「銀河農耕伝説(リレー小説)」
細菌学部発酵学科編(完結)
銀河農耕伝説(リレー小説)/第三回
来ました、矢端想さんの強烈なフォアハンド。
はたしてこれをうまくさばけるか。リターンできたらご喝采。
さて、そろそろ終盤へ、収束の方向へ持っていかなければな。
ふむ……。
※ ※ ※ ※ ※
こいつは大変なことになった。
「クリスタルの断章」のポール・ブリッツさんが、リレー小説を企画し、参加者を募ったので「こいつあおもしれえ」と軽い気持ちで名乗りを上げたものの、日ごとに汗。大体小説なんて書いたことないくせに。以前書いた「放浪娘VI」の小説化した一場面を「違う」とあっさり書きなおされてしまったし…orz
結局名乗りを上げたのは、黄輪さん(「黄輪雑貨本店 新館」)と僕だけ。第一回ポールさん、第二回黄輪さん、そして僕のこれが第三回目であります。もう一回ずつまわって来て、最後の第七回でポールさんが見事にオチをつけることになってます。ワクワク。
「リレー小説」ですから。自分で収拾つける必要ないんだもんね。最後はポール教授が「必ず収拾をつける」と宣言されてるのだし。無責任に書きっぱなしでいいんだ。・・・というわけで、割とノリノリで書きました。
一応、「SF」ですよ。
それでは、どーん。(←お約束)
-----------------------------
3
「この研究室…」
サンライズ教授は茫然と二人の顔を見た。
「教授?…ええっ!?」
「い、いや、決して君たちを疑っているわけではないぞ。だがここには最初からわしらしかおらん。まず、ここにいるうちの誰かが犯人だと考えるのは、こういう場合は当たり前のことじゃ。そ、そうじゃ、客観的に見ればわしだって容疑者のひとりじゃ。いや、わしは君たちが犯人ではあり得ないと思っている。むしろそのことを最初に確認しておきたいのじゃ」
教授は一気にしゃべると大きくため息をつき、額を手の甲で拭った。
ジローはこの研究所にきてからすでに結構な時間をサンライズ教授と一緒に過ごしているが、こんなに動揺した教授は見たことがなかった。そりゃ動揺もするだろう。でも。これって、そんなに取り返しがつかないほどの失態なのか?
考え込んでるんだか途方に暮れてるんだか、額に汗をにじませて虚空をじっと見据えたまま固まっている教授に、ジローはそろっと話しかけた。
「で…でも教授…。盗られて困るのはガムそのものよりガムをつくる技術なんでしょ? 成分の分析はできても同じものをつくるのは無理なんじゃないかと…」
「ジロー研究員。あのガムには操作済みのコウジカビが生きておるのじゃ。うまく培養すれば、あれ一個からいくらでも同じものが作れるのじゃよ。わかるじゃろう!キミは本当にハイダーベル大学を出たのかね!」
「こっ!これでも僕は主席…いやそれに近い成績でっ!……いえ、おっしゃるとおりです。なんとしてでも解決しましょう、教授」
いかんいかん、とジローは息を整えた。いつもおだやかな教授がここまで感情的になるとは、やはりただごとではないのだ。教授も声を荒げた自分に恥じ入るように、上目づかいでちらっと彼を見ながらコクコクと頷いた。
メリッサがややハイトーンの声で切り出した。
「ねえ、科学者なら、ちゃんと整理してもう一度冷静に考えましょうよ。ガムの入ったシャーレはたしかにここにあった。そしてそばには間違いなく、私たち三人しか居なかった。私たちのうちの誰かがそうっと手を伸ばしてシャーレを万引き…って、できる?いくらなんでもバレバレじゃん!となると、私たち以外の誰かが盗ったというのがまずはっきりしていること…」
「そうっと手を伸ばしてかね!」
「部屋の外から?どんな長え手だよっ。しかもドア閉まってるし」
「空中からにょきっと手が出てきた、ってのはどう?」
「……。」
「…すまんなメリッサ君。こういう状況でこそジョークを言うのは素敵なことじゃと思うが、わしは今とても笑う気にはなれん」
「ていうか、ゴメン、それあまり面白くないと思う」
