「弱肉雑食系(ラブコメ小説、不定期連載)」
    弱肉雑食系・カット1「よくあるタイプじゃない出逢い」

    7コマめ:ギャラリー

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     明日どころではなかった。

     ぼくがざるそばをなんとかすすっている間に安宅が連れてきたのは、五人程度の一団だった。いずれもむさい男どもである。彼らは、遠くの方からこちらを見てはひそひそと耳打ちし、耳打ちしてはこちらを見ていた。

    「ギャラリーが来ちまった」

     ぼくは頭を抱えた。彼女、幡豆椎葉は苛立っているようだった。

    「そこの!」

     女王にふさわしいでかい声で、彼女はその男どもにいった。

    「なにかいうことがあるのなら、近くに来なさい!」

     ギャラリー連は電撃か鞭か、それとも電撃鞭で打たれたかのように、びくっ! と跳ね上がると、そのまま逃げて行った。

    「さてと」

     彼女はステーキ丼をきれいに食べ終わってから、ぼくをまっすぐに見た。

     丸くて大きな目だ。なんとなく、パワーのようなものがきらめいているのを感じた。そりゃ、真っ昼間からステーキ丼を食べたりしたら、こんなパワーが生まれてもおかしくはない。

    「え、ええと、その、あのだから」

     ぼくは自分でもよくわからぬ言葉を発していた。この世に生を受けてからこれまで、ここまで他の人間と接近遭遇した経験はないからだ。人間や生物に違和感を抱く男にとって、これはファーストコンタクトのようなものであった。

     ちかっと頭が痛んだ。……風邪でも引いたのだろうか?

    「あのだからって、なに? とは聞かないことにするわ。あなた、わたしのほかに、彼女はいる?」

     ぼくはぶんぶんと首を横に振った。その眼光に籠った力がもたらす恐怖と恐慌が、ぼくに嘘をつく精神的余裕も度胸も奪い去っていた。

    「彼氏は?」

     ぼくは、さらにぶんぶんと首を横に振った。ぼくにそんな趣味はない。毛頭ない。

    「じゃ、問題は解決じゃない」

    「……へ?」

    「わたしがカノジョで、なんの問題もないじゃないっていってるの」

     もしこれが、この前のように、ぼくのホームグラウンドであるマンションで、二日酔いで苦しんでいる彼女を相手にしているのだったら、まだ理性的な判断や対決もできたかもしれない。しかし、食べるものからしてざるそばとステーキ丼、大学からして……ええいどうでもいい。とにかく、野生の虎を相手にして、徒手空拳で戦えるのは日本では加藤清正公くらいだ。

    「そ、そりゃ、そうだけど……」

     「人間」と向き合って、おろおろするぼくの前で、彼女は苛立った視線を横に向けた。

    「面白いお友達ね」

     ぼくはざるそばを噴いてしまうかと思った。安宅たちギャラリーが、物陰からこちらをうかがっていた。

    「あんな人たちといっしょじゃ、話せるものも話せないわ。場所を変えましょ」

    「場所を変えるっていっても、ぼくには午後の講義がある。外せない授業なんだ。それに、ぼくは、その」

    「その?」

     彼女は刃を、いや、八重歯を見せて笑った。

    「カレ、後悔するわよ」

     彼女は立ち上がり、丼を載せた盆を持って席を立った。

     ぼくはほっと息をついた。やはり、人間は嫌いだ。

     さて、次の「国文学概説史」だが、教室は何号室だったっけ? と、手帳のメモを見ようと思ったぼくは、さっきまでとは違う人の気配を感じた。

     安宅を含む五人の男たちが、ぼくを見下ろしていた。

    「鏑木くん」

     ぼくは両腕をがしっとつかまれた。

    「来てもらおう」

     ぼくは食器も片づけられずに拉致されたのであった。
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    Re: limeさん

    しおらしくなるようなやつじゃありません(笑)。

    ある意味登場人物みんな欠陥人間かもこの小説。

    こんなパワー欲しい。
    でも、ステーキ丼食べたら、胸やけがしそうで怖い^^;

    カノジョにも、苦手なものが?
    まさか、急にしおらしくなっちゃうとか、ないですよね??

    Re: 矢端想さん

    「はい(断言)」

    ……(笑)

    まあカノジョにも苦手なものがありますし。おいおい明らかになるはずですが。

    いいですねーいいじゃないか、このカノジョ!
    なかなか魅力的です。用心棒にもなってくれそうだしw

    ・・・それ、ひとごとだから言えること?
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