「弱肉雑食系(ラブコメ小説、不定期連載)」
弱肉雑食系・カット1「よくあるタイプじゃない出逢い」
21コマめ:ガールミーツボーイ
「さっきの質問に戻りますけど」
ぼくはまだぐらぐらしている頭に正常な思考を取り戻そうと努力していった。
「なぜ、カノジョはぼくを選んだんですか?」
「あなたが欠陥人間だからよ、カレくん」
ほめられているのかバカにされているのかわからない。ぼくのその思いに気づいたのか、舘冴子は苦笑いして続けた。
「どういうことかっていうと、あなた、カノジョを『女』として見なかったじゃない」
「は?」
「少なくとも、性欲の対象として見なかったそうじゃない。カノジョから聞いたわ」
……そういわれればそんな気がする。
「でも、それがどういう」
「カレくん、あなたといると安心できるそうなのよ。いわば、『絶対安全な男』というわけね」
「それじゃなんですか」
ぼくは呆れる思いだった。
「ぼくは、人畜無害なうえに、他人とのコミュニケーションに障害を抱えている欠陥人間だから、カノジョにとっての対男性恐怖レーダーには反応しない安全パイ中の安全パイだったってことですか」
「そこまで自分を貶めることもないと思うけど」
「結局はそういうことでしょう」
「まあね。でも、カレくん、あなた、悲観的になりすぎているようだけど、カノジョにとって、あなたはどんな人間に見えているのかわかる?」
「どんな人間?」
ぼくは考えたがよくわからなかった。
「ええと」
「運命の男性」
「ひえ?」
ぼくの顔はさぞや間抜けだったに違いない。
「本当の話よ。カノジョ、思い込みが激しいから、あなたのことを、天が引き合わせてくれた、運命的な彼氏だと確信したのね。あたしに話してくれたときの、カノジョの興奮ぶりは、よく覚えているわよ」
そういえば、ぼくのマンションから帰るときに、カノジョは、妙に上機嫌ではしゃいでいるように見えたけど……。
「それで」
舘冴子はぼくを興味津々な目で見た。
「カノジョとは、どんな話をしたの? ミダス王の話までしたってことは、カノジョ、とことんまであなたに自分の胸の内を明かすつもりよ」
「いや、それが……」
ぼくは口ごもりながら、半ばカノジョを置き去りにするようにして、飲み屋から叩き出されたという話をした。
聞いているうちに、舘冴子が握っている懐中電灯が、ゆるゆると動き出した。
「カレくん」
「はい?」
「あなた、最低ね。すぐにカノジョを探してきなさい」
「そんな、飲み屋の場所も覚えてないのに」
抗弁すると、その手の懐中電灯が目もくらむような速さで一閃した。
ぼくの前髪が二、三本、コタツの上にはらはらと舞い落ちた。
舘冴子はにこりと笑った。
「行くわね?」
ノーと答えたら全治三ヶ月どころか、よくて再起不能だろう。ぼくは弾かれたように部屋を飛び出すと、また扉を開けて靴を返してもらい、今度は本当に夜の街に飛び出した。
でも、どこから探したらいいんだ?
ぼくはまだぐらぐらしている頭に正常な思考を取り戻そうと努力していった。
「なぜ、カノジョはぼくを選んだんですか?」
「あなたが欠陥人間だからよ、カレくん」
ほめられているのかバカにされているのかわからない。ぼくのその思いに気づいたのか、舘冴子は苦笑いして続けた。
「どういうことかっていうと、あなた、カノジョを『女』として見なかったじゃない」
「は?」
「少なくとも、性欲の対象として見なかったそうじゃない。カノジョから聞いたわ」
……そういわれればそんな気がする。
「でも、それがどういう」
「カレくん、あなたといると安心できるそうなのよ。いわば、『絶対安全な男』というわけね」
「それじゃなんですか」
ぼくは呆れる思いだった。
「ぼくは、人畜無害なうえに、他人とのコミュニケーションに障害を抱えている欠陥人間だから、カノジョにとっての対男性恐怖レーダーには反応しない安全パイ中の安全パイだったってことですか」
「そこまで自分を貶めることもないと思うけど」
「結局はそういうことでしょう」
「まあね。でも、カレくん、あなた、悲観的になりすぎているようだけど、カノジョにとって、あなたはどんな人間に見えているのかわかる?」
「どんな人間?」
ぼくは考えたがよくわからなかった。
「ええと」
「運命の男性」
「ひえ?」
ぼくの顔はさぞや間抜けだったに違いない。
「本当の話よ。カノジョ、思い込みが激しいから、あなたのことを、天が引き合わせてくれた、運命的な彼氏だと確信したのね。あたしに話してくれたときの、カノジョの興奮ぶりは、よく覚えているわよ」
そういえば、ぼくのマンションから帰るときに、カノジョは、妙に上機嫌ではしゃいでいるように見えたけど……。
「それで」
舘冴子はぼくを興味津々な目で見た。
「カノジョとは、どんな話をしたの? ミダス王の話までしたってことは、カノジョ、とことんまであなたに自分の胸の内を明かすつもりよ」
「いや、それが……」
ぼくは口ごもりながら、半ばカノジョを置き去りにするようにして、飲み屋から叩き出されたという話をした。
聞いているうちに、舘冴子が握っている懐中電灯が、ゆるゆると動き出した。
「カレくん」
「はい?」
「あなた、最低ね。すぐにカノジョを探してきなさい」
「そんな、飲み屋の場所も覚えてないのに」
抗弁すると、その手の懐中電灯が目もくらむような速さで一閃した。
ぼくの前髪が二、三本、コタツの上にはらはらと舞い落ちた。
舘冴子はにこりと笑った。
「行くわね?」
ノーと答えたら全治三ヶ月どころか、よくて再起不能だろう。ぼくは弾かれたように部屋を飛び出すと、また扉を開けて靴を返してもらい、今度は本当に夜の街に飛び出した。
でも、どこから探したらいいんだ?
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- 22コマめ:ミス・グッドバーを探して
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Re: 矢端想さん
果たして泣ける話になるだろうか……。
人の涙腺の違いについては、かの傑作ギャグ漫画「課長バカ一代」において、「俺は『ウミガメの産卵』だな!」「自分は『カルガモの行進』です」「お前感覚がズレてないか?」「課長こそ」と交わされた対話が全てを語っている気がします。
人の涙腺の違いについては、かの傑作ギャグ漫画「課長バカ一代」において、「俺は『ウミガメの産卵』だな!」「自分は『カルガモの行進』です」「お前感覚がズレてないか?」「課長こそ」と交わされた対話が全てを語っている気がします。
こんばんは^^
24コマまで、あと少しですよ~~^^
奥手・トラウマを抱えたような2人の場合
積極的かつ強引な友人は、必要不可欠ですね^^
奥手・トラウマを抱えたような2人の場合
積極的かつ強引な友人は、必要不可欠ですね^^
Re: ダメ子さん
いちおうラブコメといってしまった以上、とにかくふたりに接点を作らないと。
しかし、この設定さえ思いつかなければわたしも気楽にショートショートを……(^_^;)
しかし、この設定さえ思いつかなければわたしも気楽にショートショートを……(^_^;)
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Re: YUKAさん
……導入部が。