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    「エドさんとふしぎな毎日(童話)」
    エドさんと緑の森の家(童話掌編シリーズ・完結)

    エドさんと緑の森の家・1月22日

     ←趣喜堂茶事奇譚/赤江瀑耽溺週間(その6) →ブルーベリーパイ
     たとえ凍てつくような寒い日であろうとも、たとえ愛する新妻が家で待っていようとも、「なんでもやります」という看板をかかげた便利屋をやっている以上は、どんな汚い仕事でもやらなければなりません。

     ということで、エドさんは、身を切り裂くかのごとき寒気の中で、かちんかちんに凍り付いて、破裂してしまったロバーツさんの家のトイレの水道をなんとかする、という難しくも骨の折れる仕事をやっていました。

     探偵として、かつて配管工の仕事の初歩も学んでいたエドさんは、パイプのバルブをひねり、水が出ることを確認し、ふう、と息をつきました。なんで探偵が配管工の修行を、ですって? それは、パイプの中というものは、盗聴器を隠すのにも小型カメラを隠すのにも都合がいいし……いやいや、エドさんはそんなことはしていません。たぶん。

     とにかく、このトイレを出て手数料をもらい、家へ帰ってストーブにあたろう、と考えていたエドさんは、なんの気なしに、トイレの便器の底を見ました。

     見て、エドさんはわが目を疑いました。

    「き……金塊?」

     そうです。便器の底に見えるのは、きらきらと輝く金塊ではないですか。ちょっと見ただけでも、この家と向こう両隣三件を土地つきで丸ごと買えそうな価値はありそうです。

     エドさんは目をつぶり、十数えました。

     十数えたエドさんが目を開けると、そこには金塊が輝いていました。エドさんは今度こそほんとうにびっくり仰天しました。

    「いたずらか?」

     いたずらにしては、手がかかりすぎているし、ロバーツさんが金持ちだという話も聞いたことがありません。泥棒よけの、電流が流れた罠でしょうか。しかし、トイレに?

     エドさんは、首をひねりました。



     お金を受け取りその場を辞去しようとしたエドさんは、ロバーツさんがどことなく、うずうずしているのに気づきました。

    「あの、ロバーツさん、いったい……もしかしたら、なにか話したいことでも。ひょっとして、あのトイレの金塊のことですか」

     ロバーツさんは相好を崩しました。

    「ええ、そうです、そうです、やはりあなたにも見えましたか!」

    「見えましたかって……あれはなんです? いたずらかなにかですか? わたしが昔出会った中にも、無類のいたずら好きのかたがいましたが……」

    「いたずらじゃありませんよ」

     ロバーツさんは胸を張りました。

    「あれは、幽霊なんです!」

     ロバーツさんは、エドさんを客間に招き、お茶をすすめながら話しはじめました。

    「わたしもお婆ちゃんから聞いたんですがね。昔、昔、何百年も昔、わたしの先祖に、ものすごいけちん坊がいたそうなんですよ」

    「はあ」

     エドさんはお茶をひと口飲みました。

    「ある日、その先祖が、金塊を拾ってきたんですな。ちょうど金貨一枚くらいの大きさでしたが、金塊には違いありません。盗まれるとたいへんだから、どこかへ隠そうと思い、トイレの便器の中に隠したんです」

     エドさんは黙って聞いていました。

    「うちの先祖は、毎日トイレに入っては、それを見てにやにやするのを楽しみにしておりました。しかし秘密というものはばれるもので、ある日忍び込んだ泥棒が、その金の塊を盗んで持って行ってしまったのです」

    「その話は聞いたことがありますよ。たしか知恵のある息子が、『どうせ使わないのなら同じことだから石ころをおいてそれを見ていればいいよ』っていう、笑い話ですよね」

    「うちの先祖にも息子はいましたが、それほど根性が悪くはありませんでした。ある日、トイレに行くと、その息子は大きな金塊を便器の中に見つけたのです。もちろん息子は興奮して父親を呼びました。だが、しかし、そのときには、金塊は消え去っていたのです。父親に殴られた息子がもう一度ひとりになって便器を見ると、そこには金塊が」

    「どういうことなんですか?」

     ロバーツさんは笑い出しました。

    「幽霊ですよ、金塊の! 貪欲なものの前には怖がって現われないが、貪欲とは無縁なものの前には現れる、そんな金塊の幽霊が、うちのトイレに代々住み着いているんですよ」

    「なるほど、ロバーツさん、あなたのご先祖はいいものを手に入れられましたね。金のかけらよりもっと価値のある、何百年たっても一族を楽しませてくれる幽霊を……」

     と笑ったものの、エドさんは背筋がぞっとしました。もしも金塊が本物だったとしたら……。幽霊は怖くないが、人間は怖い!


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    ~ Comment ~

    Re: tokosantanさん

    いろいろあるようですからね、こっそり忍び込んでよからぬことをする方法……。

    まあ最近では、もっとスマートにやるそうですが。盗聴とか隠し撮りとか……。

    ハハハハ、笑っちゃいました。

    面白かったです。

    しかし、パイプに盗聴器や小型カメラを仕掛けるのも
    怖い話ですな。

    Re: YUKAさん

    ありがとうございます。

    もちろんわたしにも見えないでしょうね、たぶん、いや絶対(^^;)

    こんばんは♪

    金塊の幽霊~~

    私にも見えない気がします(笑)
    人間が怖い。。。その通りですね^^

    やっぱりエドさんはいいですね~~^^

    Re: ぴゆうさん

    和式便所を使うエドさんが想像できん(^^;)

    ちなみにここで出てくる、けちな男を戒める小話は、中国だったか日本だったかの古典にある有名な話なのですが、出典を探したけれどもわかりませんでした。「金塊の幽霊」という再解釈はわたしのオリジナルですが。

    「金隠し」
    のダジャレかと思うた。

    中々奥深い話でありマスノォ。

    Re: 土屋マルさん、るるさん

    よかったみんないい人だ(^^)

    よしエドさんはこの調子でいくぞ(^^)

    まさに!

    そのとおりです。

    ポールさん、こんばんは♪

    金塊の幽霊!
    素敵ですね~、ユーモラスでいいなあ(ノ´∀`*)
    殴られた息子さんは可哀想ですけど(笑)

    守銭奴の先祖の霊の怨念が生んだ幻なのか、と考えるとちょっと怖いかも?
    見てしまったら何かありそうかも(笑)

    でもやっぱりエドさん、最高です♪

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    Re: 有村司さん

    いや、喜んでもらえてよかったです(^^)/

    もしかしたらわたしミステリ的にはめちゃくちゃ恐ろしい可能性を残したストーリー書いたかと思っていたもので。

    そうですよねわははわたしの考えすぎですよね(^^)

    こんにちは!

    金塊の幽霊!!

    多分私には見えないでしょうねえ(苦笑)
    でも、そのほうが心穏やかです^^

    しかし探偵業辞めても、エドさんの周りには不思議な事ばかり…良きかな。
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