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    「ショートショート」
    SF

    よおせえへん

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    「わかったぞ……」

     その哲学者は、よろよろとした足取りで岩屋から出てきた。弟子と思われる男が駆け寄って、老い、瞑想と断食で弱った、師の身体を支えた。

    「師よ、ついに結論が出たのですね」

    「ああ。我々はどこから来たのか、我々とは何か、我々はどこに行くのか。廃墟と化した街にモンゴル人の兵士が書き残したあの問いに、完璧に答える、ひとつの結論が……」

    「ええ。それが先生の追い続けられてきた問いでした」

    「日本のSF作家である、半村良は、その代表作のひとつ『妖星伝』において、絶望的な解答を導き出した。すなわち、我々が生きるために弱いものを食い、満足する以上に貪欲に求め、進化に次ぐ進化を続けてきたのは、エントロピーを果てしなく増大させようとする『意思を持つ時間』の存在を、遠い宇宙の彼方へ警告しようとした宇宙人が、そのイメージとして、グロテスクな形で成長と進化と弱肉強食の道を突き進む『妖星』へと地球を変えたことによるものだった、というものだった……」

    「ええ。その本は私も読みました。しかし、師はそれについて疑問を……?」

    「そうだ。もし、『意思を持つ時間』なるものが存在するとしたら、それはその場に、その状態にとどまろうとするのではないか。そう思うと、どうしても首肯できなかったのだ」

    「それで、先生はそれに代わる解答を?」

    「ああ。見つけた……」

    「お聞かせください。我々は、なんなのですか!」

    「コマーシャルだ」

    「は?」

    「我々が生きるために食い、満足する以上に貪欲に求め、進化の道を突き進もうとするのは、我々を見ているであろう、より高次な存在に、『購買欲』を起こさせるためなのだ!」

    「え……ええ……ええーっ!」

    「すなわち、我々のいるこの宇宙、それ自体が巨大な『テレビ』のようなものなのだ。高次な存在は、自らの顧客が、我々が欲望に駆られ、物を手に入れようと右往左往するのを見て、購買意欲をかきたてられ、自分のところで物を買ってくれるよう、我々の宇宙にそうした因子をプログラムしたのだ」

    「じゃ、じゃあ、宇宙の意味も、人間の意味も、文明の意味も……」

    「すべては購買欲をあおるためにすぎん」

    「そ、そんな……たったそれだけのことのために、ビッグバンは起こったわけですか」

    「その通りだ。宇宙に始まりがある以上、終わりもある。宇宙は、番組と番組との間にある、彼らにとってはわずか三分足らずのコマーシャルなのだ」

    「信じられない……」

     そのとき、すべてが終わった。



    ……………………



     「つまんね」といって『宇宙のスイッチ』を切った、その高次の存在は、あくびをすると、眠りについた。『明日』は早起きして、『会社』に行かなくてはならないのだ。いつまでも『宇宙』を見て、夜更かししてもしかたがない……。
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    ~ Comment ~

    Re: YUKAさん

    イメージとしては某カップ麺の「ハングリー?」ってやつでしょうかねえ。

    ほんと人類文明の意味を戯画化するのが好きだなわたし(^^;)

    だからもてないんだな。(泣笑)

    おはようございます^^

    あぁ……コマ―シャル^^;

    幕間的なこの世界。

    そんな中で必死にしがみついて生きている(と、思っている)私たちは

    さぞ、滑稽な生き物なんだろうなぁ……。

    Re: 秋沙さん

    いやそんな気にせんでも(^^)

    もっとドッキリなことをわたしはあちこちのブログに。(ひでえ(笑))

    私も「つまんね」と書くかどうか非常に迷いまして・・・(^^;
    結局、「きっとポールさんならわかってくれるはずだ」と、書いてしまいましたが、やっぱりドッキリですよね。失礼致しました(^^;

    Re: ルルさん

    わたしの知識を侮ってはいけません。

    知 り ま せ ん (笑)

    どっちかといえばトゥルーマン・ショーのほうが頭にあったかな? 見てないけど。

    Re: ぴゆうさん

    それがSFのセンス・オブ・ワンダーというやつです(ホントか?)

