史上最大の密室

　バン、という音とともに、ドアが蹴破られた。

　警部は目の前の光景に、ただ呆然とするだけだった。

「深見くん、これは……これは……」

「密室ですね。それも密室殺人だ。そこに刺されて倒れているのは、韮澤氏に間違いない」

　名探偵・深見剛助は答えた。

「ここに通じる扉はすべて、内側から鍵がかけられていた。窓も同様。天井裏にも床下にも、一切、蟻の這い出る隙間もない」

「誰にこんなことが」

「わからない……。これは、ぼくの仕事の中でも、最大の事件となるでしょう。犯人は、この密室の中にある、なにかを使って、この大胆な殺人を行ったんだ！」

　深見剛助は叫んだ。

　そうだった。扉にはすべて鍵がかけられ、窓も、天井裏からも床下からも蟻一匹として這い出ることのできない……ごく小さな、隔離された部屋から出てきた深見剛助と警部の前には、史上最大の密室……「全宇宙」が広がっていたのである。



お詫び：弊社新刊予定「名探偵・深見剛助　トポロジー密室殺人事件」の発売時期は未定になりました。