ホームズ・パロディ
ホームズ・ジョークその3
私、医学博士ジョン・H・ワトスンと、史上最高の名探偵であるホームズは、ヘレン・ストーナー嬢の依頼に応えるべく、ロイロット博士の屋敷にやってきた。
ヘレン嬢の姉であるジュリア・ストーナー嬢は、二年前に「まだらの……」という謎の言葉をつぶやいて不審な死を遂げていた。
ホームズは、ロイロット博士が、ジュリア嬢の死の首謀者であり、さらにヘレン嬢に対してなにか恐ろしい計画を立てているのではないかと推理したのだ。だが、ホームズは、まだ私にその推理の全貌を話したわけではなかった。
「危険はないのかね、ホームズ」
「危険だ、ものすごく危険だ。だが、君はそんな危険にひるむような男ではないと思っているよ、ワトスン君」
私はうなずいた。
「うん、ヘレン嬢は窓を開けていてくれるだろうか」
「それを望むだけさ。行くぞ、ワトスン君!」
ホームズと私は、ヘレン嬢の部屋に飛び込んだ。
そこには、なにかの食事のようなものが用意されていた。
「なんだろう、ホームズ。食べられるのかな?」
「よせ、ワトスン君、触れるな!」
ホームズは食事の皿をつかむと、換気口越しに隣の部屋に投げ捨てた。
その後、恐ろしい悲鳴が上がった。
「いったい何なんだね、ホームズ!」
「隣の部屋に行こう。もう大丈夫だろうとは思うが」
私とホームズは、ヘレン嬢の部屋を出るとその隣の部屋に向かった。
そこには、ロイロット博士が倒れていた。口からはなにかがはみ出ていた。
ホームズは叫んだ。
「見たか、ワトスン君、あれを見たか!」
「いったい、これはどうしたことだ、ホームズ!」
「口からはみ出ているのはフグの卵巣だ。僕は日本で聞いたのだが、一口でも食べれば絶対に助からないような猛毒を持っている」
「ということは、ロイロット博士は……」
「そうだ。美食家の博士は、自分が別な料理に見せかけて作り、ヘレン嬢をも殺すはずだった料理に対し、自制心を失ってしまったのだ。それほどにうまいらしいのだ、フグの肝は」
「つまりなんだ、ジュリア嬢は……」
「だまされたのだろう。別な、無害な食べ物だと思って、このフグの卵巣を食わされたに違いない。たとえば……」
鈍い私も、ホームズがいいたいことにはっと気がついた。
「まだらのきも(真鱈の肝)だといわれたのか!」
ヘレン嬢の姉であるジュリア・ストーナー嬢は、二年前に「まだらの……」という謎の言葉をつぶやいて不審な死を遂げていた。
ホームズは、ロイロット博士が、ジュリア嬢の死の首謀者であり、さらにヘレン嬢に対してなにか恐ろしい計画を立てているのではないかと推理したのだ。だが、ホームズは、まだ私にその推理の全貌を話したわけではなかった。
「危険はないのかね、ホームズ」
「危険だ、ものすごく危険だ。だが、君はそんな危険にひるむような男ではないと思っているよ、ワトスン君」
私はうなずいた。
「うん、ヘレン嬢は窓を開けていてくれるだろうか」
「それを望むだけさ。行くぞ、ワトスン君!」
ホームズと私は、ヘレン嬢の部屋に飛び込んだ。
そこには、なにかの食事のようなものが用意されていた。
「なんだろう、ホームズ。食べられるのかな?」
「よせ、ワトスン君、触れるな!」
ホームズは食事の皿をつかむと、換気口越しに隣の部屋に投げ捨てた。
その後、恐ろしい悲鳴が上がった。
「いったい何なんだね、ホームズ!」
「隣の部屋に行こう。もう大丈夫だろうとは思うが」
私とホームズは、ヘレン嬢の部屋を出るとその隣の部屋に向かった。
そこには、ロイロット博士が倒れていた。口からはなにかがはみ出ていた。
ホームズは叫んだ。
「見たか、ワトスン君、あれを見たか!」
「いったい、これはどうしたことだ、ホームズ!」
「口からはみ出ているのはフグの卵巣だ。僕は日本で聞いたのだが、一口でも食べれば絶対に助からないような猛毒を持っている」
「ということは、ロイロット博士は……」
「そうだ。美食家の博士は、自分が別な料理に見せかけて作り、ヘレン嬢をも殺すはずだった料理に対し、自制心を失ってしまったのだ。それほどにうまいらしいのだ、フグの肝は」
「つまりなんだ、ジュリア嬢は……」
「だまされたのだろう。別な、無害な食べ物だと思って、このフグの卵巣を食わされたに違いない。たとえば……」
鈍い私も、ホームズがいいたいことにはっと気がついた。
「まだらのきも(真鱈の肝)だといわれたのか!」
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~ Comment ~
真鱈は肝もいいけど白子もおいしいです
でも白子じゃダメですね
ここが話の肝なんだから…
やっぱりホームズには敵いません
でも白子じゃダメですね
ここが話の肝なんだから…
やっぱりホームズには敵いません
Re: limeさん
テンプレを変えたのは、PCを買い換えて横長モニターにしたところ、これまでのテンプレでは非常に見づらくなってしまったからです。
その後でまたテンプレを変え、写真が気に入ったのでしばらくこれでやってみようか、と思ったところ、今度は操作性がいやになるほど悪かった。
それに閉口して、現在のこのテンプレに至るわけですが……。
読んでいて不具合とかあります?
