「ナイトメアハンター桐野(二次創作長編小説シリーズ)」
2 闇は千の目をもつ(完結)
闇は千の目をもつ 6-3
「『闇は千の目をもつ』?」
高宮秋子は首をひねった。
「それって、『夜は千の目を持つ』の間違いじゃないんですか?」
「いえ。……『闇』です」
わたしは記憶をあらためた。
「高宮さん、そちらの『夜は千の目を持つ』とは、なんですか?」
「ウィリアム・アイリッシュという作家の書いた小説です。あたしは読んだことありませんけど」
「道徳さんは」
「あの男なら、読んだことあるかもしれませんが、知りません」
わたしは脳内のメモに、ウィリアム・アイリッシュと彼の小説のことを記載した。さっそく本屋に注文してみなければ。
「桐野先生、その『闇は千の目をもつ』とは、いったい? ……あたしの夢にかかわりのあることですか?」
「いや、直接的な関係はないんですけども……」
わたしはいいよどんだ。常識的に考えれば、高宮秋子に話して余計な不安感をあたえたりするのはまずかろう。
しかし、わたしの顔が裏切ってしまっていた。
「あの男がなにかしたんですね」
こうなったら話さざるを得ない。
「たいしたことじゃありません。わたしが飲んでいたバーで、道徳氏が行き倒れたとき、氏がわたしに『闇は千の目をもつ』という表題の私家版……だと思うんですが……の本を託していったというだけのことですよ。なにか、道徳氏があなたの夢に現れたことと関係があるのかと思い、訊ねただけです」
「なんだ」
高宮秋子は、ほっと息を吐き出した。
わたしは額をさすった。
「なんだ、と安心なされるのも危険かもしれません。わたしはあなたの夢の中で道徳氏を倒しましたが、それがあなたの夢見をよくするかはまた別の問題です。だから、できるだけ情報が必要なんですよ」
「確かに、そのとおりですわね」
高宮秋子はうなずいた。
「高宮さん。わたしのことは、どこでお聞きになりました?」
「姉からですけど……どうして?」
「道徳さんも、わたしを名指ししてきたということは、同じところから聞いた可能性があります。わたしがこうして診療所を構えたのは、そう遠い昔の話じゃないので」
「あの男がどこから聞いたかなんて、あたしにわかるわけがないじゃないですか! でも、もしかしたら、あの男、姉に逢っていたのかしら」
「姉とは?」
「T大の大学病院で働いている、看護婦の島田春江です。先生、ご存知じゃ?」
高宮秋子は首をひねった。
「それって、『夜は千の目を持つ』の間違いじゃないんですか?」
「いえ。……『闇』です」
わたしは記憶をあらためた。
「高宮さん、そちらの『夜は千の目を持つ』とは、なんですか?」
「ウィリアム・アイリッシュという作家の書いた小説です。あたしは読んだことありませんけど」
「道徳さんは」
「あの男なら、読んだことあるかもしれませんが、知りません」
わたしは脳内のメモに、ウィリアム・アイリッシュと彼の小説のことを記載した。さっそく本屋に注文してみなければ。
「桐野先生、その『闇は千の目をもつ』とは、いったい? ……あたしの夢にかかわりのあることですか?」
「いや、直接的な関係はないんですけども……」
わたしはいいよどんだ。常識的に考えれば、高宮秋子に話して余計な不安感をあたえたりするのはまずかろう。
しかし、わたしの顔が裏切ってしまっていた。
「あの男がなにかしたんですね」
こうなったら話さざるを得ない。
「たいしたことじゃありません。わたしが飲んでいたバーで、道徳氏が行き倒れたとき、氏がわたしに『闇は千の目をもつ』という表題の私家版……だと思うんですが……の本を託していったというだけのことですよ。なにか、道徳氏があなたの夢に現れたことと関係があるのかと思い、訊ねただけです」
「なんだ」
高宮秋子は、ほっと息を吐き出した。
わたしは額をさすった。
「なんだ、と安心なされるのも危険かもしれません。わたしはあなたの夢の中で道徳氏を倒しましたが、それがあなたの夢見をよくするかはまた別の問題です。だから、できるだけ情報が必要なんですよ」
「確かに、そのとおりですわね」
高宮秋子はうなずいた。
「高宮さん。わたしのことは、どこでお聞きになりました?」
「姉からですけど……どうして?」
「道徳さんも、わたしを名指ししてきたということは、同じところから聞いた可能性があります。わたしがこうして診療所を構えたのは、そう遠い昔の話じゃないので」
「あの男がどこから聞いたかなんて、あたしにわかるわけがないじゃないですか! でも、もしかしたら、あの男、姉に逢っていたのかしら」
「姉とは?」
「T大の大学病院で働いている、看護婦の島田春江です。先生、ご存知じゃ?」
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