「ショートショート」
ファンタジー
赤い鳥、小鳥
その子供は、無数の鳥かごの並ぶ中、無心に歌っていた。
「赤い鳥、小鳥、なぜなぜ赤い、赤い実を食べた」
子供はひとつの鳥かごの扉を開けた。つがいの赤い鳥が羽ばたき、空へと飛び立っていった。
「白い鳥、小鳥、なぜなぜ白い、白い実を食べた」
子供はまたひとつの鳥かごの扉を開けた。つがいの白い鳥が羽ばたき、空へと飛び立っていった。
「金の鳥、小鳥、なぜなぜ智慧の、智慧の実を食べた……」
子供はわずかに悲しみを含んだ目で鳥かごの扉を開けた。翼がもがれ、傷ついたつがいの小鳥が、鳥かごから這いだし、そのまま大地へと落ちて行った。
子供は歌を歌いながら、次々と鳥かごの扉を開けて歩いて去って行った。
足元で、翼をもがれた二羽の鳥は、傷の痛みに耐えながらも、自分の手と足で立ち上がった。
穢れてしまったつがいの金の小鳥が、どこを目指して歩いて行ったかは知る由もない。このエデンの園と呼ばれる地から。
「赤い鳥、小鳥、なぜなぜ赤い、赤い実を食べた」
子供はひとつの鳥かごの扉を開けた。つがいの赤い鳥が羽ばたき、空へと飛び立っていった。
「白い鳥、小鳥、なぜなぜ白い、白い実を食べた」
子供はまたひとつの鳥かごの扉を開けた。つがいの白い鳥が羽ばたき、空へと飛び立っていった。
「金の鳥、小鳥、なぜなぜ智慧の、智慧の実を食べた……」
子供はわずかに悲しみを含んだ目で鳥かごの扉を開けた。翼がもがれ、傷ついたつがいの小鳥が、鳥かごから這いだし、そのまま大地へと落ちて行った。
子供は歌を歌いながら、次々と鳥かごの扉を開けて歩いて去って行った。
足元で、翼をもがれた二羽の鳥は、傷の痛みに耐えながらも、自分の手と足で立ち上がった。
穢れてしまったつがいの金の小鳥が、どこを目指して歩いて行ったかは知る由もない。このエデンの園と呼ばれる地から。
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Re: ぴゆうさん
これを詩といってしまったら、ほんとに詩を書いている方に失礼な気がするであります(^^;)
詩人の言葉の使いかたは、ほんとうに魔術的なものがあるからなあ……。
むしろぴゆうさんの猫国ワールドのほうが、原初的な「詩」に近い豊饒なイメージを持っていると思います(^^)
詩人の言葉の使いかたは、ほんとうに魔術的なものがあるからなあ……。
むしろぴゆうさんの猫国ワールドのほうが、原初的な「詩」に近い豊饒なイメージを持っていると思います(^^)
Re: 土屋マルさん
どうなったかはわかりませんが、たぶんロクなことにはならなかっただろうと思われます。
世の中そんなもんです。
世の中そんなもんです。
汚れて傷ついて翼をなくしたまま、エデンの園に留まり続けていたらどうなっていたんだろう‥‥?
(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
- #6867 土屋マル
- URL
- 2012.01/25 21:14
- ▲EntryTop
Re: 矢端想さん
子供のうちから全知全能だったら、大人になる必要がないではありませんか。
この子供は全知でもなければ全能でもありません。単に完全であるだけです。
単に内面の必然性により動くだけの(以下略)
この子供は全知でもなければ全能でもありません。単に完全であるだけです。
単に内面の必然性により動くだけの(以下略)
なぜなぜ、だって?
「全知全能」であるこの子供は金の鳥たちが智慧の実を食べることなど最初から知っていたはずだ。
そして最後にどこへ向かうのかも、きっと知っている・・・。
「全知全能」であるこの子供は金の鳥たちが智慧の実を食べることなど最初から知っていたはずだ。
そして最後にどこへ向かうのかも、きっと知っている・・・。
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Re: ぴゆうさん