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    名探偵・深見剛助(冗談謎解きミステリ掌編シリーズ)

    10の31乗分の1秒の断裂

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     上越新幹線で新潟まで行く旅のお供に、キオスクで「名探偵・深見剛助」の最新刊を買った。タイトルは「10の31乗分の1秒の断裂」密室での殺人が出てくるが、基本はアリバイ崩しものらしい。

     指定席に座り、落ち着いた気分でわたしはページを開いた。

    『そのものいわぬ死体は、縦3.5126986324メートル×横2.6358756146メートル×高さ2.154269736421メートルのコンクリート製の部屋の真ん中に倒れていた。』

     わたしは目をごしごしとこすった。

    『死体の左足の爪先から、施錠された扉までは0.563421897658メートルであった。扉は縦0.05618……』

     わたしは頭を抱えた。密室とアリバイ崩しの関係も、タイトルの意味も、わかったような気がした。杞憂だといいのだが。

     杞憂ではなさそうだった。4ページ目で名探偵・深見剛助はじめ主要登場人物の身長、体重、移動速度などが例のごとく神経症的な精度で記載され、6ページ目であの言葉が出た。

    『深見剛助は叫んだ。「この屋敷に集まった人間の誰もが動機を持っていた。だが、その全員に、10の31乗分の1秒という時間の壁が立ちはだかっているのです。10の31乗分の1秒の断裂が!』

     隣に並んでいた「KEEP OUT」という本にしておくべきだっただろうか。いや、わたしは本格謎解きミステリのファンだ。見ていろ、深見剛助よりも早く謎を解いてやる!

     わたしはスマートホンで関数計算のサイトを開き、メモ紙を片手にこの頭痛がしてくる小説に挑んだ。

     長野県を出るころには、疲れ果ててどうでもよくなり、単にページをめくるだけの機械のようになっていた。

     いよいよ名探偵が謎解きに……。

    『「そうか! わかったぞ!」

     「深見さん、なにがわかったのですか?」

     「誤差だ! 犯人は「誤差」を利用したんだ!」』

     ……ぷつん。

     新幹線は新潟駅についた。わたしは、迷わずトイレに行くと、汚物入れに本を叩き込んだのだった。


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    ~ Comment ~

    Re: 椿さん

    このバカネタを思いついたとき、シリーズは本格的にスタートしました。まさかあんなに書くとは思わなかったけど(^_^;)

    個人的にはアリバイ崩しって好きじゃないんですよ。それなら密室のわかりやすさを採るほうで。

    でもなかなか書けないもんです密室殺人もの……。

    NoTitle

    全編一気読みしてしまいましたが、全部に感想付けるとイヤガラセになってしまいそうなので断腸の思いで特にハマったところにお邪魔いたします。

    気が遠くなりそうですが、何か気になりすぎるこの作品。
    ダイジェストではなく全編を読んでみたくなります。
    しかし、やはり読み終わる前に投げ捨てたくなるかもしれない(笑)

    Re: limeさん

    もしかしたら紅恵美探偵よりも事件を解決しているかもしれない深見剛助。カテゴリーを独立させようかなあ(笑)

    ちなみに、「秒単位でのアリバイ崩し」が出てくる本は、実際に存在します。図書館に頼んでほかの図書館から取り寄せてもらおうかとも思いましたが、あのアリバイ崩しの第一人者である鮎川哲也先生をして「一回読んだだけではよくわからなかったが、二回読んだらわかった。しかし三読目でまたわからなくなった」といわせたほど難解なロジックの作品らしく、怖くて手が出せません(^^;)

    びっくりしたああ

    真剣に読んでたら・・・途中でぶっ飛びましたww。
    ああ、びっくりした。心臓に悪いですw でも、なんか嬉しいですね!ありがとうございます^^

    それにしても、さすが深見剛助!
    誤差かい。

    10の31乗分の1秒なんて、宇宙創生のプランク期の図解でくらいしか、見たことない数字ですね(笑

    私もその本、ブックオフに持って行くのも躊躇うかもしれません。
    でも、深見剛助の次の新刊本が待ち遠しいですw

    Re: しのぶもじずりさん

    思いついたものの使い道のない冗談ミステリのバカネタは、深見剛助探偵に一任しています。

    お暇でしたら、ミステリカテの、「名探偵・深見剛助 最後の事件」と「史上最大の密室」もどうぞ(笑)。

    仲間褒めみたいでなんですが、limeさんの「KEEP OUT」は、悔しいけれど面白かったです。だからゲスト出演させてもらいました。ええもちろん無断です。(笑)

    迷わず「KEEP OUT」にしておくべきでしたね。お奨めです。

    窓の外を流れる風景に、素敵な謎があったかもしれないのに、もったいない事をしました。

    捨てる気持ちが 分かります。

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