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    世界はふたりのために

     ←きみたちはなぜぼくをそこまで知っているのか? →自炊日記・その8
     モニターを通して、彼は何よりも愛しい顔を眺めた。

    「碧の姫よ、あなたは美しい。あなたより愛しい人は、この世には存在しないでしょう」

     モニターの中の姫君も、その頬を染めた。

    「わたしが、紅の王子、あなたのような素敵なかたから、そんな言葉をいただいたら、この心臓が嬉しさで破裂してしまうかもしれませんわ」

     ふたりは、碧と紅、ふたつの国の王位継承者として、盛大に催された舞踏会にて出会い、互いに一目で恋に落ちたのだった。だがしかし、碧と紅の国は互いに争う国でもあった。ふたりの恋は、愛は、とうてい許されるものではなかったのである。

    「ぼくの愛は変わらない」

    「わたしの愛も」

    「そう。これからぼくたちふたりが、この世界を、よりよい方向へ変えてゆくんだ。ぼくたちは、ひとつの国の国王夫妻として、全ての争いを終わりにするんだ!」

     ふたりには、そのときの光景が目に見えるようだった。

    「しばらくの別れだよ」

    「そうね、すぐに済むでしょう」

    「手は抜かないからな」

    「こっちも全力を尽くすわ」

    「愛してる」

    「その十倍愛してます」

     ふたりは通信……碧の国と紅の国の国家元首同士を結ぶホットラインを切った。

     さて、と紅の王子は考えた。姫は、どんな手を打ってくるかな? こっちは碧の砦の島々を攻撃することになっているのだが……。

     それぞれに国王を暗殺したふたりの独裁者は、いまや本物の兵器を、兵士を、そして国土を使ってのチェス・ゲーム、全ての戦争を終わらせるためのぞくぞくするような総力戦というゲームを始めようとしていた。

     この世界には碧の国と紅の国しか存在しない。

     だから全てが終わったときには、世界はひとつになっているはずだ。それが論理的帰結というものだ。

     世界はふたりのために。世界はふたりのために。
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    ~ Comment ~

    Re: ダメ子さん

    それをいうならわたしだって今ごろ教授に……できもしないことをいってもしかたがないか(^_^;)

    私もこれぐらいできれば今頃社長に…
    ウソです、ごめんなさい
    今頃、東京湾に沈められてます

    Re: たかのゆき先生

    まったくです。

    このふたりは、「困難なうえに長い道」を歩くのが嫌だったのでしょう。

    世界は自分のために奉仕する存在でしかない、と考えるトップは災厄ですね。たとえば某都知事。とほほ。

    死に逝く人々はたまったもんじゃない・・・・。
    独裁者が愛し合ってる事が国民目線で見ると
    救われない・・・・・。

    Re: YUKAさん

    わたしが政治や国家の指導者に対してシニカルになってしまうのは、根っこのところで不信を抱いているからかもしれません。

    なんか極東が火薬庫になりつつある今、不信感は増すばかりであります。

    Re: 山西 左紀さん

    ぶっちゃけいってしまえば、そのまま結婚しました、これからはひとつの国です、では、国民感情が納得しないからです。

    どうせ国民の同意が得られないなら、殺してしまえホトトギス。どうせ死んでしまうなら、楽しくやろうぜホトトギス。

    わぁ~~~
    超論理的不毛な世界。。。

    楽しそうな2人がまた怖い(笑)

    困ったものです。

    なぜそんな無駄なことをするのでしょう?
    やっぱり、ぞくぞくするから…なのでしょうか。
    やれやれ……
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