「『手がにょき』はあくまで比喩よ。…つまり」
「あっ!まさか!次元転移…」
「なんじゃと!?」
「『物体転送技術ついに実現か』って新聞にでかでかと載ったあれって、もう一年以上も前じゃないか。『位相のねじれ理論』だっけ? あの後どうなったのか聞かないけどな。大昔から語られてきた夢の技術だけど、結局実現は不可能なんじゃないのか」
「でも研究はもちろん続けられてるわけで。恒星間航法に革命を起こす『ネオエーテル粒子』の発見で、次元転移による瞬間的な物体移送も原理的には可能になるとか…私も物理学には詳しくないけど」
「それ、それって…『いろんな味のガム』よりずっとスゴイことじゃないか!そんな大がかりな『世紀の大発明』まで使って、その目的が『味覚の大発明』を奪うこと?犯人像が見当もつかないぞ。本当に産業スパイなのか?」
「ははは…夢のある話じゃな」
教授、決して笑ってはいない。
「その技術については、わしだって知っておる。科学雑誌に研究の内容が載っておったな。向こうに装置があれば、あらかじめマトリックス化されたこの部屋の空間座標と時刻を指定することで、そこにあるものをピンポイントで取り寄せられる、というものじゃ。ただし、見えない場所からそれをするためには、事前にこの机の上のこの位置に、この時刻に、ガムが置かれてあることを知っていなければならぬ。可能性として否定はしないが、その…もっとあり得そうな真相は考え付かないものかね。考える時間は充分あるのじゃ。ここは研究室じゃ。仮説によっては実験、検証することもできるぞ」
ジローはうーむ、と腕を組んでうつむいた。
メリッサは無言のまま、腕を組んで天井を見上げた。
-----------------------------
さあ、あとはし~らないww ポール先生、よろしくです!
次、どんな展開になってまわってくるのかも楽しみです。
はたしてこれをうまくさばけるか。リターンできたらご喝采。
さて、そろそろ終盤へ、収束の方向へ持っていかなければな。
ふむ……。
※ ※ ※ ※ ※
こいつは大変なことになった。
「クリスタルの断章」のポール・ブリッツさんが、リレー小説を企画し、参加者を募ったので「こいつあおもしれえ」と軽い気持ちで名乗りを上げたものの、日ごとに汗。大体小説なんて書いたことないくせに。以前書いた「放浪娘VI」の小説化した一場面を「違う」とあっさり書きなおされてしまったし…orz
結局名乗りを上げたのは、黄輪さん(「黄輪雑貨本店 新館」)と僕だけ。第一回ポールさん、第二回黄輪さん、そして僕のこれが第三回目であります。もう一回ずつまわって来て、最後の第七回でポールさんが見事にオチをつけることになってます。ワクワク。
「リレー小説」ですから。自分で収拾つける必要ないんだもんね。最後はポール教授が「必ず収拾をつける」と宣言されてるのだし。無責任に書きっぱなしでいいんだ。・・・というわけで、割とノリノリで書きました。
一応、「SF」ですよ。
それでは、どーん。(←お約束)
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3
「この研究室…」
サンライズ教授は茫然と二人の顔を見た。
「教授?…ええっ!?」
「い、いや、決して君たちを疑っているわけではないぞ。だがここには最初からわしらしかおらん。まず、ここにいるうちの誰かが犯人だと考えるのは、こういう場合は当たり前のことじゃ。そ、そうじゃ、客観的に見ればわしだって容疑者のひとりじゃ。いや、わしは君たちが犯人ではあり得ないと思っている。むしろそのことを最初に確認しておきたいのじゃ」
教授は一気にしゃべると大きくため息をつき、額を手の甲で拭った。
ジローはこの研究所にきてからすでに結構な時間をサンライズ教授と一緒に過ごしているが、こんなに動揺した教授は見たことがなかった。そりゃ動揺もするだろう。でも。これって、そんなに取り返しがつかないほどの失態なのか?
