ささげもの

    レルバル様・√†そのちー†Σ様・れもん様合格祈願合同壮行会パーティー会場より

     ←そしてぼくの指は →きみに聴かせるぼくだけの曲
     しかし……。

     わたしは、バーカウンターで、オレンジジュースをなめるようにちびちび飲みながら嘆息した。

     幹事を任せた紅恵美が単に天才というだけではなく、有能な行政能力を有した実務的人間であることはよくわかったが、なにもあそこまであっちこっちに招待状を送ることはないだろう。

     紅グループと宇奈月財閥とバルテノーズ家とガレーリョス家とイルミール家と、その他その他、可能な限りの人間をコックおよびウェイターとして動員したが……。

     まさか、『ティファドル・ファレッジ魔導学院』の在校生が教授連もろとも全員、社会科見学と称してこっちの世界まで遊びに来ようとは、普通思うまい……あそこにいるかわいい子がシルルか? この現実の前にはどうでもいいが……。

     で、こっちにいるのはリィスをはじめとする『ナルン魔法学院』の生徒および教師全員に、スオード国の代表団。みんなよく食うわしゃべるわ……。どうやら、『ティファドル・ファレッジ魔導学院』の連中と魔法についての議論をしているようだが、現代日本に住んでいるわたしとしては、まったくちんぷんかんぷんな会話だ。それにあの制服は『宝皇学園』か? わいわいいいながら彼らも会話に加わっている。やっぱり他の世界の魔法は気になるらしい。中でもいちばんうるさいあれが蓮葉だろうな。

     スオード国の連中は連中で、龍央宮から来たらしい一団と、武術について盛り上がっているらしいし。あの中にいる少女が、美和ちゃんだろうか。声をかけようかと思ったが、万一違っていたり、合っていたとしてもシヴァやユハといった連中ともめるのはいやだからなあ。

     わたしはバクソス船長にいった。

    「苦みをきかせたグレープフルーツジュースを」

     頭をしゃっきりさせないと、これからの事態が。まったく、パーティーの開催を日曜日なんかにするんじゃなかった。

     あっちにいる物々しい雰囲気の一団は、デュナミス帝国と魔術国家フェルトと、魔導国家ノルデンシュツルムの政府代表団だろう。それをあしらっているあの男が、クロン・ウェスターノか。魔王さんだな。

     わたしはグレープフルーツジュースを飲んだ。

     で、あっちにいるのが別の世界のもう一人の魔王さんと、その奥方の禁断の魔女(ファウナ・ファウネ)さんか。その隣にいるのはお目付けのハロウィンさんとリーリィさんだな。ふたりと談笑しているのは、シェクスピアさんとその娘のレイビアちゃんだろう。魔王さんと魔女さんはなにも考えていないようだけど、シェクスピアさんとレイビアちゃんのほうは、二人からなにか魔法の知識を得ようとしているんだな。そういえば、あのシェクスピア親娘が顔を合わせるのはこれが初めてか。ほほえましい光景なのかもしれないが、一夜の夢として忘れてくれるかなあ。

     アクバとバルが連れ立ってこちらにやってきた。彼らの裏方としての指揮能力を見込んで、このパーティーの実務の全てを任せたのだが、どうやら二人ともかなりオーバーワークらしい。

    「なにか問題が?」

    「はあ。あっちのほうで、魔王と魔女を護衛するためと称してアスタロト将軍と、将軍が率いてやってきたアスタロト軍精鋭部隊が、酒を飲んで酔っ払ってまして。今、副官で唯一しらふのバムロッサ将軍が、ガスとゴグとツァイとトイスと、うちらの精鋭とで、騒動にならないようそれとなく見張ってますが……」

    「誰だよそんなやつら呼んだの」

    「紅さんがアスタロト将軍にも招待状を送ったらしくて」

    「なんとか押さえられないか?」

    「そんなこといっても、こっちは生身の人間ですよ。あんな魔物連中に勝てるわけがないじゃないですか」

    「勇者連中はなにをしている?」

    「カレン・エスタークさんはナミと盛り上がってますよ。ふたりとも、この場がどうなるかにやにやしながら静観している構えです。剣の勇者は親子の再会で盛り上がってるし。光の剣がない以上、うちのターヘレとフィロンでは、ちょっと押さえきれるかどうか……」

