「範子と文子の驚異の高校生活(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)」
範子と文子の三十分的日常(ギャグ掌編小説・完結)
範子と文子の三十分的日常/二月・試験を終えて
試験会場となった都内のビルからは、疲労困憊した顔の、十数名の若者がばらばらと出てきた。いずれも知的な顔をしていたが、その中には、紅恵高校に通うふたりの少女の姿もあった。
「範ちゃん、口頭試問……死ぬかと思った……」
「わたしもよ、文子。なにを聞かれたか教えてくれる?」
「フランス第二革命と現代産業社会の関連性について。範ちゃんは?」
「アメリカ開拓時代に端を発する、現代に通じる諸問題の歴史的発展」
ふたりは、お互いに、ため息をついた。
「高校生には荷が重すぎるよこんな問題……大上先生としのちゃんの個人レッスンを受けて頭がいくらかよくなったと思ったわたしがバカだったみたい」
「ほかのみんなもまともに答えられなかったことを祈りましょう。とにかく、疲れたわ」
「どこかで休んでく?」
いつもなら、文子からのそんな言葉を聞いただけで心臓がばくばくいい始め、あらぬ妄想が頭を駆け抜ける範子であったが、今日はかなり疲れており、頭が働かなかった。
「どこで?」
「カラオケ。わたしが出すから」
「いいわよ。そういえば、文子と歌うのも、久しぶりね」
ふたりは宇奈月財閥系列の適当なカラオケボックスを見つけ、二時間ほど歌った。
もし奨学金が取れたらどこを受けるのか、という話は、どちらからも出てこなかった。
同じころ、宇奈月家の一角にある小さな建物では、忍子と駒子が真剣な表情で顔を突きつけあっていた。
「気は変わらないのか」
「まったく変わりません。あのような動きができるのは、人体と運動神経の奇跡です」
「別に舞を舞ったわけではないのだが。単に未熟者が鍛錬をしただけだぞ」
「ですから、そこまで肉体の使いかたを鍛えられた老師に、ぜひともお会いして、鍛えていただきたく……」
「同じ老師についたからって、天才と同じことができるとは限らない、そう姉はいうだろうな」
「覚悟のうえです」
忍子は人形のボタンを押した。
『カンベンな』
人形はしゃべった。
「そこをなんとか」
「わかった。なんとかしよう。あのふたりが奨学金を取ることができたら、北京大学への紹介状を、父上に書いてもらうことにする」
「大学ですって?」
「いわなかったか? 無名だが、老師は副業として北京大学に講師の職を持ち、スポーツ医学の研究をしておられるのだ。わたしは、自分の筋肉共同反応を調べるため、半分モルモットみたいにして留学したのが運のつきだった」
「はあ……」
「北京大学の入試は厳しいにもほどがあるぞ。とりあえず、九月の入学までには、まだぎりぎりの時間がある。その間、ひたすら、語学を中心とする基礎学力の向上から始めることにする。あのふたりが通う大学より、ある意味難しいからな」
「はい! ……で、範子と文子は、いったいどこに進むつもりなのですか?」
「それぞれから秘密裏に聞き出したところでは、別々の学部で、別々の大学に進むことになるが……ふたりとも、大丈夫なのか? こんな生活……」
「範ちゃん、口頭試問……死ぬかと思った……」
「わたしもよ、文子。なにを聞かれたか教えてくれる?」
「フランス第二革命と現代産業社会の関連性について。範ちゃんは?」
「アメリカ開拓時代に端を発する、現代に通じる諸問題の歴史的発展」
ふたりは、お互いに、ため息をついた。
「高校生には荷が重すぎるよこんな問題……大上先生としのちゃんの個人レッスンを受けて頭がいくらかよくなったと思ったわたしがバカだったみたい」
「ほかのみんなもまともに答えられなかったことを祈りましょう。とにかく、疲れたわ」
「どこかで休んでく?」
いつもなら、文子からのそんな言葉を聞いただけで心臓がばくばくいい始め、あらぬ妄想が頭を駆け抜ける範子であったが、今日はかなり疲れており、頭が働かなかった。
「どこで?」
「カラオケ。わたしが出すから」
「いいわよ。そういえば、文子と歌うのも、久しぶりね」
ふたりは宇奈月財閥系列の適当なカラオケボックスを見つけ、二時間ほど歌った。
もし奨学金が取れたらどこを受けるのか、という話は、どちらからも出てこなかった。
同じころ、宇奈月家の一角にある小さな建物では、忍子と駒子が真剣な表情で顔を突きつけあっていた。
「気は変わらないのか」
「まったく変わりません。あのような動きができるのは、人体と運動神経の奇跡です」
「別に舞を舞ったわけではないのだが。単に未熟者が鍛錬をしただけだぞ」
「ですから、そこまで肉体の使いかたを鍛えられた老師に、ぜひともお会いして、鍛えていただきたく……」
「同じ老師についたからって、天才と同じことができるとは限らない、そう姉はいうだろうな」
「覚悟のうえです」
忍子は人形のボタンを押した。
『カンベンな』
人形はしゃべった。
「そこをなんとか」
「わかった。なんとかしよう。あのふたりが奨学金を取ることができたら、北京大学への紹介状を、父上に書いてもらうことにする」
「大学ですって?」
「いわなかったか? 無名だが、老師は副業として北京大学に講師の職を持ち、スポーツ医学の研究をしておられるのだ。わたしは、自分の筋肉共同反応を調べるため、半分モルモットみたいにして留学したのが運のつきだった」
「はあ……」
「北京大学の入試は厳しいにもほどがあるぞ。とりあえず、九月の入学までには、まだぎりぎりの時間がある。その間、ひたすら、語学を中心とする基礎学力の向上から始めることにする。あのふたりが通う大学より、ある意味難しいからな」
「はい! ……で、範子と文子は、いったいどこに進むつもりなのですか?」
「それぞれから秘密裏に聞き出したところでは、別々の学部で、別々の大学に進むことになるが……ふたりとも、大丈夫なのか? こんな生活……」
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~ Comment ~
いよいよ、ですね。
次回最終回。
二人の進路はどうなるのか!?
二人の恋路の行方はいかに!?
二人はこのまま、わだかまりを抱えて別れることになるのか!?
次回、3月末の更新をお楽しみに!←なんで予告してるんだ私^^;
さみしいような、楽しみなような。早く読みたいような、終わらせたくないような。
ちょっと複雑な気分です。
次回最終回。
二人の進路はどうなるのか!?
二人の恋路の行方はいかに!?
二人はこのまま、わだかまりを抱えて別れることになるのか!?
次回、3月末の更新をお楽しみに!←なんで予告してるんだ私^^;
さみしいような、楽しみなような。早く読みたいような、終わらせたくないような。
ちょっと複雑な気分です。
- #7296 ミズマ。
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- 2012.03/01 08:04
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Re: ミズマ。さん
いつ発表されるかは……まあそのうち(^^)