お勧めした本が、つまらないなどといわれたりすると、わたしは「もしかしたら切腹するしか詫びる方法がないんじゃないか」みたいに思ってしまうタイプなので(笑)。まあそれはジョークですが、責任を感じてしまうほうなので、そうおっしゃってくださるとまことにありがたいであります。
自分の書いた小説がつまらないなどといわれたらもう閉門蟄居を考えるという(笑) なんて損な性格だわたし(^^;A
裏を返せば、そんなことを考えながらもここまで創作活動をやってこれたということは、けっこう根は図太いのかもしれん(爆)
その後でまたテンプレを変え、写真が気に入ったのでしばらくこれでやってみようか、と思ったところ、今度は操作性がいやになるほど悪かった。
それに閉口して、現在のこのテンプレに至るわけですが……。
読んでいて不具合とかあります?
お勧めした本が、つまらないなどといわれたりすると、わたしは「もしかしたら切腹するしか詫びる方法がないんじゃないか」みたいに思ってしまうタイプなので(笑)。まあそれはジョークですが、責任を感じてしまうほうなので、そうおっしゃってくださるとまことにありがたいであります。
自分の書いた小説がつまらないなどといわれたらもう閉門蟄居を考えるという(笑) なんて損な性格だわたし(^^;A
裏を返せば、そんなことを考えながらもここまで創作活動をやってこれたということは、けっこう根は図太いのかもしれん(爆)
おお。私はけっこう好きです、こんなオチ。
ホームズシリーズは、そういうテイストで攻めるんですね?笑
楽しみです!
すっかりテンプレが変わりましたね。
衣替え?
あ、そうそう、ポールさんのお勧めの本は、外れなしですよ^^
詳しくは私のコメ返まで・・・。
ホームズシリーズは、そういうテイストで攻めるんですね?笑
楽しみです!
すっかりテンプレが変わりましたね。
衣替え?
あ、そうそう、ポールさんのお勧めの本は、外れなしですよ^^
詳しくは私のコメ返まで・・・。
Re: レルバルさん
昔の横田順彌先生の書く一連の「ハチャハチャSF」のマシンガンのようなダジャレの嵐ときたらこんなものではなく……口で説明してもわかりませんから、古本屋なんかで古いのを一冊見つけたら、買って読んでみてください。
影響を受けた人間は数知れず……。
影響を受けた人間は数知れず……。
Re: たかのゆき先生
きくち正太先生の「おせん」の新シリーズの1巻を読んだところ、ちょうど鱈ちりの回で、それがやたらとうまそうで……。
真鱈の肝、うまいものはほんとうにうまいらしいですねえ。フグはやだけど。
真鱈の肝、うまいものはほんとうにうまいらしいですねえ。フグはやだけど。
そろそろお鍋の季節です
私の中のホームズがぁ・・・
一応この小説を読むときは
頭の中で声を当てながら読むのですが
露口茂だったので笑いました。
危なかった・・・・
これが広川太一郎氏だったら
一応この小説を読むときは
頭の中で声を当てながら読むのですが
露口茂だったので笑いました。
危なかった・・・・
これが広川太一郎氏だったら
- #5252 たかのゆき
- URL
- 2011.10/06 19:19
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Re: ダメ子さん