「ほら吹き大探偵の冒険(児童文学)」
作戦Dを暴け(完結)
作戦Dを暴け 2-2
我輩はモニターを凝視した。
「ベイカーくん、言葉は正確に使いたまえ。あれは、車というより、トラックだ!」
確かにそれはトラックだった。すさまじいまでのスピードで、小山ほどもある金属の塊が突っ込んでくる!
轟音とともに、このマンションが根元からへし折れてしまうのではないかと思えるような衝撃があった。
カメラの映像が切れた。
「うぬっ、装甲トラックか!」
我輩はシャーリー嬢をかばうように扉の陰に隠れた。
「やはり狙いはここか」
「所長……」
我輩はにやりと笑った。
「大丈夫だ、我輩に任せておきたまえ。君にも、あのご婦人にも、この我輩が指一本たりとも触れさせはせん」
そのときのシャーリー嬢のまなざしを言葉にするのは難しい。
難しいのは、我輩が、自分のその言葉を、単なる虚勢に過ぎないと悟ってしまっていたからでもあった。
爆発音とともに、扉の鍵が吹っ飛んだ。プラスチック爆薬だろう。
すると、次は……。
我輩は腹に息を吸い込み、笑い始めた。
ふふふ……。
くっくっく……。
わっはっはっは!
どん、と扉が引きはがされ、銃口が向けられる前に、我輩の身体が動いていた。
ぐい、と突き出されたアサルトライフルの銃身を、梃子のように持ち上げて、我輩はまず銃を奪った。これを読んでいる読者諸氏は真似をしないほうがいいだろう。銃身は火傷しそうに熱かった。だが、熱いだなどといっていられる余裕はない。ことは生きるか死ぬかの問題なのだから。
見るまでもなかった。銃は二十世紀のベストセラー小銃、AK74だった。この銃が優れているのは、なんといっても頑丈で、田舎者が適当に振り回しても銃口が詰まったり暴発したりしないということである。どこだかのコマーシャル会社だかドキュメンタリー制作会社だかが、戦車に踏ませたAK74で連射を行い、見事に使い物になることを証明していた。
もっとも、この銃はその他の能力では全般的に平均以上、ということであって、傑出している能力はない。
我輩は手が灼けるのも構わず銃を槍のように構え、瞬時に突き出した。とはいえ、身体の大部分は壁に隠れたままだ。
手ごたえはあった。ごつっ、という感触とともに、何者かが倒れた。
我輩は銃が相手の手から離れたことをその重みで察知すると、銃口を向けないように注意しながらシャーリー嬢に渡した。
錯乱寺拳法『筒捕』の型、その四の紛い、われながらうまく決まったものだ。実際には火縄銃の相手に対して使う技だが。
「しょ……所長……」
「持っておけ。我輩の射撃術では重荷になりすぎる銃だ」
我輩はシャーリー嬢の盾になりながら部屋を下がった。
それにしても教官はどんな奴なのだ。あまりにも攻撃手順がお粗末すぎる。我輩はポケットから耳栓を出すと、耳にはめた。それを見て、シャーリー嬢も慌てて耳にはめた。
次の瞬間、我輩の予想していたものが飛び込んできた。
我輩は目を閉じ、シャーリー嬢の目も覆った。
飛び込んできたのは閃光手榴弾だった。いわゆるスタングレネード。大音響と閃光で、相手の目と耳を麻痺させ、身体を傷つけずに行動の自由を奪うものだ。
「ベイカーくん、言葉は正確に使いたまえ。あれは、車というより、トラックだ!」
確かにそれはトラックだった。すさまじいまでのスピードで、小山ほどもある金属の塊が突っ込んでくる!
轟音とともに、このマンションが根元からへし折れてしまうのではないかと思えるような衝撃があった。
カメラの映像が切れた。
「うぬっ、装甲トラックか!」
我輩はシャーリー嬢をかばうように扉の陰に隠れた。
「やはり狙いはここか」
「所長……」
我輩はにやりと笑った。
「大丈夫だ、我輩に任せておきたまえ。君にも、あのご婦人にも、この我輩が指一本たりとも触れさせはせん」
そのときのシャーリー嬢のまなざしを言葉にするのは難しい。
難しいのは、我輩が、自分のその言葉を、単なる虚勢に過ぎないと悟ってしまっていたからでもあった。
爆発音とともに、扉の鍵が吹っ飛んだ。プラスチック爆薬だろう。
すると、次は……。
我輩は腹に息を吸い込み、笑い始めた。
ふふふ……。
くっくっく……。
わっはっはっは!
どん、と扉が引きはがされ、銃口が向けられる前に、我輩の身体が動いていた。
ぐい、と突き出されたアサルトライフルの銃身を、梃子のように持ち上げて、我輩はまず銃を奪った。これを読んでいる読者諸氏は真似をしないほうがいいだろう。銃身は火傷しそうに熱かった。だが、熱いだなどといっていられる余裕はない。ことは生きるか死ぬかの問題なのだから。
見るまでもなかった。銃は二十世紀のベストセラー小銃、AK74だった。この銃が優れているのは、なんといっても頑丈で、田舎者が適当に振り回しても銃口が詰まったり暴発したりしないということである。どこだかのコマーシャル会社だかドキュメンタリー制作会社だかが、戦車に踏ませたAK74で連射を行い、見事に使い物になることを証明していた。
もっとも、この銃はその他の能力では全般的に平均以上、ということであって、傑出している能力はない。
我輩は手が灼けるのも構わず銃を槍のように構え、瞬時に突き出した。とはいえ、身体の大部分は壁に隠れたままだ。
手ごたえはあった。ごつっ、という感触とともに、何者かが倒れた。
我輩は銃が相手の手から離れたことをその重みで察知すると、銃口を向けないように注意しながらシャーリー嬢に渡した。
錯乱寺拳法『筒捕』の型、その四の紛い、われながらうまく決まったものだ。実際には火縄銃の相手に対して使う技だが。
「しょ……所長……」
「持っておけ。我輩の射撃術では重荷になりすぎる銃だ」
我輩はシャーリー嬢の盾になりながら部屋を下がった。
それにしても教官はどんな奴なのだ。あまりにも攻撃手順がお粗末すぎる。我輩はポケットから耳栓を出すと、耳にはめた。それを見て、シャーリー嬢も慌てて耳にはめた。
次の瞬間、我輩の予想していたものが飛び込んできた。
我輩は目を閉じ、シャーリー嬢の目も覆った。
飛び込んできたのは閃光手榴弾だった。いわゆるスタングレネード。大音響と閃光で、相手の目と耳を麻痺させ、身体を傷つけずに行動の自由を奪うものだ。
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~ Comment ~
ダイハード4だわ。
一体ザレゴットに何が起きたのか!
この急展開に腹腹毒々
何が驚いたって
このデブ、意外に運動神経がいいのに驚いた。
一体ザレゴットに何が起きたのか!
この急展開に腹腹毒々
何が驚いたって
このデブ、意外に運動神経がいいのに驚いた。
- #7140 ぴゆう
- URL
- 2012.02/12 20:10
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Re: ぴゆうさん
ホームズ先生に倣って行動派探偵をするからには、それなりの戦闘能力がないとやっていけないのであります。
そういえばホームズ先生も格闘技、バリツの達人でしたな(^^)