「ほら吹き大探偵の冒険(児童文学)」
作戦Dを暴け(完結)
作戦Dを暴け 1-3
「ダイエット?」
我輩は、目をぱちくりさせることしかできなかった。
「どういうことですかな、もっと具体的に、奥様」
ダイエットか。この亭主の身体つきを見れば、その必要性を痛感したというのもわかる。だが、それと『行方不明』とのつながりがはっきりしない。
我輩の困惑を察してか、岩崎君代は付け加えた。
「主人は合宿に参加したのです」
「ああ」
それならば我輩にも合点がいく。集団で、痩せるための合宿をするのだ。運動や食餌制限やその他の行為により、再び現れたときにはスマートな身体になっているという、昔からよくあるものだ。
「その団体名は?」
「ダニーズ・アクション・ダイエットとかいってました。略称をDADとか。でも、そんなものに意味なんてありません」
「いや、こういうものはですな……」
「意味なんてないことはわかっているんです! ダミー会社なんです! 連絡を取ろうとしたときには、すでに電話は通じず、事務所のホームページも閉じていて、事務所へ行ったらそこは存在しない住所だったんです! もうわたしは、わたしは……痩せていようがいまいが、主人に一刻も早く帰ってきてほしいんです!」
「警察には?」
「相談しました。行方不明者のリストに入れてくれるといっていましたが、リストに入れただけです! 積極的に捜査してくれる気配なんか、全然ありません! 主人が死んでいるのか生きているのかもわからないで、泣くしかできないわたしに、リストに入れておくだなんて、あまりにも無慈悲すぎます。無慈悲すぎます……」
岩崎君代は、声をつまらせたかと思うと、泣き叫び始めた。会話なんてできたものではなかった。ロシア人なら、問答無用で鎮静剤を注射してしまうところだ。
我輩は鎮静剤よりもいい物を知っていたので、ボタンを押してシャーリー嬢を呼んだ。
「ベイカーくん、例のものを」
シャーリー嬢はすぐに熱い紅茶を持ってきた。そこにはたっぷりと、砂糖とブランデーが入っているのだ。
岩崎君代はしゃくり上げながら紅茶を飲んだ。彼女がタクシーを使ってここへ来たことはすでに聞きだしてあった。
しばらく待つと、温かい飲み物と適度なアルコールがその心をリラックスさせてくれたらしく、岩崎君代もなんとか話ができるまでに回復していた。
「家にその会社のダイレクトメールや教材はありますかな? あったら、持ってきていただきたいのですが」
「持って参りました」
岩崎君代は涙をぬぐうと、鞄からクリアファイルを取り出した。
「あの団体のものは、すべてここに入っています」
「ご主人は、なにか重要な仕事にかかわっておられましたか?」
我輩はそう尋ねながら、そのけばけばしいダイレクトメールを見た。迷彩シャツを着た筋肉もりもりの男が、若い女性に混じってポーズを決めていた。こいつがダニーだろう。
岩崎君代は、武人がそんな情報に触れる可能性は低い、といった。正社員ではあるが、孫請けみたいな会社に勤めていたらしい。
「なぜ、我輩の事務所に?」
「主人のことで相談した喜沢という弁護士のかたが、先生のことをご存知で……」
「わかりました。可能な限りのお力になりましょう。さて、報酬のことですが……」
我輩は、目をぱちくりさせることしかできなかった。
「どういうことですかな、もっと具体的に、奥様」
ダイエットか。この亭主の身体つきを見れば、その必要性を痛感したというのもわかる。だが、それと『行方不明』とのつながりがはっきりしない。
我輩の困惑を察してか、岩崎君代は付け加えた。
「主人は合宿に参加したのです」
「ああ」
それならば我輩にも合点がいく。集団で、痩せるための合宿をするのだ。運動や食餌制限やその他の行為により、再び現れたときにはスマートな身体になっているという、昔からよくあるものだ。
「その団体名は?」
「ダニーズ・アクション・ダイエットとかいってました。略称をDADとか。でも、そんなものに意味なんてありません」
「いや、こういうものはですな……」
「意味なんてないことはわかっているんです! ダミー会社なんです! 連絡を取ろうとしたときには、すでに電話は通じず、事務所のホームページも閉じていて、事務所へ行ったらそこは存在しない住所だったんです! もうわたしは、わたしは……痩せていようがいまいが、主人に一刻も早く帰ってきてほしいんです!」
「警察には?」
「相談しました。行方不明者のリストに入れてくれるといっていましたが、リストに入れただけです! 積極的に捜査してくれる気配なんか、全然ありません! 主人が死んでいるのか生きているのかもわからないで、泣くしかできないわたしに、リストに入れておくだなんて、あまりにも無慈悲すぎます。無慈悲すぎます……」
岩崎君代は、声をつまらせたかと思うと、泣き叫び始めた。会話なんてできたものではなかった。ロシア人なら、問答無用で鎮静剤を注射してしまうところだ。
我輩は鎮静剤よりもいい物を知っていたので、ボタンを押してシャーリー嬢を呼んだ。
「ベイカーくん、例のものを」
シャーリー嬢はすぐに熱い紅茶を持ってきた。そこにはたっぷりと、砂糖とブランデーが入っているのだ。
岩崎君代はしゃくり上げながら紅茶を飲んだ。彼女がタクシーを使ってここへ来たことはすでに聞きだしてあった。
しばらく待つと、温かい飲み物と適度なアルコールがその心をリラックスさせてくれたらしく、岩崎君代もなんとか話ができるまでに回復していた。
「家にその会社のダイレクトメールや教材はありますかな? あったら、持ってきていただきたいのですが」
「持って参りました」
岩崎君代は涙をぬぐうと、鞄からクリアファイルを取り出した。
「あの団体のものは、すべてここに入っています」
「ご主人は、なにか重要な仕事にかかわっておられましたか?」
我輩はそう尋ねながら、そのけばけばしいダイレクトメールを見た。迷彩シャツを着た筋肉もりもりの男が、若い女性に混じってポーズを決めていた。こいつがダニーだろう。
岩崎君代は、武人がそんな情報に触れる可能性は低い、といった。正社員ではあるが、孫請けみたいな会社に勤めていたらしい。
「なぜ、我輩の事務所に?」
「主人のことで相談した喜沢という弁護士のかたが、先生のことをご存知で……」
「わかりました。可能な限りのお力になりましょう。さて、報酬のことですが……」
- 関連記事
-
- 作戦Dを暴け 2-1
- 作戦Dを暴け 1-3
- 作戦Dを暴け 1-2
スポンサーサイト
もくじ
風渡涼一退魔行

