を見回しました。

     そのときです。甲高い金属音とともに、なにかの制服をりゅうと着込んだ、長身の男と小柄な男のふたりが、妙な機械とともに現われました。

    「君」

     長身の男の威圧的な声に、エドさんは呆然としながらも答えました。

    「は、はい、なんでしょう」

    「なんでしょうじゃないよ。免許証だよ、免許証」

    「免許証……?」

     小柄なほうが頭を抱えました。

    「なんてこった、巡査長、こいつ、無免許運転ですよ」

    「無免許ってなんです……」

     エドさんは、うすうす状況がわかりかけてきた頭で、でもなお信じられないまま尋ね返しました。

    「あのね、あんたみたいな、時間旅行のイロハもわからない人間が、勝手に時間を操作したりなんかするから、物質が重なり合って、時間エネルギーがあふれたことによる大爆発が起こってみんなが迷惑するの。わかる?」

    「は……はあ」

    「じゃ、その怪しげな代物は没収するからね。こことここにサインをして。じゃ、もといた時間へ送り返すからね。このままでは、あんたの身体に溜め込まれた時間エネルギーがいつ暴れだすかわからないから。いいね?」

    「はあ」

     エドさんは、いわれたとおりに書類にサインをし、「化石」と思っていたものを渡しました。

     次の瞬間、エドさんの寝ていた床に、見えない大穴が開き……。

     エドさんは、天井近くの空中から、どすーん! と、自分の部屋のベッドの上へと落ちてきました。毛布とクッションがなければ、ひどい怪我をしていたでしょう。

    「いたたた……やっぱり、警察は探偵の敵だなあ」

     腰をさすりながらつぶやいたエドさんは、壁のカレンダーを見ました。今日でした。

     エドさんは苦笑いすると、服を着替えて、なじみの店へパンとミルクコーヒーの朝食を食べに、いつもの生活へ戻っていきました。


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    Re: YUKAさん

    どうぞゆるりとご覧くださいませ。

    エドさんは逃げませんので(^^)

    「あとがき」と「作品解題」も読めばもっと楽しめる……はずです(^^;)

    こんばんは♪

    艶っぽい話しかと思ったら、時間旅行ですね。
    もう、何があってもそうそう驚かないエドさん。。。

    気がついたら、もう最終話が近い?
    わぁ~~
    一気に読みたい気持ちを抑えて(なぜ?)
    また来ます^^

    Re: 有村司さん

    はたして単に「気楽な時間」だけなのか……(^^)

    伏線だったりして(^^)←あと3話なのに(爆)

    終わった後に読み返すと、また新たな発見が←あと3話なのに(^^;)

    ???

    おはようございます。

    三度ほど読んでようやく事態(?)が、おぼろげながら分かったような?
    宇宙時計さんが置いて行ったのは「時の結晶体」なんですね?
    エドさんは、おそらく、就寝するまえクタクタだったので、「気楽な時間へ飛びたい」とでも思ってしまったのかも?

    そういえば、最近「タイムマシン理論が可能かもしれない」と大騒ぎになりましたし「常識」というのは、いつ覆ってもおかしくないものですね…。

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    Re: 矢端想さん

    >相対性理論をトンデモ理論として

    そんなこといったって現に広島と長崎の上空で原子爆弾は爆発しておりますし、通信衛星は「相対論的時差」による修正をプログラムされて動いておりますし。そもそも相対性理論がトンデモだったら原発事故で大騒ぎしてはいないはずですし(^^;)

    タイムトラベルが可能かどうかは難しい問題です。物理学だけではなく哲学的にも。わたしも、よくSFものに出てくるような「安易な時間移動」には懐疑的ですが、素粒子レベルになると、ある程度可能性は残されているのではないか、と考えています。

    ちなみに「エドさん」はファンタジーであってSFではないので(笑)。

    NoTitle

    これは未来のエドさんの家なのかな。スイートホーム。

    タイムトラベルはSFでは一番夢がありますが、最近では、僕は絶望的な説に傾倒しています。すなわち「『時間』とは概念であってモノではない」というやつです。森羅万象の変化するさまを把握するための、あくまで概念を人の英知は「時間」と名付けた。変化とは一方通行で絶対的不可逆です。
    だから自分の主観時間を操作できれば(主観的に)未来には行けるが過去には戻れない、という説に説得力を感じてしまいます。今日では相対性理論をトンデモ理論として否定している物理学者も多いときいたこともあるし。

    我ながら今日は無粋極まりないコメントをしちまった…。
    スミマセンスミマセン。

    Re: limeさん

    >ついに昨夜泥酔の中出会った貴婦人の別荘になだれ込んで、夜明けのコーヒーなのか!

    それには甲斐性というものが少し足りなくて(笑)

    NoTitle

    あの時計も、よけいなプレゼントをくれたものです。
    エドさん、いろいろ災難ですね。
    でも、何事も無かったように日常に戻るところは、意外とかっこいいです。

    ・・・でも最初、「え・・・エドさん、ついに昨夜泥酔の中出会った貴婦人の別荘になだれ込んで、夜明けのコーヒーなのか!」・・・とか、ちょっと期待したりした。 ( ̄ー ̄)
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