「ほら吹き大探偵の冒険(児童文学)」
作戦Dを暴け(完結)
作戦Dを暴け 3-1
3
「どこへ連れて行かれるんでしょう」
「わからん」
シャーリー嬢と我輩は、AK74の銃口を向けられた状態で、船に揺られていた。例の暴走トラックに乗せられるのかと思ったら、暴走トラックとは別に、一台の新聞社のトラックが用意されていて、我輩たちはそれに乗せられたのだ。新聞用紙の山の中に、半ば埋め込まれるようにして港に運ばれ船に乗せられた我輩とシャーリー嬢は、助けを求めることもできず、歯ぎしりするしかなかった。
ヴァイパーはオートマティック・ショットガンのモードをフルオートからセミオートに変えていた。
我輩は反抗する気はなかった。この状況でショットガンなどをぶっ放せば、我輩はともかく、シャーリー嬢はとても親には見せられないような無惨な死体と化してしまう。
「あの暴走装甲トラックはどうしたのだ」
我輩がヴァイパーに尋ねると、ヴァイパーは酷薄そのものの笑みを浮かべた。
「聞く?」
ヴァイパーは、顎をしゃくって部下に指示した。部下は素直に命令に従った。なぜなら、我輩の耳にニュースが流れてきたからだ。
『……ですっ。暴走トラックは、警察の射撃をものともせずに暴走を続け、警視庁に迫っております。我々取材班は、ヘリからかたずを飲んで、警察のバリケードを見守っております。あっ、来ました。来ました。トラックです。機動隊が……ああっ、機動隊の制止命令にもかかわらず、バリケードに突っ込み……ああっ! ご覧になりましたかみなさん! 爆発です! トラックが、バリケードのど真ん中で爆発しました! 機動隊員たちが……悲惨な状況です。それ以外に、わたくしは言葉を……白昼に東京でこのようなテロが』
ヴァイパーはあごをしゃくった。さっきとどうしゃくり方が違うのかわからぬが、部下の兵士は音声を切った。
「ヴァイパー、貴様、仲間を……」
我輩はヴァイパーをにらみつけた。ヴァイパーは肩をすくめた。
「あたしは命令に従っただけよ。ほら、よくいうでしょ。将軍は兵士を殺すのが仕事、兵士は命令に従って死ぬのが仕事、そして将校と下士官は可能な限り生き残るのが仕事ってね。そしてあたしは下士官として雇われた以上、可能な限り生き残らなくちゃね」
「ヴァイパー」
我輩は言葉を押し出した。
「必ずや、貴様を厳重な刑務所に一生放り込んでやるぞ」
「負け犬の遠吠えとしては、Cマイナスね」
我輩は揺れる船から、なにかしらの情報が取れないか、ホームズ師に倣って考えてみた。残念なことに、我輩はホームズ師の観察力には紙一重及ばなかった。
「ところで、ダイエットがどうこういっていたが、それはお前たちの陰謀と、どう関わっているのだ」
ヴァイパーは鼻で笑った。
「どうしてあたしが答えなくちゃいけないの? これまでに、冥途の土産なるものをくれてやった親切な人間たちがどんな目に遭ったか、映画や小説で知っていれば、あたしがそんなことをしないのもわかるでしょ」
「ふん」
我輩は、あさっての方向を向いてみせた。この女、口ではこういっているが、実際はしゃべりたくてしゃべりたくてしかたがないのだ。寸鉄人を刺す言葉で、巨象を殺す毒を吐くような女でないと、ヴァイパーなどと呼ばれるものか。
思った通り、ヴァイパーはいった。
「五号。目出し帽を脱ぎなさい」
布地の下から現れた兵士の顔を見て、我輩は息を呑み、シャーリー嬢は悲鳴を上げた。
「どこへ連れて行かれるんでしょう」
「わからん」
シャーリー嬢と我輩は、AK74の銃口を向けられた状態で、船に揺られていた。例の暴走トラックに乗せられるのかと思ったら、暴走トラックとは別に、一台の新聞社のトラックが用意されていて、我輩たちはそれに乗せられたのだ。新聞用紙の山の中に、半ば埋め込まれるようにして港に運ばれ船に乗せられた我輩とシャーリー嬢は、助けを求めることもできず、歯ぎしりするしかなかった。
ヴァイパーはオートマティック・ショットガンのモードをフルオートからセミオートに変えていた。
我輩は反抗する気はなかった。この状況でショットガンなどをぶっ放せば、我輩はともかく、シャーリー嬢はとても親には見せられないような無惨な死体と化してしまう。
「あの暴走装甲トラックはどうしたのだ」
我輩がヴァイパーに尋ねると、ヴァイパーは酷薄そのものの笑みを浮かべた。
「聞く?」
