昔話シリーズ(掌編)

    大金持ちと争いの島の昔話

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     わたしはテレビをつけた。見るだけで気が重くなる男が、気の重くなることを叫んでいた。そういえば昔、こんな話を聞いた。昔、昔……。



     昔、昔、ある国に、ひとりの大金持ちが住んでいました。大金持ちは、自分の住む国が、外国との間で、「争いの島」と呼ばれる島を取り合いしているのに腹を立てていました。

    「国の連中は、みんな腰抜けだ。話し合いでなんとかしようとしているなんて。わしが王様なら、もっとこう、がつんと……そうだ。わが国がもめているあの島を、全部わしが買い取ってしまおう」

     大金持ちは王様に話をし、黄金三千枚で、「争いの島」を全部買い取って、自分の別荘を建てました。

     大金持ちは「争いの島」に建てた別荘に住み、平和のうちに問題を解決したことに満足しました。

     そのとき、海の向こうから、重武装した隣国の艦隊がやってきました。油断していた大金持ちとその一党は、たちまちのうちに全員、殺されるか捕まるかしてしまいました。

     隣国艦隊の指揮官に、大金持ちは抗議しました。

    「この島は、わしが王様から黄金三千枚で買ったのだ。そうである以上、この島はわしのものだ」

     指揮官は答えていいました。

    「この島は、正当な持ち主である、わが国の王様からこのわたしが黄金四千枚で買ったのだ。だから、この島はわたしのものだ。だいたい、国の領土というものが、金くらいのもので手に入るものか。お前たちが王様と呼んでいる、あの不逞の男が占拠しているわが国のものであるべき国土全部、わたしがわたしの国の王様から銅貨三枚で買えば、お前の国の人間は、所有者であるわたしの前に城門を開くのか」

     大金持ちは叫びました。

    「わしの黄金は、わしの財産はどうなるっ!」

     指揮官は憐れむように大金持ちを見ると、剣を抜きました。

    「お前が死んでから、ゆっくりといただくさ」

     斬り落とされた大金持ちの首は、持ち帰られて辻にさらされ、世界中の笑いものになったということです。



     テレビでは、まだあの男がなんだかんだしゃべっていた。金銭は武力の前には無力で、しかし武力の行使はお互いに癒しがたい傷を残すから、残された方法は粘り強い交渉しかないという、子供でもわかる歴史の教訓がなぜわからないのだ。辟易してわたしはテレビを消した。疲ればかりが残った。
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    ~ Comment ~

    Re: LandMさん

    ブラックというよりもかなり危険な時事ネタです。これを書いたときには炎上を覚悟しました。

    炎上していないということは、危険でもなんでもなかったということで、拍子抜けしたようなほっとしたような……。

    う~~む。
    なかなかブラックネタですね。
    戦いはなくならないものですけどね。
    どういう形態で戦うかはともかく。
    裁判なり。
    本物の闘争なり。
    色々ありますよね。
    • #8343 LandM(才条 蓮) 
    • URL 
    • 2012.06/17 20:35 
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