    「いざとなったら、客の中からシエラとメイナとセズクを探して頼め。曲がりなりにも最終兵器だからな。ネリーちゃんでもいい。あいつも相当な力の持ち主だ。でも、そろそろパーティーの開始だろう? きちんと手筈は整っているんだろうな。司会をやっているのは、範子と文子らしいが、声なんかまったく聞こえん」

    「今、うちの主人が、開催の辞と乾杯の音頭をとることになってます。まあ、みんなもう飲み食いしてますけどね」

    「わかった。とにかく、体内に内蔵してあるやつを除いて、すべての武器は取り上げておけよ。まったく、あの探偵、リタとトニーとジェーンだけではなく、エリーをはじめスレッジ・タウンの連中全員やインディアンのなんとかいう部族にまで招待状を送りやがって……やつら、爆竹を鳴らすくらいの気軽さで拳銃をぶっ放しかねないからな」

    「そのへんはやっておきました。旧ジェネシス王国残党とパージスト有志のかたがたにも、とりあえず武器はお預かりさせてもらいましたので」

    「ところで、あそこらへんだけ妙に神々しいんだが、誰が来てるんだ?」

    「えーと。オリンポス神族さんとティタン神族さんの一団ですね。今は談笑してますが、酔っ払ったらなにをするか……」

     わたしは頭を抱えた。

    「ホメロスの詩を読めば、やつらが暴れるとどうなるかわかるもんなあ」

     神様と最終兵器が戦ったら、どうなるんだ、いったい?

    「そのうえ、あの神様たちと話をしに行っている人間がいるみたいです」

    「誰だよそんな命知らず」

     わたしはそちらをじっと見た。

    「先輩と後輩か……」

     そうだよなあ。ああいうやつしか飛び込んでいけるわけがない。

    「ああ……ポール・ブリッツってのは、あんたか?」

     どこかで見かけた中年男が話しかけてきた。

    「はあ。そうですが」

    「辰巳ってもんだが」

    「ああ。これはこれは」

    「このぐちゃぐちゃな空間、どうやって鎮めるんだ? あっちのほうでは、光瀬と比奈木が、千春と佳祐とかいう兄弟をなだめてるが、ふたりとも完全にびびってる。お前、どんなメンバーの選出したんだよ」

    「もうちょっとまともな連中を、どっかから連れてくるべきだったかなあ。OEAの人間や、そうだな、リクとか玉城とかはどうしました? そういう孤立している普通の人間たちをなだめる係が、もうちょっとほしいところだったんですが」

    「お誘いあわせのうえとか書いてあったから、面白がって陽から坂木からOEAの手すきに長谷川のところの雑誌の連中、あいつら芸術だとかいってこのパーティーの写真を撮りまくっているんだが、いいのか? ……いいのか。それからなんとかいう探偵事務所の面々といった連中、みんな勝手に招待状に名前を書きまくって来ちまった」

     そういうことかこの凄まじい百鬼夜行的状況の原因は。わたしは偏頭痛がしてくるのを覚えた。

    「それなんですがね」

     と、わたしがいいかけたとき、突如大きな声が……悲鳴が響き渡った。

    「しゃくううううううううううううううううう!」

     何事かと、一瞬、場が静まり返った。

     絶妙のタイミングで、パーティー開催のあいさつが始まった。マイクを通してとはいえ、こちらも馬鹿でかい声である。

    「それでは、レルバル様、√†そのちー†Σ様、れもん様の、合格祈願合同壮行会を行います! 皆さん、彼らの受験の合格を祈りましょう! 乾杯!」

     われらが、エリカ・バルテノーズ公爵閣下のじきじきの挨拶と乾杯の音頭に、一同がうわあっと歓声を上げ、拍手が起こった。

     みんながんばれよ。わたしは、心の中でエールを送った。

    「ポールさん?」

     はっと振り向くと、そこにはわたしが探していた面々が顔をそろえていた。

    「ああ、シエラ、メイナ、それに蒼ちゃん。波音にセズクもか。君たちを探していたんだ。この場が大混乱に陥りそうになったら、君たちの攻撃力と、ネメシエルの破壊力で場を……」

