「ほら吹き大探偵の冒険(児童文学)」
作戦Dを暴け(完結)
作戦Dを暴け 2-1
2
我輩はすぐに古い友人に連絡を取った。警察庁長官のあの男である。友人というものは作っておくものだ。
電話をかけると、すぐにつながった。
「我輩だが」
『ザリグ、またお前か! 今は忙しいんだ! つきあってる暇はないぞ!』
「なにかあるのか」
『新聞くらい読め! この馬鹿! これから会議だ! 切るぞ!』
あの男はそうわめくと言葉を切った。
我輩は首を捻った。
警察がそこまで血眼になるような事件など、あるものだろうか。我輩は新聞を読みなおした。
「駐日アメリカ大使、後任決まる。訪日は近日中の予定」
「ようこそパンダ、日本へ! 動物園での受け入れ態勢整う」
大きなニュースといったらこれだけだった。あのような新興の移民国の大使が来ることが、そんなに大きな問題だろうか。それよりは、我がハイダラケ王国の大使が来るほうが大きなニュースだろうと思うが。日本人の価値観はよくわからない。もっとわからないのはパンダだ。あんな珍獣が来ることがそんなに大騒ぎすることなのだろうか。日本人の価値観、考えれば考えるほど、我輩にはわからなくなってくる。
まあ、新駐日アメリカ大使の護衛のほうに警察はかかりきりなのだろう。ご苦労なことである。
「所長」
四つのモニターを見ていたシャーリー嬢が我輩にいった。モニターには事務所のあるビルの屋上で動いている監視カメラをジャックして、こちらにも映像が映るようにしてあるのだ。正義のためならばやむを得ない措置である。
「どうした」
「あの奥さんのタクシー、尾行されているようです」
「尾行だと?」
我輩はあごに手をやった。
なぜだ? 理屈に合わない。
「追いますか?」
我輩は考えた。
「いや、あれは放っておこう」
「なぜですか、所長!」
驚いたようなシャーリー嬢に、我輩は噛んで含めるように説明した。
「あれは、わざと我輩とベイカーくんに見せつけるように車を出しているのだ。もし、我輩かベイカーくんがあの車を追えば、そのときとばかりに、別働隊がこの事務所を襲うことになるだろう。さらに、二手に分かれるとしたら、その未知なる何者かはベイカーくん、君のほうを狙ってくるだろうな。我輩よりも襲ったり連れ去ったりしやすいからだ」
シャーリー嬢は真っ青になった。
「ど、どうしてそんなことが……」
「ベイカーくん。ここを出た岩崎夫人がどこへ行くと思うかね。あの焦燥ぶりでは、家に帰る以外のことは考えられないだろう。つまり、相手は、目的地を知っている相手を尾行していることになる。それでは、理屈に合うまい?」
「すると、わたしたちがここから動かなかったら……」
シャーリー嬢のもっともな言葉に、我輩は深くうなずいた。
「もちろん、奴らは、この事務所を狙ってくる。大丈夫だ、こちらには地の利があるし、こないだの扇風機のときのようなむちゃくちゃなやつらもそうはいないだろう。しかし、人をひとり行方不明にしてしまうようなやつらが相手だから……」
「所長! く、車が突っ込んできます!」
我輩はすぐに古い友人に連絡を取った。警察庁長官のあの男である。友人というものは作っておくものだ。
電話をかけると、すぐにつながった。
「我輩だが」
『ザリグ、またお前か! 今は忙しいんだ! つきあってる暇はないぞ!』
「なにかあるのか」
『新聞くらい読め! この馬鹿! これから会議だ! 切るぞ!』
あの男はそうわめくと言葉を切った。
我輩は首を捻った。
警察がそこまで血眼になるような事件など、あるものだろうか。我輩は新聞を読みなおした。
「駐日アメリカ大使、後任決まる。訪日は近日中の予定」
「ようこそパンダ、日本へ! 動物園での受け入れ態勢整う」
大きなニュースといったらこれだけだった。あのような新興の移民国の大使が来ることが、そんなに大きな問題だろうか。それよりは、我がハイダラケ王国の大使が来るほうが大きなニュースだろうと思うが。日本人の価値観はよくわからない。もっとわからないのはパンダだ。あんな珍獣が来ることがそんなに大騒ぎすることなのだろうか。日本人の価値観、考えれば考えるほど、我輩にはわからなくなってくる。
まあ、新駐日アメリカ大使の護衛のほうに警察はかかりきりなのだろう。ご苦労なことである。
「所長」
四つのモニターを見ていたシャーリー嬢が我輩にいった。モニターには事務所のあるビルの屋上で動いている監視カメラをジャックして、こちらにも映像が映るようにしてあるのだ。正義のためならばやむを得ない措置である。
「どうした」
「あの奥さんのタクシー、尾行されているようです」
「尾行だと?」
我輩はあごに手をやった。
なぜだ? 理屈に合わない。
「追いますか?」
我輩は考えた。
「いや、あれは放っておこう」
「なぜですか、所長!」
驚いたようなシャーリー嬢に、我輩は噛んで含めるように説明した。
「あれは、わざと我輩とベイカーくんに見せつけるように車を出しているのだ。もし、我輩かベイカーくんがあの車を追えば、そのときとばかりに、別働隊がこの事務所を襲うことになるだろう。さらに、二手に分かれるとしたら、その未知なる何者かはベイカーくん、君のほうを狙ってくるだろうな。我輩よりも襲ったり連れ去ったりしやすいからだ」
シャーリー嬢は真っ青になった。
「ど、どうしてそんなことが……」
「ベイカーくん。ここを出た岩崎夫人がどこへ行くと思うかね。あの焦燥ぶりでは、家に帰る以外のことは考えられないだろう。つまり、相手は、目的地を知っている相手を尾行していることになる。それでは、理屈に合うまい?」
「すると、わたしたちがここから動かなかったら……」
シャーリー嬢のもっともな言葉に、我輩は深くうなずいた。
「もちろん、奴らは、この事務所を狙ってくる。大丈夫だ、こちらには地の利があるし、こないだの扇風機のときのようなむちゃくちゃなやつらもそうはいないだろう。しかし、人をひとり行方不明にしてしまうようなやつらが相手だから……」
「所長! く、車が突っ込んできます!」
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