考え込んでるんだか途方に暮れてるんだか、額に汗をにじませて虚空をじっと見据えたまま固まっている教授に、ジローはそろっと話しかけた。
「で…でも教授…。盗られて困るのはガムそのものよりガムをつくる技術なんでしょ? 成分の分析はできても同じものをつくるのは無理なんじゃないかと…」
「ジロー研究員。あのガムには操作済みのコウジカビが生きておるのじゃ。うまく培養すれば、あれ一個からいくらでも同じものが作れるのじゃよ。わかるじゃろう!キミは本当にハイダーベル大学を出たのかね!」
「こっ!これでも僕は主席…いやそれに近い成績でっ!……いえ、おっしゃるとおりです。なんとしてでも解決しましょう、教授」
いかんいかん、とジローは息を整えた。いつもおだやかな教授がここまで感情的になるとは、やはりただごとではないのだ。教授も声を荒げた自分に恥じ入るように、上目づかいでちらっと彼を見ながらコクコクと頷いた。
メリッサがややハイトーンの声で切り出した。
「ねえ、科学者なら、ちゃんと整理してもう一度冷静に考えましょうよ。ガムの入ったシャーレはたしかにここにあった。そしてそばには間違いなく、私たち三人しか居なかった。私たちのうちの誰かがそうっと手を伸ばしてシャーレを万引き…って、できる?いくらなんでもバレバレじゃん!となると、私たち以外の誰かが盗ったというのがまずはっきりしていること…」
「そうっと手を伸ばしてかね!」
「部屋の外から?どんな長え手だよっ。しかもドア閉まってるし」
「空中からにょきっと手が出てきた、ってのはどう?」
「……。」
「…すまんなメリッサ君。こういう状況でこそジョークを言うのは素敵なことじゃと思うが、わしは今とても笑う気にはなれん」
「ていうか、ゴメン、それあまり面白くないと思う」
「『手がにょき』はあくまで比喩よ。…つまり」
「あっ!まさか!次元転移…」
「なんじゃと!?」
「『物体転送技術ついに実現か』って新聞にでかでかと載ったあれって、もう一年以上も前じゃないか。『位相のねじれ理論』だっけ? あの後どうなったのか聞かないけどな。大昔から語られてきた夢の技術だけど、結局実現は不可能なんじゃないのか」
「でも研究はもちろん続けられてるわけで。恒星間航法に革命を起こす『ネオエーテル粒子』の発見で、次元転移による瞬間的な物体移送も原理的には可能になるとか…私も物理学には詳しくないけど」
「それ、それって…『いろんな味のガム』よりずっとスゴイことじゃないか!そんな大がかりな『世紀の大発明』まで使って、その目的が『味覚の大発明』を奪うこと?犯人像が見当もつかないぞ。本当に産業スパイなのか?」
「ははは…夢のある話じゃな」
教授、決して笑ってはいない。
「その技術については、わしだって知っておる。科学雑誌に研究の内容が載っておったな。向こうに装置があれば、あらかじめマトリックス化されたこの部屋の空間座標と時刻を指定することで、そこにあるものをピンポイントで取り寄せられる、というものじゃ。ただし、見えない場所からそれをするためには、事前にこの机の上のこの位置に、この時刻に、ガムが置かれてあることを知っていなければならぬ。可能性として否定はしないが、その…もっとあり得そうな真相は考え付かないものかね。考える時間は充分あるのじゃ。ここは研究室じゃ。仮説によっては実験、検証することもできるぞ」
ジローはうーむ、と腕を組んでうつむいた。
メリッサは無言のまま、腕を組んで天井を見上げた。
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さあ、あとはし~らないww ポール先生、よろしくです!
次、どんな展開になってまわってくるのかも楽しみです。
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~ Comment ~
う~ん、みなさん本当にすごいですね!
とっても面白く拝読させていただいていますっ。
でもやっぱり、ポールさんがどう収拾つけるのかが一番楽しみwww
続きイソイソ
とっても面白く拝読させていただいていますっ。
でもやっぱり、ポールさんがどう収拾つけるのかが一番楽しみwww
続きイソイソ
- #6351 土屋マル
- URL
- 2011.12/20 22:00
- ▲EntryTop
Re: limeさん
「子供にはまだ早い」小説の典型例ですからね(笑)。
「禽獣の門」についても盛り上がりたいです。うー、あの結末、話したいっ!(^^)
「禽獣の門」についても盛り上がりたいです。うー、あの結末、話したいっ!(^^)
ど・・・どうするって・・・汗
「子供はマンガでも読んでなさい」って言うか??
