ささげもの

    土屋マルさん誕生日プレゼントショートショート!

     ←師匠と馬鹿弟子・その2 →範子と文子の三十分的日常/一月・試験直前
     相互リンクしていただいている土屋マルさんが本日誕生日だとお聞きして、急遽作ったプレゼント用のショートショート。

     プレゼントだから、土屋マルさんの最近の作品をアレンジしてみた。変奏曲のようなものである。

     アレンジした作品がホラーだったので、この作品もホラーになってしまった(^^;) こんなもの贈ってしまったらもしかして失礼?

     一抹の不安を抱いて以下どーん。



    ※ ※ ※ ※ ※








     ふっと顔を上げてみたら、マンション自室の白い壁に、目立たない程度の傷があるのに気づいた。

     わたしはアルコールでふやけた頭のまま、両親には見せられないようなしどけない姿で壁に寄り、とっくりと検分した。

     傷は、壁にものがぶつかったかなにかして、その塗料の一部が剥離しただけに思えた。

     このマンション、新築で、けっこう高かったのに。わたしは眉をひそめながらその傷に手を触れた。

     触れるんじゃなかった、と思った。壁の塗料は、わたしが爪を立てると、またひとひらぱらりと剥がれ落ちたのだから。それどころか、壁の一部まで、ぽろりと剥がれ落ちてきた。

     なんてもろい。安っぽい西部劇に出てくる土牢みたいだ。ナイフが一本あれば、壁を砕いて逃げられるやつ。

     わたしはコンクリートをさらに引っかいた。また小さなかけらが、ぽろりと落ちてきた。これには頭にきた。新築が……いい気分だったのに……。

     わたしは親の敵でも見つけたかのように、爪で壁をほじくり返し始めた。壁は面白いように剥がれ落ちてきた。しかもなんということか、うっすらと液体のようなものがにじみ出てきたのである。

     わたしはすぐに事情を察した。これはあれだ、壁の中を走る水道管に水漏れかなにかがあり、それが鉄筋コンクリートを腐食させて、壁をもろくしてしまったに違いない。

    「まったく最近の建築会社と来たら……」

     わたしは、せめて水漏れの箇所だけでも突き止めようと、文房具を突っ込んである筆立てから太刃のカッターを持ってきて、それで壁の穴を掘りはじめた。太刃カッターにしたのは、それがコンクリートを掘るのにいちばんぴったりしていると思えたからだ。

     がちがちと掘り進むと、やがて手ごたえが大きくなってきた。

     わたしはカッターの刃を出し、壁に突き立てた。

     どっとばかりに大量の液体があふれ出してきた。壁からではない。

     わたしの手首からだった。

     薄れ行く意識の中、様々のイメージが交錯した。リストカット……動脈……厭……気分転換……新築マンション入居……厭っ……アルコール……太刃カッター……厭あっ!……うつ病……精神安定剤……。

     そしてわたしの物いわぬ死体。
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    ~ Comment ~

    Re: 矢端想さん

    個人的には最後の一行が気に入っています(^^)

    そこに持っていくためにその前の奔流のようなイメージの交錯があるわけで。

    単に、謎解きを書くのがめんどくさかったわけでは……ないと思います(小声で)

    ホラー小説はこうして書けますが、ホラー映画や漫画を読むと感情移入のあまりに奇声を発して逃げ出すタイプ。ストレスをもたらすような、サスペンスとショックに弱いんですよねえ。(^^;)

    Re: 土屋マルさん

    これは、土屋マルさんの作品からヒントを得ました。

    つまり、畳から出てきた髪を引き抜いたら、ぽつり、ぽつりと血がにじんできたほうが怖いんじゃないかな、と思った次第で。

    ただの血だったらなんだから、もうひとひねり……。

    そう考えたら後は一気でした。

    構想4時間執筆30分。アフターバーナーが効いている間でなければなにもできない男(笑)

    Re: 面白半分さん

    もしかしたら、わたしの場合、ホラーは短ければ短いほど傑作になるのか?(^^;)

    変なものが増幅してしまったらすみません。(^^;)

    なにか形として書くと昇華できますよ(^^)

    マジこわいよーっ!!

    でも、こういうのわりと好きです・・・。
    最後から2~3行目、わりとツボです。

    こういうのわりと感情移入します・・・。

    ありがとうございますっ

    ポールさん、ありがとうございます~♪
    お祝いの品、ありがたく読ませていただきましたっ(*´ω`*人)

    というか、これすごい怖いっ!!!
    本気で辛いんですがっ‥‥。
    怖すぎる・゚・(つД`)・゚・
    死体が出てくるオチだろうと思ったのに、途中からアレレ‥‥って感じで、最後は、最後は‥‥うわーん。

    うん、私のホラーは、ただの怪談なんだなあ、と。
    認めるしかないような。
    そんな本気で純正のホラーをごちそうさまでした(拍手!

    今ね、地球の裏側まで凹んでおりますよorz
    ポールさんの引き出しの多さが本当に羨ましいです、チクショー(笑)

    本当にありがとうございました♪

    怖い。
    もう一度よんでも怖い。
    私の中でなにかがで増幅し始めています。

    Re: limeさん

    きのう今日で赤江瀑先生2冊読破(^^)

    「霧ホテル」という短編集を読んだのでありますが、こうして単行本で読んでみると、あの光文社の短編傑作集三巻は、ミステリ色が強いものが多いなあ。

    むしろあの人は男と女の甘美で苦い恋愛小説のほうが本筋なような……。

    あっその前に読んだ「星踊る綺羅の鳴く川」は極上のファンタジーでした。歌舞伎に詳しくなくとも、セリフ回しと眼前の異世界、それに情念だけで酔えてしまいます。うーむ、こんな作品わたしにはひっくり返っても書けない。長編というより中編というボリュームですので、limeさんにも手軽に読めると思います……が、手に入れるのにいくらかかるかなんて知りたくもない(笑)。どうせ例にもれず絶版だろうしなあ(^^;)

    こうコメントを書いて、ホラーの話も作品の話も土屋マルさんの小説の話もlimeさんの挙げた作家の話もしていないことに気づくショック(笑)

    ひえ~、こわい~~。
    怖がりだからマルさんのホラーを避けて読んでたのに、ここでホラー読んじゃった~(>_<)
    (でも実は和室の掃除だけはこそっと読んじゃってました。)

    それでも昔はよく、こんなホラー短編読んでましたが。
    何故今、こんなに怖がりに・・・・。

    ちょっと気になって、皆川 博子先生の短編集を注文しちゃったけど、やめといた方がいいかなあ・・・。
    「蝶」。
    (どっちにしても、まだ積読がすごいし・・・)
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