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    「ナイトメアハンター桐野(二次創作長編小説シリーズ)」
    2 闇は千の目をもつ(完結)

    闇は千の目をもつ 2-4

     ←闇は千の目をもつ 2-3 →闇は千の目をもつ 3-1
     シャワーの栓を止め、身体を拭いてから寝巻きに着替えた。机の上にペットボトルを置き、マガジンラックから本を取り出す。
     電気スタンドの電気もつけ、わたしは本を開いた。
     まず、手触りを確かめる。
     普通の紙だ。
     それから、ページを一枚一枚繰り、どこかに変なところはないかどうかを入念にチェックした。
     探していたものはあった。ページの一枚で、蚊が押しつぶされて死んでおり、かすかに血の痕が残っていた。
     わたしは、なんともいえぬ暗い瞳でそのページのしみを見つめていた。
     ペットボトルのふたを開け、指先にそのお茶の一滴を取った。
     そのまま、本に垂らしてみる。
     ページを触った。変化なし。
     それでは、次のステップだ。
     わたしは自分がこれからやろうとしていることに対して顔をしかめながら、道具を探した。
     あった。縫い針とガスコンロだ。
     わたしはガスコンロに火をつけると、その蒼い炎で縫い針を丹念にあぶった。いいかげんに細菌が死んだところを見計らい、火からおろす。
     そこで……ここからがいやなところなのだが……人差し指を立てると、左手に持った縫い針でその腹をわずかに突き刺した。
     蚊に食われた程度の痛みしか覚えないとわかってはいたが、それでも気持ちのいいものではなかった。
     傷口から血が流れ出してきた。
     わたしは大急ぎで本を置いたテーブルに戻ると、本のページにその流れ出た血を一滴垂らした。
     本には紅いしみがついた。しみは時を追って黒く変わるだろうが、そんなことはどうでもいい。
     縫い針をテーブルに置き、素早く左手で開かれたページを触ってみた。
     「ざわり」と、通常の紙とはまったく違った手触りがした。
     つい先ほど、夜道でわたしが感じた、あの感覚だった。
     獣の毛皮の感覚。わたしがずいぶんとなじみのある、どこか懐かしい感覚。
     わたしは、慄然として悟った。
     この本は……生きている。
     血を吸って、生きているのだ!
     わたしの頭に、ユミコというあのバーテンダーがいった言葉が反響していた。
    『……申し上げにくいのですが……桐野さんは、なにかに取り憑かれかけているのではないかのようにあたしには見えます……』
     ほんとうに取り憑かれているのだろうか。
     わたしにできることはただ、目の前の本を凝視することだけだった。
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    ~ Comment ~

    Re: 椿さん

    ミステリとして見た場合は、シリーズではこれがいちばんまとまっているかもしれません。

    それだけにちょっと小粒に思えるかもしれませんね。(だいいち短いし(^^;))

    NoTitle

    こんばんは。
    まとめて読まさせていただいております。
    前作以上にミステリアスな始まり方で、お話に引き込まれました。

    血を吸って生きている本……これから何があって、冒頭のシーンにまで行き着くのか。
    ドキドキしながら読ませていただきます!

    Re: 有村司さん

    桐野くんは前作のラストシーンで、議員からもらった「汚いカネ」でボロアパートを引き払い、もうちょっと立地条件のいいワンルームマンションに引っ越しました。

    ワンルームマンションというのが桐野くんの桐野くんらしいところで……(笑)。

    さて、まだ話は導入部すら終わっておりません。ふふふのふ。

    ご教示どおり、一章まとめ読みをすることにしました^^
    なるほど!本が生きている!!しかも血を吸う本とは…!!
    これから起きることは想像だにできませんが、安穏とし感じとは真逆なのは確かですね…。

    でも、あれ?桐野先生引っ越したんですか?ちょっとお部屋の描写が良くなっているような…。

    Re: lime さん

    最初のころは、毎回毎回「ここで話を盛り上げよう」とか「次回のひきにしよう」とか考えてやっていたのですが、だんだんと毎日の更新に追われていくようになって(^^;A

    でもいろいろなところで自信はつきますね。

    新聞に連載している作家というのは心底すげえなあと思ったです。

    覚悟と根性があったらぜひチャレンジしてみてください。わたしは第4シリーズもこの方式で書いたので、疲れたのでしばらく長編はお休みします(笑)

    いえショートショートを毎日一本というのもそうとうきついのですけれど……(^^;A

    NoTitle

    生きている本。
    これは面白い設定(登場キャラ)ですね。
    それにしても、最後まで書きあげずに連載開始というのはすごいです。
    プロの漫画家さんは、みんなそうだと聞きますが・・・。神業だと思います。
    でも、ラストシーンが決まれば安心できますよね。
    あとはどう膨らませるか、ですもんね。
    スリルがあって、面白いのかも。
    一度やってみたいけど、取り返しのつかないことになりそうで、ちょっと怖いです・笑

    >神田夏美さん

    ど~も~♪ どんどんお読みください♪ 就活にひびかない範囲で(^^)

    この「闇は千の目をもつ」はおおまかなプロットだけ立てておいて後はブログに直接連載、どうなろうとも筆のおもむくままにするという、見切り発車なことをはじめてやった小説です。がんばって辻褄合わせはしましたが、ボロが出ていたらご勘弁ください(^^;)

    今プロットを練っている第4弾では、いったいどうやって桐野くんをいじめてやろうか、などと考えております。いやー、性格が悪い作者の登場人物にはなりたくないですね(^^)
    運命(さだめ)じゃ。(←「うる星やつら」錯乱坊の声で)

    ご無沙汰しております、久しぶりに読みだしたら何だか止まらなくなりますね(笑)本の正体が気になってしまって、ようやくここで少し明かされて……

    でも、この血を吸って生きている本が一体何なのか、誰が何の目的で作ったのか、まだまだ続きが気になります。ゆっくり読み進めさせて頂きますね。

    それにしても桐野さんはいつも大変なことに巻き込まれますね。これもナイトメア・ハンターの……というか物語の主人公の宿命でしょうか(笑)

    >佐槻勇斗さん

    さてどうでしょうね~(^^)
    ある意味もっとたちが悪く……いえなんでも(^^)

    ハリーポッターのハグリッド……ハグリット?
    丸太小屋らしきところに住んでいる毛むくじゃらの人が先生になったとき、授業で使用した本を思い出しました。生きてる本……。
    でもまあ、あれほど凶暴ではあるまい……^^;
    しかし万が一ということもあります。
    桐野先生が食べられてしまわないことを祈りつつ、また読みに参ります(^^)ゝ

    >せあらさん

    おかげさまでこの小説も先日無事(?)完結しました。
    ラストシーン以外はほとんどなにも決めずに始めたのですが、まあなんとかなりました(笑)。
    やってみるもんだなあ(爆)。
    10月1日より第3シリーズ、「吸血鬼を吊るせ」を連載する予定です。
    がんばりまっす! (とはいえすでに書きあがっているものをブツ切りにして連載するだけだったりする(爆))

    こんばんは~

    さっそく今日から「闇は千の目をもつ」を読み始めましたv
    まださわりの部分ですが……血を吸って生きている本ってインパクトがありますね!
    これからどんな事件に巻き込まれていくのか、読むのが楽しみですv
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