もくじ
はじめにお読みください

もくじ
ゲーマー!(長編小説・連載中)

もくじ
5 死霊術師の瞳(連載中)

もくじ
鋼鉄少女伝説

もくじ
ホームズ・パロディ

もくじ
ミステリ・パロディ

もくじ
昔話シリーズ(掌編)

もくじ
カミラ&ヒース緊急治療院

もくじ
未分類

もくじ
リンク先紹介

もくじ
いただきもの

もくじ
ささげもの

もくじ
その他いろいろ

もくじ
自炊日記(ノンフィクション)

もくじ
SF狂歌

もくじ
ウォーゲーム歴史秘話

もくじ
ノイズ(連作ショートショート)

もくじ
不快(壊れた文章)

もくじ
映画の感想

もくじ
旅路より(掌編シリーズ)

もくじ
エンペドクレスかく語りき

もくじ
家(

もくじ
家(長編ホラー小説・不定期連載)

もくじ
懇願

もくじ
私家版 悪魔の手帖

もくじ
紅恵美と語るおすすめの本

もくじ
TRPG奮戦記

もくじ
焼肉屋ジョニィ

もくじ
睡眠時無呼吸日記

もくじ
ご意見など

もくじ
おすすめ小説

もくじ
X氏の日常

もくじ
読書日記

- ジャンル:[小説・文学]
- テーマ:[児童文学・童話・絵本]
~ Comment ~
怪しい団体が出てきましたね。
いろんな嫌な予感がしますが・・・。
ところでこれって、児童文学なんですね。
軽いタッチになるという意味かな?
いろんな嫌な予感がしますが・・・。
ところでこれって、児童文学なんですね。
軽いタッチになるという意味かな?
~ Trackback ~
卜ラックバックURL
⇒
⇒この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
Re: limeさん
意外と難しいであります。