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    「ショートショート」
    SF

    終わり

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     終わった……。

     人類は、その事実を突きつけられて、ただ黙るしかなかった……。

     建築できる建築物は、すべて建築しつくしてしまった。

     破壊できるものは、すべて破壊しつくしてしまった。

     作り出せる芸術は、すべて作りつくしてしまった。

     食糧は有り余り、宇宙の終末まで食べていける。

     知ることができるものは、ほとんどすべて知り尽くしてしまった。

     人類のできる全てのことが、今や別の「もっと効率のよく効果も高いなにか」によって行われているのだ。

     すでに人類は、「旧式モデル」だった。

     人類の代表として、最後に残った賢人は、諦めが宿った顔で語った。

    「宇宙で人類ができることはなにひとつとしてない……宇宙は、エントロピーとは別の、もっと別なエントロピーによって満たされてしまったのだ」

     その言葉を聞く誰もがうなだれていた。

    「人類を、ホモ・ルーデンス、遊ぶヒト、と名付けた学者が昔いたが、それは違っていた。人間は、ただ遊ぶだけの存在ではない。遊びは仕事であり、仕事は遊びである、という二重構造を、その内に宿していたのだ。人間は、遊ぶヒト、ではなく、意志を持って働くヒト、なのだ。そして……」

     賢人は宇宙を眺めた。

    「今や、人類にできる『仕事』はなにひとつない! 人類が行える、生産的な『仕事』はなにもないのだ! ボルツマンの言葉を借りれば、宇宙は『熱的死』ならぬ、『職的死』を迎えてしまったのだ!」

    「われわれはどうすればいいのですか?」

    「わかっているだろう。単に、絶滅するまで繁殖するだけだ。なんの目的もなく……」

     賢人はそう説いた。その認識が、人間のなすべき仕事の、「終わり」だった。
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    ~ Comment ~

    Re: YUKAさん

    だからそれはものの考えようで、いつぞやのエドさんにも書いたように、ミジンコやらバクテリアやらの一生も、つらかったり楽しかったりするものなのだと思います。

    人間の文明の意味がたとえ失われたとしても、だからなんだというのか、であります。そんな世界でも、人間は人間らしく生きるべきなのであります。

    それがニーチェのいう『能動的ニヒリズム』なのであります。(そうか?)
    • #7946 ポール・ブリッツ 
    • URL 
    • 2012.05/07 07:41 
    •  ▲EntryTop 

    おはようございます^^

    う~~ん、哀しいけどそんな気が^^;;

    バクテリアとかウィルスと同レベル?
    ただ繁殖あるのみ。
    繁殖が終われば、衰退の一途ですか。

    いや、もう衰退に向かっているのか。

    Re: ダメ子さん

    三葉虫もアンモナイトも、絶滅寸前は前衛芸術のような凄まじい形をしていたそうですな。

    だから何だというわけではないですが(^^;)
    • #7749 ポール・ブリッツ 
    • URL 
    • 2012.04/17 20:45 
    •  ▲EntryTop 

    なんだか最近これに近づいてきてるような…

    もちろん、全部作り終えた訳じゃないだろうけど
    残ってるものが
    専門家以外の一般人にとってはどうでもいいもの
    になってきてるような…

    Re: 土屋マルさん

    基本的にSFというのは、「人間の素晴らしさ」を語る文学というよりは、「人間を宇宙に漂う一個の生命体」としてとらえ、「他の動物と同じくやがていつかは絶滅していく存在」と考えることから始まりますからねえ。

    で、そうした視点に立ったうえで、「そんな人間の生に意味があるとしたらなにか」とか、「そんな認識の上で人間はどう生きるべきか」を考えるのがSFだと思います。

    だから、SFに対して「人間がよく描けている」というのは蔑称以外のなにものでもないと。褒めるのならば、「『変化した』人間がよく描けている」とか、「人間ではないなにかがよく描けている」というべきではないかと。

    こないだ亡くなった小松左京先生なんて、この手の問題に科学で挑み、「神への長き道」だとか「果てしなき流れの涯に」という名作をいくつも書いてます。

    この手の話をSFファンが始めると三日三晩くらいに長くなるのでここらへんで切りますが(^^;)

    Re: 面白半分さん

    どれだけのものが人間に造れるのか、ということを考えると別なロマンが生まれるのですが(^^)

    どのみち、こんなふうに人類が「宇宙の職的死」に直面するまでには、宇宙の寿命が先に尽きてしまうような気がします(ミもフタもない(^^;))

    死滅するまで機械的に増殖を繰り返すウイルスのそれと、われわれ人類は、「絶滅するまで繁殖する」だけの存在として等価ではないか。

    (((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル

    この言葉に深く納得した自分を自覚した瞬間が、何より一番怖かったですorz
    確かに生命という観点から見れば、ヒトだけが特別な訳はないし、ウィルスの増殖のシステムに感情というものが存在し得ないと証明することは出来ないのだから、ヒトの歴史は‥‥ヒトの繁殖は‥‥
    何かもう怖い(笑)

    ここ最近読んだものの中で、これ、一番心にグッときたお話だったです!
    文章が頭に残って仕方ない(||´・ω・)
    何だろう、私の中の何かの琴線に触れました。
    発想そのものに拍手!

    芸術もすべて作りつくしてしまった世界というのは
    味気なさそうですね。

    それこそウイルスと同等の価値なのかもしれませんね

    Re: 土屋マルさん

    古代ギリシアの哲学者、アリストテレスは、ものごとの原因を四つにわけました。形相因、質量因、動力因、目的因です。大工が家を建てることで説明しますと、まず、大工は自分がなにを作るのか頭に思い描いていなければなりません(形相因)。家を建てるには材料が必要です(質量因)。設計ができていて材料があっても、自分でのこぎりだのなんだのでトンカンやらなければ家は建ちません(動力因)。で、家ですが、そもそも大工に「住むための家を作ってくれ」と頼む人がいなければ、大工は家を建てません(目的因)。アリストテレスが最重視したのが、この目的因でした。

    「人間はなにかをなすために世界に存在しているのだ」という考えのもと、人間は長いこと暮らしてきました。これを「目的論的世界観」といいます。仮想された目的はいろいろありますが、とりわけキリスト教的な「神」に対する信仰にぴったり合いました。

    まあそれでなんとかやっていたわけですが、それを明快な論理で誰にでも分かる形で論破し、根本からぶっ壊してしまったのが、「史上最も過激な思想家」ともいわれる哲学者、スピノザです。世界には目的もなにもなく、必然的になるようになるだけである、という思想は危険思想以外のなにものでもなく、教会からも、それと論戦していた開明的なデカルト主義者たちからも、両方のサイドから徹底的に罵倒され、死後、著書は発禁処分の憂き目に。

    しかし、ほんとうに人類の存在に目的はあるのでしょうか? そう考えた時に、わたしは疑念を抱かざるを得ないのです。死滅するまで機械的に増殖を繰り返すウイルスのそれと、われわれ人類は、「絶滅するまで繁殖する」だけの存在として等価ではないか? そう思えてならないのです……。

    ポ、ポールさん‥‥。
    このお話、深く深く考えると何かすっごく怖いのですが(((( ;゚д゚)))アワワ

    こんな終わり嫌だorz
    大丈夫だ、「ヒトの想像力とは、こんな風にならないためにこそあるんだっ!」と、賢人に向かって叫びたいです(笑)
    しかして実際のところ、人類は叡智を極めるまでに辿り着く前に、自滅してそうな気もします。
    最後の目的が、終わりまで繁殖することって‥‥ヒトって何て罪深い( ´-ω-`)
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