ヴァイパーは、顎をしゃくって部下に指示した。部下は素直に命令に従った。なぜなら、我輩の耳にニュースが流れてきたからだ。
『……ですっ。暴走トラックは、警察の射撃をものともせずに暴走を続け、警視庁に迫っております。我々取材班は、ヘリからかたずを飲んで、警察のバリケードを見守っております。あっ、来ました。来ました。トラックです。機動隊が……ああっ、機動隊の制止命令にもかかわらず、バリケードに突っ込み……ああっ! ご覧になりましたかみなさん! 爆発です! トラックが、バリケードのど真ん中で爆発しました! 機動隊員たちが……悲惨な状況です。それ以外に、わたくしは言葉を……白昼に東京でこのようなテロが』
ヴァイパーはあごをしゃくった。さっきとどうしゃくり方が違うのかわからぬが、部下の兵士は音声を切った。
「ヴァイパー、貴様、仲間を……」
我輩はヴァイパーをにらみつけた。ヴァイパーは肩をすくめた。
「あたしは命令に従っただけよ。ほら、よくいうでしょ。将軍は兵士を殺すのが仕事、兵士は命令に従って死ぬのが仕事、そして将校と下士官は可能な限り生き残るのが仕事ってね。そしてあたしは下士官として雇われた以上、可能な限り生き残らなくちゃね」
「ヴァイパー」
我輩は言葉を押し出した。
「必ずや、貴様を厳重な刑務所に一生放り込んでやるぞ」
「負け犬の遠吠えとしては、Cマイナスね」
我輩は揺れる船から、なにかしらの情報が取れないか、ホームズ師に倣って考えてみた。残念なことに、我輩はホームズ師の観察力には紙一重及ばなかった。
「ところで、ダイエットがどうこういっていたが、それはお前たちの陰謀と、どう関わっているのだ」
ヴァイパーは鼻で笑った。
「どうしてあたしが答えなくちゃいけないの? これまでに、冥途の土産なるものをくれてやった親切な人間たちがどんな目に遭ったか、映画や小説で知っていれば、あたしがそんなことをしないのもわかるでしょ」
「ふん」
我輩は、あさっての方向を向いてみせた。この女、口ではこういっているが、実際はしゃべりたくてしゃべりたくてしかたがないのだ。寸鉄人を刺す言葉で、巨象を殺す毒を吐くような女でないと、ヴァイパーなどと呼ばれるものか。
思った通り、ヴァイパーはいった。
「五号。目出し帽を脱ぎなさい」
布地の下から現れた兵士の顔を見て、我輩は息を呑み、シャーリー嬢は悲鳴を上げた。
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~ Comment ~
私も某スパイ系漫画の読みすぎで、Zはツェッと読んでしまう・・・・。
あの漫画、ポールさん好きそうだと思うんだけどなあ。
しかしこのヴァイパー。
今までで一番冷徹なキャラ??
あの漫画、ポールさん好きそうだと思うんだけどなあ。
しかしこのヴァイパー。
今までで一番冷徹なキャラ??
Re: 綾瀬さん
いちおう「えーけーびーふぉーてぃーえいと」がデフォらしいです。
ロシア語では、「あーかーう゛ぇー……ええと……ええと……ロシア語の数字の読み方覚えていない(汗)」
ちなみにここで取り上げているAK74はロシアで作られ、全世界でコピーされているアサルトライフルね(^^)
ロシア語では、「あーかーう゛ぇー……ええと……ええと……ロシア語の数字の読み方覚えていない(汗)」
ちなみにここで取り上げているAK74はロシアで作られ、全世界でコピーされているアサルトライフルね(^^)
Re: ぴゆうさん
しょっちゅう
するのも猫国滞在が長いせいですか?(笑)
逆鱗に思い切り触ってしまった予感……(汗)

逆鱗に思い切り触ってしまった予感……(汗)
Re: 矢端想さん
じゃあ、「48」はなんと読んでいたのですか?(^^)
それはおいといて、わたしも大学でロシア語の授業を取りましたが……外国語は難しいでありますなとほほほ。
赤点でありました……(^^;)
それはおいといて、わたしも大学でロシア語の授業を取りましたが……外国語は難しいでありますなとほほほ。
赤点でありました……(^^;)
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Re: limeさん
こんな裏稼業をやっている女ですからねえ……。
設定がうむむむ。
明るい娯楽活劇を書いているつもりなのにどんどん暗くなっていきますな(^^;)