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    「エドさんとふしぎな毎日(童話)」
    エドさんと緑の森の家(童話掌編シリーズ・完結)

    エドさんと緑の森の家・2月19日

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     その日の早朝、エドさんの家の扉についているノッカーが激しく鳴らされました。

    「いるか、便利屋」

     エドさんは眠い目をこすりながら、それでも作業着を身に着けて玄関に向かいました。

    「そう怒鳴らなくっても聞こえますよ、メースンさん。どうしたんです? パソコンでも設置しろというんですか?」

    「だれがあんなものを。とにかく、開けろ、便利屋。寒くてかなわん」

     エドさんは変わり者で偏屈で通っているメースン老人を家に入れると、奥さんのクロエさんが熱いコーヒーのマグカップを渡しました。老人は両手でカップの暖かさを楽しんでいるようでしたが、はっと我に返りました。

    「便利屋、お前、話では、もとは探偵だったそうだな」

    「ええ。まあ。でも、妻との結婚を機に足を洗いましたがね」

    「それでも、この村のぼんくらどもの中では、頭が切れるほうだろう。とにかく、便利屋、これを見てくれ」

    「なんですか、これは? 詩ですか?」

     エドさんが読んでみると、それは、詩ではなく、複雑な記号による、暗号文でした。

    「なんです、これ?」

    「宝のありかを示す暗号文じゃ」

     宝のありか!

     エドさん夫妻はしげしげとその記号を覗き込みました。

    「これが宝のありかねえ。どうもそうは思えませんな。書いてある紙は、ノートを破り取った紙にしか見えないし、使われた筆記用具は柔らかめの鉛筆だ。古いことは古いけれど、いいとこ六十年前くらいでしょうね。いったいこれが、どうしたというのです。字もへたくそだし、小学生か幼稚園児が書いたとしか思えませんよ」

    「当たり前だ。これはわしがガキの頃、よく遊んでいたトムキンソンが、ノートを破って書いたものだからな」

    「なあんだ。それで、その暗号文を、どうしろっていうんです?」

    「解読してほしい。そして、トムキンソンが宝を埋めた場所を特定してほしいのだ」

    「なっ、なんですって!」

     エドさんとクロエさんは、しげしげとその暗号文を、もう一度見直しました。

     暗号とひとくちにいいますが、世の中で最も難しい暗号は、子供が作った暗号なのです。例えば、子供たちの間で、『よし、これから、「ストロベリー・スリー」といったら、ジョンのうちに集まるんだぜ!』といったとしましょう。そうすると、「ストロベリー・スリー」がなにを意味するのか、その場にいて秘密を知らなければどうやっても解くことはできないのです! 軍隊の使う暗号も、この原理に由来していることは同じです。

     エドさんは、頭を抱えてこの「暗号文」をにらんでいましたが、ふっと思い出したものがありました。エドさんは、自宅のパソコンに向かい、しきりに検索をしていましたが、やがて顔をほころばせました。

    「やあ、あった、あったぞ!」

    「なにがじゃ、便利屋」

    「どこかで見た、と思ったら、この文字は、百年前の子供向け探偵小説に出てきた暗号をそのまま使っていたんですよ。わたしも確かに読みました。実に面白い本でしてね。探してみたら、フリーの電子書籍になっていましたよ。さっそく、該当箇所を印刷します」

     エドさんは文字を置き換えました。クロエさんは結果を見ていいました。

    「でも……あなた。たしかに、言葉にはなったけど、これ、小学生のなぞなぞみたいよ」

     三人は、頭を寄せ集めて、ああだこうだと謎解きを始めました。



     メースン老人の横で、エドさんはシャベルで懸命に穴を掘っていました。議論の結果、ここ以外にないと結論が出たのです。

    「そこらへんでやめてくれんか、便利屋」

    「え? まだ、なにも出てきませんけれど」

    「それはそうだ。トムキンソンは、なにも埋めていない。なにかを埋める前に死んでしまったからな。八歳。肺炎じゃった」

    「じゃあ、なぜ……」

    「ここに、わしがこしらえたこの小さな宝箱を埋めるためじゃ。ひと月後、わしの孫息子がこの村に遊びに来る。わしはその孫息子に、一生の宝、思い出をくれてやりたかった」

     エドさんは言葉もありませんでした。

    「わしも先がない。この目で、孫が、祖父もお手上げだった暗号文を解読して、宝を得るときの喜びに満ちた顔を見たかった……便利屋、その折は、孫息子を導いてほしい」

    「……喜んでその大任を果たしましょう」

     エドさんは背筋を伸ばして答えました。


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    ~ Comment ~

    Re: 土屋マルさん

    愛されてるなあエドさん。

    これからもこの調子で……いければいいんですけどね。

    明日の更新ぶんは出来上がっているけどすごく不安(^^;)

    素敵なお話でした。
    じーんと。
    エドさんはやっぱりイイですね(*´ω`*)テレ

    おおお、今回もじ~んと来ました。

    暗号を解いて導き出す行為って、それ自体が冒険のようにワクワクしますもんね。
    そのわくわくの先に、自分の想いと宝物。

    エドさん、大役、果たしてね。

    「宝のありか」とは、「宝が埋まっている場所」じゃなく「宝を埋めるべき場所」だったか!

    あいかわらずお見事です。

    素敵なお話ですね。
    お孫さんの宝探しで、一本児童書書けそうですね。



    と、いうわけでこの話から数年後の本編を待っております(笑)

    おはようございます^^

    凄く素敵なお話で、泣きそうになりました。

    あたたかい話しだなぁ~~
    エドさんシリーズは、本当に絵本のような癒しと暖かさがあります。

    きっと良い想い出が出来ますね^^
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