「エドさんとふしぎな毎日(童話)」
    エドさんと緑の森の家(童話掌編シリーズ・完結)

    エドさんと緑の森の家・9月30日

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     テーブルで、エドさんは難しい顔をして考え込んでいました。

    「どうしたの、あなた?」

     クロエさんは、エドさんの大好物であるキノコのスープが入った鍋をテーブルの上に置き、皿に取り分け、パンといっしょに出しました。もちろん、グレンのぶんも忘れてはいません。

    「グレンのことなんだが、どうして、きみがあの子のことを描けないのか、ずうっとわたしは考えていたんだ」

     エドさんは、スープには手をつけずに腕を組みました。

    「あの子を写そうとしたカメラは、全部が全部壊れてしまう。それはグレムリンの力ということでいいとしよう。しかし、だからといって、きみがあの子の絵を描けないのは、グレムリンの力ということでは説明がつかない。そうじゃないか? きみは、グレンを描くときに、絵筆や木炭を握るだけで、別に機械を使うわけじゃないんだから」

    「そういわれれば、そうね……」

     グレンはスープの小皿に顔を突っ込むようにして飲んでいます。エドさんはそんなグレンに優しい目を向けてから、クロエさんに向き直りました。

    「では、なぜ、きみはグレンを描くことができないのかだけど、わたしたちは、思い込みにとらわれていたんじゃないのかな」

    「どういうこと?」

    「ひとつの前提を、ひっくり返してみるんだ。つまり、グレンを写そうとしたカメラが壊れるのは、グレムリンの力じゃない、って」

     クロエさんはぽかんと口を開けました。

    「そんなことって……」

    「いいから、わたしの話を聞いてくれ。もし、わたしの仮定が正しいとしたら、どうなるか? 答えはこうなる。『グレンの姿を絵や写真に撮られたくない誰かがいる』ということだ。魔法だか超能力だかは知らないけどね。もし、そうだとすると、いったいなぜ、そんなことをしなくてはならないのか?」

     いつしかクロエさんも真剣な表情になっていました。

    「なぜなの?」

     エドさんは天を仰ぎました。

    「わからない。そこまで考えて、いつも壁にぶつかってしまうんだ。わたしがもうちょっと賢明だったなら、すぐにでもわかるだろうことなのに」

    「あの悪魔……なんていったかしら?」

    「地獄の国税局かい?」

    「そうよ。その悪魔が、グレンを執拗に狙っていることと、なにか関係があるのかしら」

    「その可能性はじゅうぶんにある。だがしかし、悪魔が狙うことと、グレンの絵や写真を残すことを妨害することに、いったいなんのつながりがあるのか」

     ふたりは黙り込みました。

    「あなたの話では、悪魔が現れたのは、アリントン夫人といっしょに伯爵の島へ行ってからよね」

     エドさんは目をつぶりました。

    「だからといって、伯爵やアリントン夫人を疑う気にはなれないよ」

    「わたしも、あの人たちは信じていいと思う。だけれど、あの旅の途中で、わたしたちは、無意識になにか、悪魔に気づかれることをやってしまったんじゃないかしら」

    「ううん」

     エドさんは考え込みました。クロエさんも考え込みました。

     小皿のスープを飲み終えたグレンが、げっぷをしました。その音に、エドさんとクロエさんは、はっと目を上げて、同時に笑い出しました。

    「朝食前に、いくら考えたところでわかる話じゃなかったな」

    「そうよ。あなた、わたしたちも飲まないと、スープが冷めるわ」

     ふたりはスープとパンの朝食を食べ始めました。

    「でも、あなた……」

    「ん?」

    「あなたの考えが正しいとして、その力は、グレンによこしまなことを考えているものの力なの? それとも、グレンを救けようとしているものの力なの?」

     エドさんは首を振りました。

    「わからない。わたしとしては、その力が、グレンを守ってくれる存在によるものだと願うだけだ」

     エドさんがつぶやくようにそう答えたとき、部屋に、なにものかの笑う、『ひひひひひ』といういやらしい声が響き渡りました。

     ふたりは、無言でスープを飲み、それぞれの日常の仕事に取り掛かりました。それも悪魔に対するひとつの戦いの方法なのです。


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    Re: 椿さん

    いやー昔の作品を読んでいただけると嬉しいものですね。(^_^)

    この小説も、あと1クール13回です。どうぞよろしくお願いします。

    NoTitle

    やっとエドさん読みに来られた(^-^;
    グレンがずいぶんと狙われていますね!
    悪魔たちの目的は何なのでしょう? また読みにまいりますね。

    Re: けいさん

    それを書いてしまったらミステリでなくなってしまう(^_^;)

    実はグレンは……(音声途絶)

    うーん。グレンが狙われている。なぜ。
    グレンが描けない。なぜ。むむ?
    エドさんとクロエさんがどう守って、どう解決していくのか楽しみです。

    Re: YUKAさん

    どうしてわたしは、普通のおとぎばなしにしようと思って始めたはずのものまでミステリにしてしまうのだろうか(^^;)

    これもエドさんの人徳に違いない(笑)

    エドさん

    なるほど、そうか。

    私もグレンの力だと思い込んでました。

    邪なもの、守るもの。

    どちらなのか。

    う~~ん、面白い^^
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