FC2ブログ

    名探偵・深見剛助(冗談謎解きミステリ掌編シリーズ)

    謎のダイイング・メッセージ

     ←エドさんと緑の森の家・6月24日 →家族丼
    「殺害されたのは竹ノ塚柔(やわら)、二十九歳、男です、深見さん」

     赤塚刑事は名探偵である深見剛助のそばでそういった。

    「噂は聞いてますよ。天才の名をほしいままにしていた前衛彫刻家。確かニックネームがありましたね」

    「完成するまでなにを作っているのか誰にもわからない男」

     赤塚刑事はそういって手帳を閉じ、天を仰いだ。

    「あの男は確実に犯人を見ているんですがねえ」

     深見剛助もうなずいた。

    「ご丁寧に、ダイイング・メッセージまで残していますね。それも自分の作品として」

    「だから困っているんです。わかるでしょう? 深見さん。完成するまでなにを作っているのかわからない男が残したダイイング・メッセージですよ。まったくなんてことだ!」

     深見剛助は窓の外を見た。

    「で、いつ完成するのです? 竹ノ塚柔の最新作は」

    「スペインにある例のガウディの大聖堂が完成するよりも間違いなく後ですな」

     赤塚刑事も、深見剛助が眺めている窓の外の工事現場を見た。そこでは、今からなにやら得体のしれないピラミッド級の大きさをしたモニュメントが作られようとしているのだった。

    「深見さん、お得意の推理で犯人を指摘してくださいよ」

    「やですよ。百年後かその後、『名探偵・深見剛助が間違った犯人を絞首台に送った事件』だなんて、歴史書に書かれてしまうんですよ。これじゃ名探偵じゃなくて冤罪事件の責任者ですよ。そもそも、最重要証拠物件が建設中で、裁判が成立するんですか?」

    「わたしに聞かないでくださいよ。もう、まったく、道理としてこんなわけのわからん事件は初めてです」

    「この作者の小説では、『後期クイーン問題』なんて無縁だと思っていたのに。ちきしょう、なんでこの被害者は、ダイイング・メッセージなんか残したんだっ!」

     まあこれも本格ミステリであるからには、最終ページまでに名探偵・深見剛助が謎を解くのだが、本当にそうなのかは誰にもわからない。登場人物を、そして作者をもあざ笑うかのように、今日も工事は進み、ダイイング・メッセージは謎のままなのであった。

    出版社からのお知らせ:「名探偵・深見剛助 前衛殺人事件」の発売日は百年後に延期されました。


    関連記事
    スポンサーサイト






    もくじ  3kaku_s_L.png 風渡涼一退魔行
    もくじ  3kaku_s_L.png 鋼鉄少女伝説
    総もくじ  3kaku_s_L.png ほら吹き大探偵の冒険(児童文学)
    総もくじ  3kaku_s_L.png 夢逐人(オリジナル長編小説)
    総もくじ  3kaku_s_L.png 残念な男(二次創作シリーズ)
    総もくじ  3kaku_s_L.png ショートショート
    総もくじ  3kaku_s_L.png 紅探偵事務所事件ファイル
    総もくじ  3kaku_s_L.png 銀河農耕伝説(リレー小説)
    もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
    もくじ  3kaku_s_L.png リンク先紹介
    もくじ  3kaku_s_L.png いただきもの
    もくじ  3kaku_s_L.png ささげもの
    もくじ  3kaku_s_L.png その他いろいろ
    もくじ  3kaku_s_L.png SF狂歌
    総もくじ  3kaku_s_L.png 剣と魔法の国の伝説
    もくじ  3kaku_s_L.png 映画の感想
    もくじ  3kaku_s_L.png 家(
    もくじ  3kaku_s_L.png 懇願
    もくじ  3kaku_s_L.png TRPG奮戦記
    もくじ  3kaku_s_L.png 焼肉屋ジョニィ
    もくじ  3kaku_s_L.png ご意見など
    もくじ  3kaku_s_L.png おすすめ小説
    【エドさんと緑の森の家・6月24日】へ  【家族丼】へ

    ~ Comment ~

    Re: 椿さん

    このネタは、「人を裁く」ということはどういうことかを描いた、SFの傑作短編「スロー・ガラス」から膨らませたものです。

    それがわたしの深見剛助の場合はこうなってしまうのだから、まあ作者の人格というものがうむむ(^_^;)

    NoTitle

    かつてこんなスケールの大きいダイイングメッセージがあったであろうか。遠大すぎる(笑)

    Re: 鍵コメさん

    わたしも記憶力がなくなってきて……たしかクイーンが悩んでいたのは、名探偵が全知全能の神のごとき裁判官みたいになってしまうことじゃなかったっけ……って、全然覚えていないことに気づいた!

    Wikipediaさまの力におすがりせねば!

    そこらへんを「現象学的本質直観」で開き直った笠井潔先生は、やはりただものではないと思う(笑)。

    管理人のみ閲覧できます

    このコメントは管理人のみ閲覧できます

    Re: 鍵コメさん

    後期クイーン問題って、名探偵が知らない新たな証拠が出てくる可能性がある以上は、作品世界内では名探偵の推理も単なる仮説の域を出るものではなく、読者にしかその推理の正当性を認識することはできない、というものではありませんでしたっけ。よく覚えてませんけど。

    この場合は、現在においてダイイング・メッセージが「作成途上にある」、中ぶらりんの事件ですから、うーんわたしにもよくわからん(^_^;)

    管理人のみ閲覧できます

    このコメントは管理人のみ閲覧できます

    Re: limeさん

    http://www.amazon.co.jp/gp/aw/cr/039913977X/ref=aw_d_cr_english-books?qid=1340630108&sr=8-11

    ゴーゴー! 根性とささやかな余暇と不屈の執念さえあれば大丈夫! だって浪人生時代のわたしでも「Jurassic park」を読めたんだから!

    ……たぶん。(無責任)

    あ、カスタマーレビューも一人増えてますよ。

    いいですねえ、深見剛助シリーズは。

    ややこしいことを考えなくても、楽しめる^^

    しかし、100年後かあ。リオスシリーズの5巻を読めない私には、この辛さは分かります。
    死ぬまでに読めないのかなあ・・・あれ。

    Re: ウゾさん

    「読者諸君への挑戦」ネタでは、深見剛助ものではないですけど、「究極」ともいえるバカネタをやってしまったので……。

    あれも深見剛助ものに改作しようかなあ。

     こんにちは。
    此れは… 「私は 読書諸氏に挑戦する。」と読者への挑戦状を書いて 逃げるしかないですよ。
    此れこそ 本格ミステリーの醍醐味と言ってみよう。
    管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

    ~ Trackback ~

    卜ラックバックURL


    この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

    • 【エドさんと緑の森の家・6月24日】へ
    • 【家族丼】へ