「ナイトメアハンター桐野(二次創作長編小説シリーズ)」
2 闇は千の目をもつ(完結)
闇は千の目をもつ 5-3
コミュニケーションは取りたいものの、なんと呼びかけていいのやらわからない。わたしの頭は真っ白になった。
それを見逃す相手ではなかった。
うずくまるようにして空間それ自体をむさぼり食っていた男は、急にバネのように身をたわめると、ぱっとわたしに飛びかかってきた。
その瞳は、高宮秋子のいったとおり、確かに尋常ではなかった。
恨み。悪意。憎悪。その他その他、ネガティブな心理が煮詰められたような、どろりとした光を放っている。
わたしは叫び、思わず銃を振り回した。
馬鹿なことをしたものである。銃を持っていたのだから、そのまま引き金を引けばよかったのだ。散弾銃は近接戦闘における非常に有効な武器のひとつなのだから。
とはいえ、相手が散弾銃の間合いを超えてしまった以上、銃を棍棒代わりに振り回して戦うしかないのも事実である。
わたしにとって都合がいいことに、夢で作られた銃は、どれだけ激しく無茶な扱いをしようとも、暴発するということがない。夢での射撃は、装填という行為がなくとも、狙って撃つという思考に基づいて行われるのだから当然だ。
かくて、わたしは狂気の瞳をした男と殴り合いをすることになったのだが、この相手は意外と、というか、想像通り、というか、とにかく手ごわいやつだった。
常識的に考えれば、素手の相手に対し、こちらは鉄と木でできた立派な棍棒を持っている。圧倒的に優位といってもよかったはずだった。
しかし、相手の体力と敏捷性は、わたしの想像を超えていた。
激しく動いては、男はわたしの喉笛を噛みちぎりに来る。空間を食らうような男に喉を噛まれたらどうなることか。考えたくもなかった。
右腕に激痛が走った。
腕を噛まれたのだ。
噛まれた場所がどうなっているかなどと考える余裕はなかった。わたしはとにかく可能な限り、男の頭に集中的に打撃を与えた。
尋常な人間なら、頭蓋骨陥没とまではいかないまでも、脳震盪でふらふらになるのではないかと思われるほど、わたしは殴りに殴った。
ほとんどやけくそになっていたせいか、腕は確かに痛いものの、あまり気にはならなかった。
左脚に激痛。倒れこんだ男が、倒れながらもわたしの足首に噛みついたのだ。
わたしは散弾銃を逆手に握ると、地面に杭でも打ち込むかのように男の頭に銃床を振り下ろし続けた。
ようやく男の頭が足首から離れた。
わたしの足はまだ動いた。
それを見逃す相手ではなかった。
うずくまるようにして空間それ自体をむさぼり食っていた男は、急にバネのように身をたわめると、ぱっとわたしに飛びかかってきた。
その瞳は、高宮秋子のいったとおり、確かに尋常ではなかった。
恨み。悪意。憎悪。その他その他、ネガティブな心理が煮詰められたような、どろりとした光を放っている。
わたしは叫び、思わず銃を振り回した。
馬鹿なことをしたものである。銃を持っていたのだから、そのまま引き金を引けばよかったのだ。散弾銃は近接戦闘における非常に有効な武器のひとつなのだから。
とはいえ、相手が散弾銃の間合いを超えてしまった以上、銃を棍棒代わりに振り回して戦うしかないのも事実である。
わたしにとって都合がいいことに、夢で作られた銃は、どれだけ激しく無茶な扱いをしようとも、暴発するということがない。夢での射撃は、装填という行為がなくとも、狙って撃つという思考に基づいて行われるのだから当然だ。
かくて、わたしは狂気の瞳をした男と殴り合いをすることになったのだが、この相手は意外と、というか、想像通り、というか、とにかく手ごわいやつだった。
常識的に考えれば、素手の相手に対し、こちらは鉄と木でできた立派な棍棒を持っている。圧倒的に優位といってもよかったはずだった。
しかし、相手の体力と敏捷性は、わたしの想像を超えていた。
激しく動いては、男はわたしの喉笛を噛みちぎりに来る。空間を食らうような男に喉を噛まれたらどうなることか。考えたくもなかった。
右腕に激痛が走った。
腕を噛まれたのだ。
噛まれた場所がどうなっているかなどと考える余裕はなかった。わたしはとにかく可能な限り、男の頭に集中的に打撃を与えた。
尋常な人間なら、頭蓋骨陥没とまではいかないまでも、脳震盪でふらふらになるのではないかと思われるほど、わたしは殴りに殴った。
ほとんどやけくそになっていたせいか、腕は確かに痛いものの、あまり気にはならなかった。
左脚に激痛。倒れこんだ男が、倒れながらもわたしの足首に噛みついたのだ。
わたしは散弾銃を逆手に握ると、地面に杭でも打ち込むかのように男の頭に銃床を振り下ろし続けた。
ようやく男の頭が足首から離れた。
わたしの足はまだ動いた。
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