『禽獣の門』のさわりだけ読みました!
(あの辺に住んでたなあ^^)
今までとまた違う書き味で、絶句!あれが耽美と言われる所以かな。
あの「素描」の青年の絵が見たい・・・とおもった、いけない私でした (^^ゞ
「子供はマンガでも読んでなさい」って言うか??
『禽獣の門』のさわりだけ読みました!
(あの辺に住んでたなあ^^)
今までとまた違う書き味で、絶句!あれが耽美と言われる所以かな。
あの「素描」の青年の絵が見たい・・・とおもった、いけない私でした (^^ゞ
Re: limeさん
ロールプレイです。
「お母さん、この『獣林寺妖変』って小説、面白いね」
……さあどうする!(笑)
「お母さん、この『獣林寺妖変』って小説、面白いね」
……さあどうする!(笑)
おお、ますますSFっぽくなってきましたね。たのしい~。みんな、想像力がすごい!
これをポールさんがどうつなげていくのか。
楽しみです。
そういえば、息子の学校の国語の先生が、こんなリレー小説を生徒に書かせてたんですが、私もすっごく参加したくてうずうずしていました。
だんだんミステリー調になって来るので、「お母さん、こっそり参加していい?」と訊くと、「やめて」と却下されました・涙。
最後にはホラー調で終わっていましたが、ちびっこも、なかなかやるなあ~、と、感心したもんです。
(一番大人げなかったのは、こっそり混ざろうとした、私でした^^;)
これをポールさんがどうつなげていくのか。
楽しみです。
そういえば、息子の学校の国語の先生が、こんなリレー小説を生徒に書かせてたんですが、私もすっごく参加したくてうずうずしていました。
だんだんミステリー調になって来るので、「お母さん、こっそり参加していい?」と訊くと、「やめて」と却下されました・涙。
最後にはホラー調で終わっていましたが、ちびっこも、なかなかやるなあ~、と、感心したもんです。
(一番大人げなかったのは、こっそり混ざろうとした、私でした^^;)
Re: 綾瀬さん
もうみんな更新が早くて(^^)
年内には完結しちまうかな、このエピソード(^^)
年内には完結しちまうかな、このエピソード(^^)
Re: 矢端想さん
いや、それは矢端想さんの目が悪くなったのでも見間違えたのでもありません。
コメントが来てから大急ぎで行間を縮めたので……(^^;)
続きは明日までには何とかします……。
コメントが来てから大急ぎで行間を縮めたので……(^^;)
続きは明日までには何とかします……。
> 行間
wordの文章での一行あきがブログ投稿画面に貼り付けると二行あきになったりするので、いつも修正しています。これは謎です。
こちらの記事ではよく見たら、ちゃんとそのまま再現されています。こちらのもとの書式自体が行間広めなので余計に広く見えていました。これでいいと思います。
wordの文章での一行あきがブログ投稿画面に貼り付けると二行あきになったりするので、いつも修正しています。これは謎です。
こちらの記事ではよく見たら、ちゃんとそのまま再現されています。こちらのもとの書式自体が行間広めなので余計に広く見えていました。これでいいと思います。
Re: 矢端想さん
いやー、それだけに書きがいがありますよ(^^)
コピペしたものをそのまま貼ったのですが……。
作者の意図に反して読みにくいようでしたら行間縮めておきますね(^^)
コピペしたものをそのまま貼ったのですが……。
作者の意図に反して読みにくいようでしたら行間縮めておきますね(^^)
いやー。
一番芸のない方向に持って行ってしまいました…orz
だって密室だし、三人しかいないし。このままでは事件がおこりようがないし…。
そろそろドドーン!と外的要因でも来て欲しいですな~w
まあ、ポール先生がうまいことやってくれるだろうww
…ところで行間アキすぎじゃない?
一番芸のない方向に持って行ってしまいました…orz
だって密室だし、三人しかいないし。このままでは事件がおこりようがないし…。
そろそろドドーン!と外的要因でも来て欲しいですな~w
まあ、ポール先生がうまいことやってくれるだろうww
…ところで行間アキすぎじゃない?
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Re: 土屋マルさん