    まるで、ラストアクションヒーローを思わせるような……。

    知ってます?
    ラストアクションヒーロー。

    知らないわけないですよね……。

    なんでもありなんだろうな。
    想像する以上になんでもあるような気がする。

    Re: limeさん

    「妖星伝」、日本SF史上に残る大傑作なんですけどね、読んだ後は深刻な人間不信と厭世観にとらわれてしまうといういわくつきの本で(^^;)

    中学生のころ、高校とくっついていたせいか、SFやミステリの蔵書が充実していた学校の図書館で、えっちなシーンに夢中になって借りたところ、読み終わった時には地獄の釜の蓋を開けて中を覗いてきた人間みたいな目をしていたらしい(笑)

    中学生のころからそんな本ばかり読んでいたから、普通に法学部へ入って立身出世のまともな人生を歩む代わりに、哲学科なんかへ入って、まともでない人生を歩むことになってしまいましたとさ。とほほ(^^;)

    半村良氏のその作品、ぶっ飛んでますね^^
    私もそれにはちょっと共感できないかな?w

    コマーシャルかあ!
    けっこう、夢があって、希望があって、すきです。

    リクの「惰性」論より、温かい・笑

    Re: LandMさん

    もうこのレベルまで来ると、「誰が見ていて誰が見られているのか」もわからなくなってきますけれどね。

    あの「超知性体を見ている」われわれ、という視点がさらにありますし(^^)

    ・・・・テレビも一つの宇宙という考え方ですね。
    考え方によっては、一つのテレビ局が仮想宇宙空間を作っている・・・という感覚は間違っていないですね。

    Re: 矢端想さん

    ミステリファンなのに最近SFしか書いていなくてなんか後ろめたいでござる(笑)。

    しかし、超知性体もヒマだなあ(爆)。

    SFだー!

    蚊のこぼす涙の海の浮島の浜の砂子を千々に砕かん
    ~曽呂利新左衛門

    寿限無寿限無五劫の擦り切れ海砂利水魚の水行末・・・

    Re: 秋沙さん

    自分の書いた文章に合わせてくれているものだとわかっていても、「つまんね」といわれるとドキッとしますな(^^;)

    この仮説(笑)は、これまでわたしが人類の存在意義について考えた中で、2番目に「ミもフタもない」仮説であります(笑)。最もひどいやつは、いつか投稿作品に使うために取ってあります(^^)

    Re: 面白半分さん

    そういやあ昔の海外の冒険SFでよくありましたなあ。小さくなって原子の世界へ行くと、そこはまた別の星々からなる宇宙ができていて、怪物や人間が暮らしていて、そこでお姫様を助けて大冒険……というやつ。

    量子力学もなにもない、今から思えば牧歌的な世界でありました(^^) 

    あーあ。やっと気付いたのにねぇ・・・。

    そうかぁ・・・あの深夜の「ショッピングチャンネル」とかっていうのも一つの小さな惑星なのかぁ。
    なるほど、なんか納得。
    「○パネットた○た」の人達が、なんとなく皆おなじに見えるのも、「た○た星人」達の営みを見てるからだったのね。
    つまんね。明日は休みだっていうのに朝早くからダンナが葬式に出かけるし、いつまでも「ネット世界」とか見てないで早く寝ないと(^^;

    私はビー玉の中の気泡が星雲に見えたので、
    この星雲の中に地球のような星があり
    そこでの誰かが遊んでいるビー玉の中に
    また宇宙があり・・・
    と夢想してるうちに、
    もしかするとわれわれの宇宙も誰かにとってのビー玉に過ぎず、
    きまぐれで落として割られて、はい、おしまいってことになるのではないかと思っていました。
    (高次の存在でなくてものすごくでかい人ってところが浅いですけど・・・)
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