「ほら吹き大探偵の冒険(児童文学)」
作戦Dを暴け(完結)
作戦Dを暴け 3-3
ヴァイパーは残酷に我輩を見据えた。
「それも面白そうだけど、よしとくわ」
「なぜだ?」
「いいこと、ザレゴット・ダイスキー殿下。あたしはこれからあなたとその小娘を殺し、生き血をすするのよ。そのとき、万一覚醒剤中毒になったら困るでしょ」
この女にまともな交渉が通じると思った我輩が愚かであった。
我輩は何とか笑いを浮かべようとした。
「笑ったらミンチにするわよ」
そうだった。この女は、我輩が錯乱寺拳法を使うところを、笑いによって気を取り込み、爆発的な力を出すあの呼吸法を見ているのだ。思えばあのとき……いや、女性の命を奪うというのは、王族に生まれた人間のすることでもないし、考えることでもない。
「ヴァイパー」
「なによ」
「貴様の主人は、こんなジャンキーだらけの私設部隊で、いったいなにをしでかそうというのだ?」
「それについては、話すわけにはいかないわ。一両日中に、いやでもわかることでしょうけれどね」
「そんなテロなんかに使う頭があるんだったら、もっと有効なことに使ったらどうなのだ? 東北の被災地で瓦礫の除去活動ボランティアに加わるとか」
「こいつらは皆、いや、あたしも含めて全員が捨て駒みたいなものだけどね……捨て駒には捨て駒としてやることがあるのよ。その後なら、なにをやろうとあたしの知ったことじゃないわ。まあ、どうせ、地獄でできることなんて、高が知れてはいるけどね」
ヴァイパーは真顔に戻ると、我輩を鋭く見据えた。
「あんたとその小娘の血で割った酒は、さぞやうまいでしょうね」
「さて」
我輩はとぼけた。
「てっきりこの日本では、酒はヴァイパー(マムシ)の血で割るものだと相場が決まっていたと思っていたのだがな」
「最近はツチノコで割るのが流行っているのよ。それじゃ、また後でお会いしましょ。こっちもこっちで、やることが山積しているのよね。サービスよ。作戦名はD」
ヴァイパーは船室を出て行った。
残されたのは、丸腰の我輩にシャーリー嬢、それに完全武装の兵士数名。
「岩崎さん……」
我輩は、だめもとで話しかけてみた。
「奥さんが、待っている……帰ろうじゃないか」
それに対する岩崎武人の答えは、なにもなかった。無言。それが、岩崎武人を襲った恐ろしい運命の象徴のような気がし、我輩は暗澹たる気持ちになった。
「所長……」
シャーリー嬢が話しかけてきた。
「この人たち、いったい、なにをするつもりなんでしょう?」
「我輩らをか?」
「いえ。……いえ、ヴァイパーは『一両日中』といいました。『作戦D』とも。いったからには……なにか大きなことを……わたし、ニュースで、なにか大事なことを……警察署! もしかしたら、所長!」
我輩も新聞記事を思い出していた。
「ベイカーくん。君がいいたいのは、もしや、あれか? ディプロマット(外交官)!」
「あれ以外の何があるのです、所長!」
シャーリー嬢の顔色は、これ以上悪くなることが不可能ではないかと思えるほど悪くなっていた。
「新しい駐日アメリカ大使が赴任してくると新聞で……! もし、大使の身になにかあったら、この国は……!」
「それも面白そうだけど、よしとくわ」
「なぜだ?」
「いいこと、ザレゴット・ダイスキー殿下。あたしはこれからあなたとその小娘を殺し、生き血をすするのよ。そのとき、万一覚醒剤中毒になったら困るでしょ」
この女にまともな交渉が通じると思った我輩が愚かであった。
我輩は何とか笑いを浮かべようとした。
「笑ったらミンチにするわよ」
そうだった。この女は、我輩が錯乱寺拳法を使うところを、笑いによって気を取り込み、爆発的な力を出すあの呼吸法を見ているのだ。思えばあのとき……いや、女性の命を奪うというのは、王族に生まれた人間のすることでもないし、考えることでもない。
「ヴァイパー」
「なによ」
「貴様の主人は、こんなジャンキーだらけの私設部隊で、いったいなにをしでかそうというのだ?」
