名探偵・深見剛助(冗談謎解きミステリ掌編シリーズ)

    謎の被害者

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     その殺人事件の被害者の遺体は、身元が一切不明だった。使っていたネットカフェの名前は偽名で、これといった手がかりもない。捜査本部は、重苦しい雰囲気に包まれていた。

     顧問として招かれていた、名探偵・深見剛助は、被害者の爪の切り方に目を付けた。

    「これは、能登の一寒村に伝わる切り方ですね」

    「赤塚くん、すぐに飛んでくれ」

    「はい」



     数日後、疲れきった赤塚刑事が帰ってきた。

    「課長、収穫なしでした」

     うなだれる赤塚刑事に対し、課長は諭すようにいった。

    「うむ。調べてみたら、インターネットのサイトに、切り方のガイドがあったんだ。だが、赤塚くん、刑事というものは、靴の底をすりつぶしてまで歩くのが仕事だ」

     そのとき、ひとりの刑事がヘッドセットを外した。

    「深見さん、この訛りはなんでしょう」

     深見剛助はICレコーダの録音を聴いた。

    「そうですね、これは、九州は鹿児島県にある、人里離れた山村の訛りです」

    「赤塚くん、疲れているだろうが、すぐに飛んでくれ」

     課長の言葉に、赤塚刑事は素早く立ち上がった。

    「ただちに行きます」



     数日後。

    「例の山村に行きましたが、該当者なしでした」

     赤塚刑事の報告に、深見剛助はうなずいた。

    「そんなことだろうと思っていました。実は、あの後、被害者のパソコンから、被害者がインターネットの動画投稿サイトで、あの村の方言を記録した動画を熱心に見ていたことがわかったのです」

     深見剛助はなんの変哲もない手首の写真を取り上げた。

    「これは、北海道の根釧平野の小さな村に伝わる祭りの踊りでできるタコで」

    「赤塚くん」

    「は、はい、行って来ます」



     また数日後。

    「収穫なしでした」

    「やはりインターネットで踊りが全国規模に広がって」

    「またですか」

    「新しい手がかりを見つけました。被害者の襟元から、沖縄の小さな島で作られている繊維が」

    「赤塚くん」

    「ええー」



     またまた数日後。

    「収穫なしでした……」

    「ええ、あの繊維を使った織物は、ネット通販で誰でも買えるんです」

    「…………」

    「新しい手がかりが」

    「赤塚くん。赤塚くん?」

     深見剛助は倒れた赤塚刑事の身体を調べた。

    「過労ですね」

    「どうすればいいでしょう、深見さん」

    「しかたがありません」

     深見剛助は、重々しくいった。

    「推理することにします」

    新刊案内:「名探偵・深見剛助シリーズ」最新刊は、日本全土を駆けめぐってのトラベルミステリーと、安楽椅子探偵ものを融合させた野心作! 「ネット日本の殺人」にご期待ください!


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    ~ Comment ~

    Re: 椿さん

    このショートショートのもとになったのは、落語の小咄にある、

    「なに! 隣の家は金槌を使うと減るから貸さないというのか! ケチだねえ。しかたない、うちのを使おう……」

    というやつです。

    焼き直しにしてはうまくいった方だと思ってます(^^)

    NoTitle

    赤塚刑事、発想を変えるんだ! 公費で日本中を旅できる。いい身分じゃないですか!(しかし家族の下には帰れない;;)
    そして「仕方ないから推理する」って……深見さん、鬼ですか(笑)

    今は何でもネットで調べられるし、手に入っちゃいますね。
    横溝正史さんの時代は遠くなりにけり。

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    Re: ゆういちさん

    そちらにメールいたしました。

    届くのを気長に待ちます。どんな本なのかなあ~(^^)

    Re: limeさん

    「死んでないッ!」(赤塚刑事)

    こんばんはー

     トラブル……じゃなくてトラベルミステリーは西村京太郎さんを思い出しますね!

     喫茶店でコーヒー飲んだり、温泉でまったり捜査したりするあの空気感と京太郎先生の文体は好感を持っております。……そういえば祭りの果て郡上八幡は、郡上踊りが犯人探しのヒントになってたなもv-291

     あ、同人交換の件ですが、プレゼント企画を立ち上げましたので、記事内にあるメルアドに住所(郵便番号含む)や名前を記したメールをいただければ、郵送はこちら負担&実名でお送り致します!




    もう、あれですね、ご当地ならでは・・・ってのは、無くなりつつありますね。

    でも、じゃあなぜ、某ケンミンショーは、あんなに人気番組なんでしょう。むむ。

    深見剛助シリーズは、やっぱりいいですね。
    赤塚刑事、やすらかに・・・。

    Re: しのぶもじずりさん

    だから深見剛助シリーズは本屋に並ばないんです(笑)

    赤塚君たら、真面目過ぎ。
    途中で、温泉に入ったり、海で泳いだり、土地のグルメを堪能したり、適当に楽しめば良かったのに。
    トラベルミステリーの探偵さんなら、そういう読者サービスも必要よ。
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