ささげもの

    fateさんに捧ぐ:『花籠』アフターストーリー

     ←真実 →天からの贈り物
     ささげものである。

     fateさんの小説、「花籠」を読んで、アフターストーリーが書きたくなってしまったんだからしかたがない(^^;)

     というわけで、事情を知っている人のみ読んでください。

     以下どーん。



    ※ ※ ※ ※ ※




    そして捧げられしは


     アイルランドの片田舎。農業をするのだけでも大変なこの土地の、さらに集落より離れた荒れ地に、その東洋人の老夫妻がいつから住み始めたのか、詳しいことを知っているものは誰もいなかった。

     夫のほうは、ゲール語を流暢に話した。妻のほうは、何年たっても片言しか話せなかったが、それでも意思の疎通はできた。

     その、謎めいた「サクラバラ夫妻」についてわかっていることは、彼らが熱心なカトリック教徒である、ということだけだった。

     夫妻は毎日のように教会へ通っては、ひたすらに祈りを捧げた。しかし、懺悔室には、頑として入ろうとしなかった。

     ふたりが幸せなのか、不幸せなのか、それすらも村のものにはよくわからなかった。夫妻は寡黙であり、どこか修道僧めいたところもあった。

     その小屋を訪れるものも、村人を除いては、ほとんどいなかった。

     ある夜のことだった。

     老人が、教会の門を叩いた。

     なにごとか、と出てきた神父に、老人はひとこと、妻が危篤だ、とのみ告げた。

     医者を、と電話に手をかけた神父を老人は制した。そんなことをしている時間はないと。

     老人の口調は厳しく、神父は気圧されるものを感じた。

     終油の秘蹟を行うための用意を慌てて整えた神父は、老人とともに教会のランドローバーに飛び乗ると、全速力で悪路を小屋のほうへと走り出した。

     結論からいえば、神父は間に合った。秘蹟を執り行うことができたのだ。

     数日後、葬儀がおごそかに行われた。異邦人ではあるものの、熱心に教会に通っていたことから、村の墓地に葬られることを許されたのだった。

     手先が器用だった老人は、すでに墓石を用意してきていた。

    「NAO」

     刻まれていたのは、そのアルファベット三文字だけだった。

     葬儀が終わって二週間ほど経った日、小屋を訪れた新聞勧誘員は、すでに老人が姿を消していたことに気づいた。

     どうにかしろ、といって、村人たちがどうにかできる問題ではなかった。

     すべては忘れられる運命にあった。



     墓守がそれに気づいたのは、老婆が死んで三年ほど経ってからだった。

     あの墓に、墓守の目をかいくぐって、毎年、何者かが、花籠を供えていくのだ。

     それも決まって、中身は薔薇と桜桃だった。

     墓守は、誰が何のために、などという詮索はしなかった。

     そんな詮索は、死者と生者を冒涜するものであるように思えたからだ……。



    ※ ※ ※ ※ ※



     作者が考えていた展開と違う~などといわれてもわたしは一切関知しないのでそのつもりで(^^;)

     甘々夫婦生活ストーリーのはずだったのにどうしてこんな荒涼としたものに(^^;)

     まあ受け取ってください。

     ちなみに老人が誰なのかもお好きにご判断を(^^)
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    ~ Comment ~

    Re: あかねさん

    ほんとfateさんの小説は、人を惹きつけるものがありますよねえ。濃厚な濡れ場といい、もう勝てる気がしない(^^)

    それでも、かなわぬまでもなんとかして「返礼」を返したくなるのも人情(^^)

    しかし、あそこまでfateさんが日本に思い入れを持っていらっしゃるんだったら、隠遁先は奥飛騨の山の中か北海道の根釧原野にするんだったなあ、と後悔しきり……。(^^;)

    修行の足りなさを実感するであります。

    読ませていただきました

    私は最近、fateさんの「花籠」を拝読し、ポール・ブリッツさんが関連ストーリィを書いておられると知って読ませていただきました。

    アフターといってもこんなに遠い将来なのですね。
    いつとは限定されていないし、fateさんもこれだったら、この間をどんなふうにでも書けるわけですし。

    静かにしみじみしたストーリィで、とってもよかったです。

    Re: fateさん

    まあこの場合、謎は謎として残しておくべきかと。

    しかし、飛騨高山とか根釧原野とかにするべきだったなあ、隠遁先……。

    そんな気はしました。

    ローズは既に亡くて、別の誰か…まぁ、この場合スミレですね。
    かなぁ? とも。

    お預けいたしましたので、これはこれで(^^)
    お疲れさまでした!

    Re: fateさん

    まあ、ああいってしまった以上は書かないとと思いまして(^^;)

    意外とあのふたり、最後まで生き延びるんではないかと思って、こういう「アフターにもほどがある」ストーリーにしてみました。

    とはいえ、あの老人、別にローズでなくとも破綻はしないのであります。わざとどうとでも取れる書き方をしております。実はスミレだったとしても話は成立するのであります。

    どうお考えになるかはご自由でありますが(^^)

    おはようございます。

    早速お邪魔させていただきました。
    いや、なんだか、泣けて仕方がないです。

    こんな風に二人を愛してくださってありがとうございます。
    そして、こんな安らかな最期を用意してくださってありがとうございます。
    墓碑銘の記述のところで、本気で泣けました。
    ローズはあの後、結局最後まで彼女の本名は呼ばないのですが、ずっとその名前を重く抱いておりました。
    あの作中では語っていなかったのに、それを受け取ってくださってありがとうございました。

    しかし、fateだったら適当にごまかした国の名前とかのディテールを見事に描かれるポールさんは、やはり只者ではないなぁ、と感じました!
    さっと描けるくらい、いろんな情報や知識が頭に入っていらっしゃるんダ~!
    素晴らしい~!!!
    国名を出した時点で、fateはまず地理のお勉強です(--;
    気候風土も何にも分かっちゃいないからね(威張ってどーする!)!

    今まで、他作家さまの作品から勝手にいろいろ生みだしてきたfateですが、反対の立場のこそばゆさを体験させていただきまして、大変、嬉しかったです(^^)
    いやぁ、ドキドキするものですなぁ!

    そして、どんな風に世界を受け取り、世界を展開してくださったのか、そこに‘愛’を感じられて感動いたしました。
    ポールさんだったら、台詞をどう描くのか楽しみだったのに、寡黙な二人にして終わりましたね~
    まぁ、確かにあんまりしゃべりそうにないですけどね。
    スミレが訪ねていたらもう少し賑やかだったのかな。

    fateの世界からこんな物語を描いていただき、ありがとうございました(^^)

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