    「それはいいんですけど」

     女性三人は、にこりと笑った。背筋が冷たくなるような笑いだった。

    「な、なにか……?」

    「陽天楼を中華料理屋とおっしゃったんですって?」

    「ま、まあそうだが……」

    「ベルカをパン屋と?」

    「う、そ、そうだけど……」

    「波音が怒っていたけどね。レルバルを外資系スーパーマーケットといったんだっけ?」

    「波音を海の家といったのも聞いてるんだけど?」

    「わ、わたし、そ、そんなこといったかなあ。はは、はは……」

     わたしは両側から最終兵器二人にガッと腕をつかまれ、暗いところに引きずられていった。

    「や、やめ、レーザーなんて、そんな拷問やめて! お願いっ! いたいいたいいたい、死ぬ、死ぬ死ぬ死ぬ、ぎゃあああああああああっ!」

     わたしにはパーティーを開いたことを後悔する暇さえ与えられなかった。




    ※ ※ ※ ※ ※



     キャラクターの無断使用につきましては深く陳謝いたします。どうか事後承諾をお許しください。すみません。
    関連記事
    スポンサーサイト



    もくじ  3kaku_s_L.png 鋼鉄少女伝説
    総もくじ  3kaku_s_L.png ほら吹き大探偵の冒険(児童文学)
    総もくじ  3kaku_s_L.png 夢逐人(オリジナル長編小説)
    総もくじ  3kaku_s_L.png 残念な男(二次創作シリーズ)
    総もくじ  3kaku_s_L.png ショートショート
    総もくじ  3kaku_s_L.png 紅探偵事務所事件ファイル
    総もくじ  3kaku_s_L.png 銀河農耕伝説(リレー小説)
    もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
    もくじ  3kaku_s_L.png リンク先紹介
    もくじ  3kaku_s_L.png いただきもの
    もくじ  3kaku_s_L.png ささげもの
    もくじ  3kaku_s_L.png その他いろいろ
    もくじ  3kaku_s_L.png SF狂歌
    総もくじ  3kaku_s_L.png 剣と魔法の国の伝説
    もくじ  3kaku_s_L.png 映画の感想
    もくじ  3kaku_s_L.png 家(
    もくじ  3kaku_s_L.png 懇願
    もくじ  3kaku_s_L.png TRPG奮戦記
    【そしてぼくの指は】へ  【きみに聴かせるぼくだけの曲】へ

    ~ Comment ~

    Re: 土屋マルさん

    本来は、



    「じゃ、あっちにいるもっと目つきの悪そうなやつらは?」

    「えーと、サウスエンドからのご一行ですね。なんとかいうマフィアの」

    「マフィア! そんなやつらまで呼んだのかあいつは」



    というやり取りを入れるはずだったのですがすっかり失念してしまい、申し訳ないであります。

    またなにかの機会があったらキャラクターをお借りします(^^)

    ポールさああんっ(*´∀`*)ノ

    コメント返しに一区切りついたので、さっそくお邪魔させていただきましたっ。

    馬鹿で駄目な私なんかのことを、見捨てないで下さって、もう本当に涙、涙で‥‥
    真面目に、お礼のためにしゃちこばってお伺いしたのですが、
    ジャンプしたページがいきなりここだったのが敗因なのか、
    私の第一声(感想)はコレ↓でした。
    「うはw 超カオスwww」(いい意味で、ですよ?w

    これは、登場なさった各人物の作者さん方は、読みながらニヤニヤを抑えられなかっただろうと推察しますwww
    とっても楽しませていただきましたっ。
    なぜか私もニヤニヤして帰りますwww

    素敵な時間をありがとうございました(*´ω`*)テレ
    またお邪魔します☆

    ではではっ。

    Re: LandMさん

    こちらこそキャラクターを使わせていただいて。

    こういうドタバタ劇は大好きです。

    今度はどんな手で行くか……(^^)

    ウチのクロンやレイビアを使って頂きありがとうございます。レイビアも懐かしいですね。。。と思いながら見ておりました。
    ナミとかもグッゲンハイムで登場させたいなあ・・・とか思ったりしております。結構時間がかかりそうですが。

    Re: 歌さん

    懐かしい名前もけっこうあったりしますね。まあそれはご愛嬌(^^)

    面白かったら3月ころにまたやるか……。

    Re: 秋沙さん

    それはね……(遠い目をする)

    呼んだメンバーがメンバーだったからなんだ……(爆)

    なんてカオスwwwww

    ぶっ飛んだ方々ばかりのパーティーに爆笑させていただきました! 登場人物たちのお名前にニヤニヤさせていただきつつ、さすがの混沌ぷりwwwww ものすっごい楽しかったです。願わくはポールさんのご生還もお祈りしております!

