「ナイトメアハンター桐野(二次創作長編小説シリーズ)」
2 闇は千の目をもつ(完結)
闇は千の目をもつ 10-3
わたしはなんとか笑顔を作ったものの、椎葉老婦人の小さい身体はより小さくなった。
「すみませんのう……」
「ばあちゃん、身体が不調だったら、どんな小さなことでも、もっとどんどん先生にいうべきだよ」
老婦人の孫らしい二十歳くらいの青年が叫んだ。
わたしもうなずいた。
「その言葉に、間違いはありません。どうあれ、体調が変化したようでしたら、積極的におっしゃってほしいものです」
とはいえ、ただの風邪で呼びつけるのはなしにしてほしい。
「先生?」
青年がいった。
顔色を読まれたか。わたしは、慌ててなんとか真面目な表情を作った。努力だけは認めてほしいものだ。
幸いなことに、青年も老婦人も、わたしをそれ以上追及することはなかった。
「そうですね、椎葉さん」
妙な一瞬の沈黙を破ってわたしは問いかけた。
「どのような夢をごらんになられるのですか? 詳しくお話しください」
「そうですのう……」
老婦人は、身をぶるっと震わせた。
「夢に、変な男が出てきたんですじゃ……」
「どんな、変な男ですか?」
昨日の切り裂きジャックも充分変だったが。
「それが、不気味な男でのう。わたしのことを、じいっと見よるんじゃ」
「じっと見る?」
どこかで聞いたような気がした。
「じっと見るだけですか?」
「そうじゃ。恨みが籠もったような目で、じーっとな……。それに見られるたびに、わたしは震え上がってしまうんじゃ……」
たしかに、この話はどこかで聞いた。それも近い過去に。
わたしの頭がいくら悪いといっても、高宮秋子の症例に結びつくまでにさほど時間はかからなかった。
「いけませんね」
わたしは冷静な口調でいった。
「いけませんか?」
青年が、不安そうにつぶやいた。
「こういう症例を見たことがあります。もしかしたら、この人の不調も、その夢魔のせいかもしれません」
わたしの治療が原因で、別な夢魔を呼び込んでしまったのだろうか。
責任を感じた。
「いいでしょう。椎葉さん。夢に入ってみましょう」
「いいんですか?」
「準備をしていないので、今日は単に軽く潜って表層を調べるだけですがね」
「すみませんのう……」
「ばあちゃん、身体が不調だったら、どんな小さなことでも、もっとどんどん先生にいうべきだよ」
老婦人の孫らしい二十歳くらいの青年が叫んだ。
わたしもうなずいた。
「その言葉に、間違いはありません。どうあれ、体調が変化したようでしたら、積極的におっしゃってほしいものです」
とはいえ、ただの風邪で呼びつけるのはなしにしてほしい。
「先生?」
青年がいった。
顔色を読まれたか。わたしは、慌ててなんとか真面目な表情を作った。努力だけは認めてほしいものだ。
幸いなことに、青年も老婦人も、わたしをそれ以上追及することはなかった。
「そうですね、椎葉さん」
妙な一瞬の沈黙を破ってわたしは問いかけた。
「どのような夢をごらんになられるのですか? 詳しくお話しください」
「そうですのう……」
老婦人は、身をぶるっと震わせた。
「夢に、変な男が出てきたんですじゃ……」
「どんな、変な男ですか?」
昨日の切り裂きジャックも充分変だったが。
「それが、不気味な男でのう。わたしのことを、じいっと見よるんじゃ」
「じっと見る?」
どこかで聞いたような気がした。
「じっと見るだけですか?」
「そうじゃ。恨みが籠もったような目で、じーっとな……。それに見られるたびに、わたしは震え上がってしまうんじゃ……」
たしかに、この話はどこかで聞いた。それも近い過去に。
わたしの頭がいくら悪いといっても、高宮秋子の症例に結びつくまでにさほど時間はかからなかった。
「いけませんね」
わたしは冷静な口調でいった。
「いけませんか?」
青年が、不安そうにつぶやいた。
「こういう症例を見たことがあります。もしかしたら、この人の不調も、その夢魔のせいかもしれません」
わたしの治療が原因で、別な夢魔を呼び込んでしまったのだろうか。
責任を感じた。
「いいでしょう。椎葉さん。夢に入ってみましょう」
「いいんですか?」
「準備をしていないので、今日は単に軽く潜って表層を調べるだけですがね」
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~ Comment ~
今回も見れば見るほど奥が深いですね。
ところでわたしは前作の後日談的って訳じゃ
ありませんが、今回のおバカは前作の時のような
荒れていたような不良少年から一歩前へ
進んだ存在に出来ればと思ってます。(^ ^;)
ところでわたしは前作の後日談的って訳じゃ
ありませんが、今回のおバカは前作の時のような
荒れていたような不良少年から一歩前へ
進んだ存在に出来ればと思ってます。(^ ^;)
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おバカのビルドゥングズ・ロマンというやつですか。
佳織ちゃんのような悲惨な女性が出なければいいですが……。