「それについては、話すわけにはいかないわ。一両日中に、いやでもわかることでしょうけれどね」
「そんなテロなんかに使う頭があるんだったら、もっと有効なことに使ったらどうなのだ? 東北の被災地で瓦礫の除去活動ボランティアに加わるとか」
「こいつらは皆、いや、あたしも含めて全員が捨て駒みたいなものだけどね……捨て駒には捨て駒としてやることがあるのよ。その後なら、なにをやろうとあたしの知ったことじゃないわ。まあ、どうせ、地獄でできることなんて、高が知れてはいるけどね」
ヴァイパーは真顔に戻ると、我輩を鋭く見据えた。
「あんたとその小娘の血で割った酒は、さぞやうまいでしょうね」
「さて」
我輩はとぼけた。
「てっきりこの日本では、酒はヴァイパー(マムシ)の血で割るものだと相場が決まっていたと思っていたのだがな」
「最近はツチノコで割るのが流行っているのよ。それじゃ、また後でお会いしましょ。こっちもこっちで、やることが山積しているのよね。サービスよ。作戦名はD」
ヴァイパーは船室を出て行った。
残されたのは、丸腰の我輩にシャーリー嬢、それに完全武装の兵士数名。
「岩崎さん……」
我輩は、だめもとで話しかけてみた。
「奥さんが、待っている……帰ろうじゃないか」
それに対する岩崎武人の答えは、なにもなかった。無言。それが、岩崎武人を襲った恐ろしい運命の象徴のような気がし、我輩は暗澹たる気持ちになった。
「所長……」
シャーリー嬢が話しかけてきた。
「この人たち、いったい、なにをするつもりなんでしょう?」
「我輩らをか?」
「いえ。……いえ、ヴァイパーは『一両日中』といいました。『作戦D』とも。いったからには……なにか大きなことを……わたし、ニュースで、なにか大事なことを……警察署! もしかしたら、所長!」
我輩も新聞記事を思い出していた。
「ベイカーくん。君がいいたいのは、もしや、あれか? ディプロマット(外交官)!」
「あれ以外の何があるのです、所長!」
シャーリー嬢の顔色は、これ以上悪くなることが不可能ではないかと思えるほど悪くなっていた。
「新しい駐日アメリカ大使が赴任してくると新聞で……! もし、大使の身になにかあったら、この国は……!」
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~ Comment ~
Re: 土屋マルさん
要するに何が書きたかったかっていうと、昔の少年向けスパイアクションマンガを字でやりたかった、ということで。
ネタが現代ですからしかたないですが……。
今のところ、目標にしている作品は、秋本治先生の「ミスタークリス」であります。あれもギャグだらけだけど、一皮むけばハードなスパイアクションものだからなあ……。
ネタが現代ですからしかたないですが……。
今のところ、目標にしている作品は、秋本治先生の「ミスタークリス」であります。あれもギャグだらけだけど、一皮むけばハードなスパイアクションものだからなあ……。
ポールさん、こんにちは(*´∀`*)ノ
追いついた~♪
何だか非常にダイハード的な展開に^^;
面白いです。
ところでこれ、児童文学、なのですよね?(笑)
マインドコントロールに、ジャンキー兵士‥‥orz
ダイスキー殿下が最後にどうなるのか、とっても気になります。
またお邪魔しますねっ!
追いついた~♪
何だか非常にダイハード的な展開に^^;
面白いです。
ところでこれ、児童文学、なのですよね?(笑)
マインドコントロールに、ジャンキー兵士‥‥orz
ダイスキー殿下が最後にどうなるのか、とっても気になります。
またお邪魔しますねっ!
- #7175 土屋マル
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- 2012.02/15 13:00
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Re: ぴゆうさん
ここまでくればテロまで一息。なにを相手にするかは考えましたが……。