ささげもの

    ぴゆうさんご復帰記念創作落語!

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    落語「待った」泡亭鰤津

     ぴゆうさんが休養を終えてブログに戻ってこられてまずはめでたしでございます。

     贈るものとてないので、代わりにわたくしが、馬鹿馬鹿しい話を一席。

     ええ、昔から、囲碁と将棋はニャン間の間で面白い知的ゲームとして楽しまれて参りました。知的ゲームですから、運はいっさい絡まない。実力だけがものをいう世界でございます。

     同じくらいの腕の持ち主どうしがやればこれ以上楽しいものはないですが、中にけっこう強いやつがいる。無人の荒野を行くがごとく勝ちまくり、誰もかなうやつがいない。

     腹吉というこの猫も、そういった、将棋に病膏肓なニャン間のひとりであります。ありますが、その嫌みったらしいこと。

    「ニャンですかこの駒は。あれほど、柘植の木を使いなさいといっているのに」

    「待ったは許しませんよ。待ったなんてするのは、よほどの猫でなしです」

     しまいには、家の戸口に看板を立てて、「村一番の名人腹吉。待ったをしたものはかつおぶし二十本を置いていくこと」なんて書く始末。

     こんなやつでもこの村では、村に一軒しかない雑貨屋の主、なくてはならないニャン間でございます。将棋を除けば悪いニャン間でもない。

     とはいえなんとかしてぎゃふんといわせたいのも事実。村の猫たちはない知恵を絞って考えましたが、ない知恵はない。

     そうしていると、外から子猫たちの遊ぶ声が聞こえてきた。

    「じゃーんけーんぽん! あっ、また作坊の勝ちだ。作坊、じゃんけんだけは強いなあ」

     そのとき、大人猫の頭に、なにか稲妻みたいなものがびかびかっと走った。これだっ、てんで周りの猫たちに相談をします。これは面白い、と周りの猫たちも賛成し、含み笑いをしながらそれぞれの家に帰る。

     次の日。作坊の家にでっかい看板が立てられた。

    「将棋ではこの村でいちばんの名人作吉。待ったをしたものはかつおぶし三十本を置いていくこと」

     さあ、この看板を見た腹吉、大いに怒った。作吉というとあの、五つにもならぬ子猫ではないか。将棋名人を名乗るとは片腹痛い。こてんぱんにやっつけてやる、と戸をがらがらっと開けた。

    「作吉! 将棋名人だったら、わしと勝負せい!」

     そういったとたん、どこに隠れていたのか、大人猫たちがわらわらと入ってきた。

    「おっ! 腹吉、勝負をするのか!」

    「名人戦だな!」

    「決まりは当然、読んだんだろう?」

     少しばかり不安になった腹吉が後ろを振り返ると、馬鹿でかい字で、

    「じゃんけんに勝ったものが一手指す」

     と書いてある。

     はめられたのか、と気づいた瞬間、将棋盤を挟んだ上座に作坊が座った。

     腹吉はええい、と下座に座り、じゃんけんに勝てばいいんだろう、と覚悟を決めた。

     作坊は手を振り、

    「じゃーんけーんぽん!」

     作坊の勝ち。歩を進めて角道を開けた。

     腹吉が駒に手を出す前に、またばかでかい声で。

    「じゃーんけーんぽん!」

     作坊の勝ち。角が三列の、敵陣の歩を取りました。馬になります。

    「王手!」

     じゃんけんに勝てばいいんだろう、勝てば! と、腹吉はこぶしを握りしめた。

    「じゃーんけーんぽん!」

     またも作坊の勝ち。角に手を触れた瞬間、腹吉、思わず、

    「まっ、待った!」

     そう叫んではっと気づく。見物ニャンたちは大爆笑でございます。

    「かつおぶし三十本! 三十本だぞ!」

    「忘れたたあいわせねえ」

     腹吉はぶるぶる震えました。

    「おじちゃん、かつおぶしはなしでいいよ」

     作坊はそういうと、盤から手をどけました。そのまま腹吉の前で頭を下げ、

    「かつおぶしの代わりに、おじちゃん、おいらに将棋を教えておくれよ。おいらも、普通の将棋で強くなりたいよ」

     腹吉は、自分のしてきたことを思い出し、はらはらと涙をこぼしました。

     翌日、作坊の家に、極上のかつおぶし三十枚の入った箱が運びこまれ、腹吉の家からはあの看板が消えました。そのかわりに、「将棋教えます」と書かれた紙が貼られ、雨の日には子猫たちでいっぱいになったそうでございます。

     後に猫国でも歴史に残る将棋の大名人、作吉が初めて将棋を指したときのお話でございました。

     
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    ~ Comment ~

    Re: tokosantanさん

    楽しんでいただいてありがとうございます(^^)

    ほんとうはショートショートを書こうと思っていたのですが、どういうわけか落語に(^^;)

    一時期、本気でぴゆうさんのことを心配していたので、本格的復活を聞いた時はうれしかったなあ。

    ちょっと文章にぎこちないところがあるのは、スマホで書いたからです。キーボードのほうが楽だ(^^)


    またあのかわいいイラストと、ふたりの冒険を読ませてくださいね。

    こんにちは

    いいお話でした。

    じゃんけんって大人がやると、プライドが高い人ほど熱くなるというのは、なるほどと思いました。
    大分前ですが、5円賭けて、多くの人とランダムにあたって3回勝負で行った時には、
    かなりみんな熱くなったですよ。わたしは間もなく負けてしまいましたけど、
    頂点に立った人を凄いなーと思って仰ぎみましたねー。

    失礼しました、ながながとおしゃべりをしてしまいまして。

    ぴゆうさんもお元気そうですね。
    コメもいいですね。

    遅くなりましたが、リンクありがとうございます。
    私もリンクさせていただきました。
    私は今更新も滞りがちですが、またブログも描いていきたいと思いますので、
    これからもよろしくお願い致します。

    Re: ぴゆうさん

    それは楽しみであります。かわいく描いてくださいね(^^)

    ちなみに、この「じゃんけん将棋」、バカバカしいゲームではありますが、やっているとものすごくアツくなります。プライドの高い人間ほどアツくなります。プライドの高い友達がいたらぜひやってみてください。そりゃあもう、じゃんけんに三連勝したら大山名人にも羽生七冠にも勝てるんですから(笑)

    おおーー
    ニャンて素敵な一席。
    堪能させて頂きました。
    作吉のニャン情たっぷりの逸話。
    いい話です。

    休みの間、ない知恵を絞りお波が登場する物語を書きましたです。
    中編のつもりでアップする予定でございます。
    舞台は菰傘村でございます。
    後はお楽しみに。

    ブログに戻ってきた気がします。
    やっぱ温かくていいところだなぁ〜
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