    いや、もうすごいカオスですな・・・wwww

    辰已がまともな人間に見えるのは何故(^^;

    Re: るるさん

    壮行会ですから、「これからがんばれ!」という会です。本命のK大学が残ってるんでしょ?

    気を引き締めてかかってください!!

    超極兵器残りの4隻については、前に矢端想さんがこれ以上ないほどのギャグをやってくれたので、今さらわたしが付け加えることもないと(笑)。

    美鶴の意味って……w

    それに最後ポールさん肉片も残らない展開じゃないですかw
    オチはやはり我が子でしたか(ぇ

    次は超極兵器残りの四隻ですよ!
    ファイト、ポールさん!

    ルフトハナムリエル、アイティスニジエル
    ヴォルニーエル、ニジェントパエル

    さぁっ!←

    お祝いありがとうございました。
    受かってますように――!

    Re: ぴゆうさん

    ぜひともお祭り好きな猫国のかたがたにも招待状を出したかったのですが、ぴゆうさんはお三方とリンクされていなかったので、涙をのんであきらめました。すみません(汗)

    そんなぴゆうさんからも祝福と激励をいただけたことをお三方にかわって感謝いたします。

    きっと何よりのお守りになるかもね。
    お三方が合格しますように。
    心よりお祈りいたします。

    Re: 卯月 朔さん

    とりあえず彼らは「肉体」は残しておいてくれたので、クローン技術でこうして元に戻れました(^^)

    これがネメシエルの主砲で肉片ひとつのこらず蒸発させられていたりするとどうしようもないですが(^^)

    アスタロト将軍、性格的にこういうお祭りみたいなの大好きでしょ?(笑)

    Re: ミズマ。さん

    とにかくうじゃうじゃ来ました。

    しかし、みんな抑えてるなあ、と思ったのも事実。

    誰かひとりくらい、「登場人物全員」とか書いてくる人がいるかなあとか期待していたのですが(^^)

    Re: れもんさん

    頑張ってください(`・ω・´)ゞ

    そのための壮行会でありますので。

    合格の暁にはどんなネタにするか検討中(笑)

    Re: limeさん

    機動隊よりも、ここは「地球防衛軍」の出番でしょうな(笑)

    楽しんでいただけてなによりです(^^)

    カオスwwwwwwwwww

    目前に魔王属性がいるのにわりと好きにしている勇者属性の面々とか、魔法学校生の異世界コミュニケーションとか、あいかわらずの先輩後輩とか、完全に気圧されているふつうの人間のひととか。始終楽しかったですw

    ていうか将軍いつの間に(笑)

    お三方の合格を祈願しつつ、ポールさまの無事もお祈り申し上げます(笑)

    カオス……www
    でも面白かったです。


    結局、何組来場したんですかね?
    後片付けが大変そう。

    今回黒焦げになったポールさんですが、これに懲りず、次回は合格記念パーティーを!←

    カオスww
    いやでも面白かったです

    ありがとうございます!!( ´∀`)
    受験頑張ります(`・ω・´)ゞ

    楽しいけど、こわい~

    まさしく、カオスだ~ww

    しかし、どんだけ「普通」じゃない面々なんですか!笑
    うちの暗い連中、2分で粉砕しそうですw
    ああ、でも、辰巳に台詞があってうれしいです。

    そうか、忘れてた。これは合同祈願パーティだったんですよね。
    願わくば、このあと機動隊の出動が要請されませんように・・・。
    アーメン。

    Re: 矢端想さん

    こういうのをカオスにしないでどうするの(笑)

    さて、何人の相互さんから絶交されるか……(^^;)

    カオスだ・・・これはパーティーなのか?笑

    ウチの子らも招待していただいてありがとうございます。なにもそんなに呼べとは言ってないんだけど・・・勝手に押しかけたの?ご迷惑かけてすみませんでしたねえ・・・ねえ、ポールさん?

    あっ!ポールさん「まっ黒焼き」になってる!
    管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

    ~ Trackback ~

    卜ラックバックURL


    この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

    • 【そしてぼくの指は】へ
    • 【きみに聴かせるぼくだけの曲】へ