「ショートショート」
ファンタジー
ゲームの王道
ぼくはゲームショップで買った、新作ギャルゲーのディスクを大事に抱えてどきどきしていた。
このゲームでは、主人公の前に、異世界から突然女の子が現れて、主人公の勇者とカップルになるんだ。
よくあるパターンだけれど、そういう黄金のパターンはぼくは大好きだ。安心してゲームができる。
家へたどりつくと、ぼくはもどかしい思いをしながらドアを開けた。家族の誰かが帰って来ているらしい。
「ただいまー」
そういいかけたぼくは、絶句した。ぼくと同い年くらいの、ひらひらなドレスを身にまとった、かわいい女の子が、家の中で、ぼくを見てびっくりしていた。
女の子はぼくに向かってなにかいった。ぼくには何語だかわからなかった。英語でもないし、日本語でもない。
「き……君は?」
女の子は、ぼくにすがりつくと、後ろを見た。居間のふすまを開けて、黒ずくめの女たちが現れたのだ。
女たちは、ぼくたちに友好的だとは思えなかった。
ぼくは、この異世界からやってきた女の子をかばうようにすると、手を引いて家の外へと逃れようとした。まさにギャルゲーの王道的展開だ。
家の扉を開けると、そこには、ぼくには全く見覚えのない、原野のような世界が広がっていた。
そのとき、ぼくは電撃に打たれたかのように悟った。
女の子がぼくたちの世界に迷い込んで来たんじゃなくて、ぼくが女の子たちの住んでいる世界に迷い込んでしまったのだ!
ということは、黒ずくめの女たちは、この女の子ではなくて……。
ぼくを狙っているのか?
女の子は、なにか呪文のようなものを唱えると、手からなにかを撃ち出した。炎の弾だ。
黒ずくめの女たちは、その炎を身体に受けると、燃え上がって消えてしまった。
女の子は、ぼくの手を引っ張るようにすると、原野をどんどん進んでいった。
この世界では、どうやらぼくは勇者ではなくてお姫様の役らしい。
それでもいいかな? こんな女の子と恋仲になれるんだったら。
その時のぼくは知らなかった。
ぼくがただのお姫様ではなく、ゲーム中途で死ぬ『悲劇のヒロイン』の役を割り振られていたことなんて……。
このゲームでは、主人公の前に、異世界から突然女の子が現れて、主人公の勇者とカップルになるんだ。
よくあるパターンだけれど、そういう黄金のパターンはぼくは大好きだ。安心してゲームができる。
家へたどりつくと、ぼくはもどかしい思いをしながらドアを開けた。家族の誰かが帰って来ているらしい。
「ただいまー」
そういいかけたぼくは、絶句した。ぼくと同い年くらいの、ひらひらなドレスを身にまとった、かわいい女の子が、家の中で、ぼくを見てびっくりしていた。
女の子はぼくに向かってなにかいった。ぼくには何語だかわからなかった。英語でもないし、日本語でもない。
「き……君は?」
女の子は、ぼくにすがりつくと、後ろを見た。居間のふすまを開けて、黒ずくめの女たちが現れたのだ。
女たちは、ぼくたちに友好的だとは思えなかった。
ぼくは、この異世界からやってきた女の子をかばうようにすると、手を引いて家の外へと逃れようとした。まさにギャルゲーの王道的展開だ。
家の扉を開けると、そこには、ぼくには全く見覚えのない、原野のような世界が広がっていた。
そのとき、ぼくは電撃に打たれたかのように悟った。
女の子がぼくたちの世界に迷い込んで来たんじゃなくて、ぼくが女の子たちの住んでいる世界に迷い込んでしまったのだ!
ということは、黒ずくめの女たちは、この女の子ではなくて……。
ぼくを狙っているのか?
