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    ホームズ・パロディ

    ブルース・トンチンカン設計書

     ←さんざんな学生 →犯人は二人(?)
     私、医学博士ジョン・H・ワトスンとホームズを仰天させた、夜遅くベーカー街にやってきた訪問者は、なんとマイクロフト・ホームズだった。

    「どうしたのですか、兄さん」

    「たいへんなことが起こったのだ。海軍の軍事機密であるブルース・パティントン式潜水艦の設計書の、もっとも重要な部分が、なにものかによって奪われてしまったのだ」

    「なんですって!」

     私はそれを聞いて愕然とした。

    「それは本当ですか!」

    「残念ながら、その通りなのだ。私が乗り出すことができれば、シャーロック、お前の手助けなしでもなんとかなるところだが、しかし、現在、我が大英帝国は外交上非常に難しい事態に直面している。そのため、私は捜査のための身動きが取れない状況なのだ」

    「兄さん、これを」

     ホームズは、きついブランディーのグラスを渡し、いつになく真剣な顔で兄に向きあった。

    「兄さんが僕を頼らなければならない、ということは……」

    「そうだ。この設計図次第では、われわれは、ドイツとことを構えなくてはならなくなるかもしれん。それも、このヨーロッパでだ。下手をすると、我が国は焦土と化しかねん」

    「わかりました」

     ホームズは、兄の手を取り、固く約束した。

    「確かに難しい仕事ですが、全力を尽くして、僕が、うまくやってのけましょう」

    「お前なら、私の気持ちがわかると思っていたよ」

     私は二人の兄弟の固い絆と以心伝心ぶりに、深く心を打たれた。



     その後のホームズの活躍は、私が書いた通りである。見事な推理と行動力により、ホームズは、我が国に潜むスパイの大物を捕えることに成功した。

     私はホームズがそれにふさわしい報酬を受け取ったのを知っている……つもりだった。

     あれから二十年を以上を経て、わたしがサセックスのホームズの養蜂所を訪れて、暇つぶしに本棚を漁っていた時に足元に落ちた、なにかの覚え書きのような紙切れを見るまでは。

     紙切れにはこう書いてあった。

    『ワトスンに、いかに、あの設計図が本物だと思わせるか? これが最重要課題。

     ワトスンさえあの設計図を本物だと思ってくれれば、後は彼が設計図について、頼まずとも手記と行動により宣伝してくれるだろう。

     ドイツのスパイが有能ならば、その日のうちにあの偽物の設計図を写し取って本国に送っているはずだ。

     そうすれば、僕が動いたことにより、ドイツはあの設計図を本物だと信じて疑わないに違いない。

     僕にはすぐに兄さんが何を考えているか推理できたが、それだけにワトスンが真実に気づくと困ったことになるのだ。

     兄さんは、どうしてあんな、諜報活動みたいな、右手を左手がだますような仕事を嬉々としてやれるのだろうか?

     あんな人の悪い作戦を思いつくことからしても、ぼくの頭脳は兄さんを超えられないようだ……』
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    ~ Comment ~

    Re: ぴゆうさん

    『飢餓海峡』で老刑事役をやった伴淳三郎氏はまさに適役でした。

    映画の撮影に疲れ果ててそういう役からその後離れてしまったのが残念であります。

    ジェレミー・ブレットでホームズにはまったもんなぁ~
    すごく良かった。
    ぴったりな人って本当にいるのよね。
    指輪物語だってフロド役はイライジャ・ウッドだから良かった。
    これを書き出したらキリがない。
    鬼平犯科帳だって中村吉右衛門が最高だ。
    止まんないぞーーーー

    Re: るるさん

    ホームズファンには説明以前の知識なんですが、うーん、知らない人は知らないか(^^;)

    Re: limeさん

    ホームズにはマイクロフトという兄がいて、身分はそれほど高くない小役人ですが、大英帝国を支える頭脳のような存在になっているそうであります。

    もちろんシャーロッキアンのかたがたの間ではいいサカナ……じゃなかった、研究対象になっています。

    イギリスのグラナダTVのドラマでは、大変な人嫌いでディオゲネスクラブという偏屈なクラブ(会員はクラブ内では来客室以外でひとことも口をきいてはならない、という決まりがある)から一歩も動かないはずの、太ったマイクロフトがシャーロック・ホームズの代わりに捜査して事件を解決してしまう、という回があり、原作ファンを激怒させたそうであります。これには、原作イラストのシャーロック・ホームズに生き写しではまり役だった主演のジェレミー・ブレットの病状が悪化したこともあるのですが。

    ちなみにわたしの「○○ごの事件」にもマイクロフトは出てきます。うーん、説明が必要だったかな(汗)

    そういえばホームズに兄貴っていたんでしたっけ・・・。

    すっかり忘れておりました。

    ホームズにお兄さんが居たことも知らなかった・・・。
    エラリーしか読んでないのがバレテしまいますね。
    (映画やアニメでは、大ファンなんですけど。ホームズ)(アニメ→犬のやつね)
    お兄さんは、実際こんな諜報まがいの活動を??

    計画に練り込まれたワトスンは、このあとどんな顔をしたんでしょう^^見たかった。

    Re: ぴゆうさん

    ル・カレとかディトンとかのスパイ小説を読んでいると、もう人が悪くなって悪くなって(笑)

    相手の裏の裏の裏の裏をかいたりするわけですからねえ。

    「寒い国から帰ってきたスパイ」なんて、その非情さと卑劣さにクラクラきます(^^;)

    そういう陰謀を考えるのは楽しいですね(コラ!)

    してやられた!
    まず味方からかぁ~
    ここまでお見事だと小気味良かったりする。

    ドイツって小さい国なのに、すごいことをする。
    良い悪いは抜きにしても、優秀なことだけは確かだわ。
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