「ショートショート」
    SF

    同工異曲

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    「敵数は?」

     艦隊司令の言葉に、副官の中佐は敬礼をした後で、てきぱきと答えた。

    「少なく見積もってもわが艦隊の半分、ということはありません。データの解析結果からすると、わが艦隊とほぼ同規模、と見ていいでしょう」

     艦隊司令は、にやりと笑った。

    「敵さんめ、われわれと最終決戦をする気だな」

    「そのことですが」

     中佐は姿勢を保ちながらいった。

    「こちらも、ほぼ同じ状況であります。この聖戦に、国家を維持するのに最低限必要な物資までも投入してしまったため、わが艦隊の敗北は、われらが種としての滅亡、ないしは原始への退化を意味します」

    「心配するな。われわれは勝つ」

     艦隊司令は、ニュートリノ検知器の示す敵の情報を、スクリーンから読み取り、不敵に笑った。

    「そもそも、われわれがあのような思い上がった奴らに負けるわけがない。われわれには、神がついている。よりにもよって、『万物の霊長』などと僭称するエイリアンごときに、われわれが負けると思うか? いいか、神が自分の似姿としてお造りになられたのは、われわれ、不定形生物なのだからな!」

     中佐は、こんなときに取るべき態度を心得ていた。

    「はっ、おっしゃるとおりであります」

     どろりとした身体をうねらせるように敬礼し、そう答えた裏で、中佐はこうも考えた。

    『向こうの艦隊にも、おれと同じことを考えているやつはいるのだろうか。まったくといって似ていない、いや、想像しただけで嫌悪の情に陥る身体の持ち主に、なぜ神は、細部までそっくりな、一神教的思想を与えたのだ。神は、もうちょっと、配慮してくれてもよかったんじゃないか? いや、神というやつは本当の馬鹿野郎で、馬鹿のひとつ覚えのように、こういう思考回路の知的生物しか、作れなかったんじゃないのか?』

    「なにを考えているのかね、中佐」

     中佐は反射的に答えた。

    「勝つことであります」

     あといくつかのステップを越えさえすれば、真に偉大な星間文明を築き上げられたはずの知的生物が、両者ともども仲良く滅亡するまで、たいした時間もかかりそうになかった。



    「もしライオンに神がいたら、ライオンは自分の姿に似せて神の像を刻むだろう」(古代ギリシャの詩人・宗教改革者・哲学者であるクセノパネスの言葉)
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    Re: ダメ子さん

    そうですね、小説に自分の考えの代弁者を登場……いえわたしはその(笑)

    有名人の持ってるブランド物のバッグを持つことも
    神を自分と同じ姿に作ることとも
    もしかするとあんまり変わらな…
    おっと、これ以上言うと神への冒涜になりそうです
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