女の子は、なにか呪文のようなものを唱えると、手からなにかを撃ち出した。炎の弾だ。
黒ずくめの女たちは、その炎を身体に受けると、燃え上がって消えてしまった。
女の子は、ぼくの手を引っ張るようにすると、原野をどんどん進んでいった。
この世界では、どうやらぼくは勇者ではなくてお姫様の役らしい。
それでもいいかな? こんな女の子と恋仲になれるんだったら。
その時のぼくは知らなかった。
ぼくがただのお姫様ではなく、ゲーム中途で死ぬ『悲劇のヒロイン』の役を割り振られていたことなんて……。
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Re: limeさん
♪ 舞い上がれ 朱雀 ミラクル・ラー~ ♪ (音痴)
「ふしぎ遊戯」ですね(^^) ナツカシス。わたしはほとんど見ていませんでしたが、なぜかTV版OPは歌える。
でもあれはあれで理不尽な話のような。サブヒロインがひたすら悲惨(笑)。
佐賀鍋島の武士たちは、毎日毎日、あらゆる事態に対して「どう恥ずかしくなく死ぬか」のイメージトレーニングをして根性を養っていた、と、隆慶一郎先生の小説に書いてありましたが、どこまでほんとなんだろう。ほんとだとしたら集団ヒステリーもいいところだな武士。
「ふしぎ遊戯」ですね(^^) ナツカシス。わたしはほとんど見ていませんでしたが、なぜかTV版OPは歌える。
でもあれはあれで理不尽な話のような。サブヒロインがひたすら悲惨(笑)。
佐賀鍋島の武士たちは、毎日毎日、あらゆる事態に対して「どう恥ずかしくなく死ぬか」のイメージトレーニングをして根性を養っていた、と、隆慶一郎先生の小説に書いてありましたが、どこまでほんとなんだろう。ほんとだとしたら集団ヒステリーもいいところだな武士。
Re: ぴゆうさん
ザコとは限らないではないですか。
ゲームの途中で非業の死をとげることによってかえって人の心に残る重要キャラクターが……キャラクターが……思い出せん(笑)。
わたしはゲームクリア後三周目くらいにならないと出てこない隠れキャラがいいです(爆)
ゲームの途中で非業の死をとげることによってかえって人の心に残る重要キャラクターが……キャラクターが……思い出せん(笑)。
わたしはゲームクリア後三周目くらいにならないと出てこない隠れキャラがいいです(爆)
一瞬、この「新作ゲーム」というやつが、買ったその人にリアルに体験できるタイプの「超新作」であって、ヒロインの女の子とのラブストーリーが展開して・・・というやはり「王道」な展開かと思ったら
・・・これだもん(^^;
さすがポールさん(笑)
だけどねぇ・・・せめて、主人公を助ける仲間くらいの役割で、ほら、「従者」とか「魔法使い」とか。
それでヒロインを助けて非業の最期を遂げる(もってまわった言い方ですいません。NGワードにひっかかりました)んだったらまだ良かったのに・・・(いや、良くない)
・・・これだもん(^^;
さすがポールさん(笑)
だけどねぇ・・・せめて、主人公を助ける仲間くらいの役割で、ほら、「従者」とか「魔法使い」とか。
それでヒロインを助けて非業の最期を遂げる(もってまわった言い方ですいません。NGワードにひっかかりました)んだったらまだ良かったのに・・・(いや、良くない)
古書を開くと、その中に吸い込まれていく物語のアニメがあって、ハマったなぁ~。
なんだっけ、タイトル。
・・・・。なんだっけ。ほら・・・。中国の・・・。
四天王がでてきて・・・ミアカって主人公の・・・・。喉まで出てきてんのに・・・・。
・・・もういいや(;_;)
しかし、せっかくこの「俺」、ゲームの中に入れたんなら、勇者が良かったですよね。
冗談抜きでね、本当にスーパーヒーローになって、カッコよく散れるなら、そんな世界に入ってもいいかな・・なんて。
なんか、最近、いかに死ぬかを考えてしまうんですよねえ。健全に、ですよ?
なんだっけ、タイトル。
・・・・。なんだっけ。ほら・・・。中国の・・・。
四天王がでてきて・・・ミアカって主人公の・・・・。喉まで出てきてんのに・・・・。
・・・もういいや(;_;)
しかし、せっかくこの「俺」、ゲームの中に入れたんなら、勇者が良かったですよね。
冗談抜きでね、本当にスーパーヒーローになって、カッコよく散れるなら、そんな世界に入ってもいいかな・・なんて。
なんか、最近、いかに死ぬかを考えてしまうんですよねえ。健全に、ですよ?
Re: るるさん
この小説は、自分でも書いているうちに、
「おれはどこに話の焦点を合わせているんだろう」という深刻な疑念を(笑)。
「おれはどこに話の焦点を合わせているんだろう」という深刻な疑念を(笑)。
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Re: 秋沙さん
そういえば昔、島本和彦先生が「インサイダーケン」という漫画を描いておられたなあ。
別な意味で伝説的な作品になっちまった作品だけど(^^;)