「ナイトメアハンター桐野(二次創作長編小説シリーズ)」
2 闇は千の目をもつ(完結)
闇は千の目をもつ 11-1
11
椎葉老婦人の夢に、なんで鈴木道徳が出てきたんだ?
わたしはビートルを走らせて診療所に戻った。走らせている間も、頭の中はそのことでいっぱいだった。
まずやるべきことは、高宮秋子に連絡を取り、その見ている夢になにか変化が起こらなかったかどうか聞くことだろう。それも、できるかぎり早く行わなくては。
電話があったら、こんなとき車内からでも簡単に連絡が取れるのだが。きょうびは街中から公衆電話が次々と消え、家と診療所の電話しか持っていない身にはなにかと不便なことが多すぎる。
持ち出しになるかもしれないが、携帯を買おう、わたしはそう心に誓った。心に誓うのは何十度目かはわからないが、とにかくそう誓った。
お巡りに捕まらないように、制限速度をきちんと守って走ってきたので、診療所に戻ったときにはいい具合に陽が傾きつつあった。今日の午後来たに違いない、逃がした客のことを考えると残念だったが、なに、わたしの仕事時間はこれからが本番だ。午後十時近くまで診療所は開けているのだから。
客が来ないうちに、やることはやっておかなくてはなるまい。
わたしは高宮秋子に電話をかけた。
発信音がした。一回……二回……三回……。
高宮秋子は出なかった。
四回……五回……六回……。
高宮秋子はまだ出ない。
十回を数えたとき、がちゃりという音が電話口の向こうでした。
「ああ、桐野ですが」
『……ただいま、高宮は留守にしております。ピーという発信音が鳴りましたら……』
わたしは鼻白んだ。
なんだよ、留守かよ。
留守電は嫌いだが、それでも用件だけはいっておくべきだろう。
わたしは発信音が鳴ったのを確認してから受話器にしゃべった。
「『桐野メンタルヘルス』の桐野です。なにか、お身体に変わったことがありましたら、連絡いただけるでしょうか。電話番号は……」電話番号をしゃべる。「……です。しばらくしたら、またかけます。それでは」
電話を切ると、わたしは再び来ない客を待ち続けた。
来ないと思ったが、嬉しい誤算だった。六時を回ったころ、親に連れられた難しい年ごろの女子高生が尋ねてきたのだ。
夢に入るには疲れすぎていたから、今日は話だけ聞いて帰した。夢に入るとしても明日以降だろう。
買ってきた「きつねどん兵衛」でも食べるか、そう思ったとき、電話が鳴った。
椎葉老婦人の夢に、なんで鈴木道徳が出てきたんだ?
わたしはビートルを走らせて診療所に戻った。走らせている間も、頭の中はそのことでいっぱいだった。
まずやるべきことは、高宮秋子に連絡を取り、その見ている夢になにか変化が起こらなかったかどうか聞くことだろう。それも、できるかぎり早く行わなくては。
電話があったら、こんなとき車内からでも簡単に連絡が取れるのだが。きょうびは街中から公衆電話が次々と消え、家と診療所の電話しか持っていない身にはなにかと不便なことが多すぎる。
持ち出しになるかもしれないが、携帯を買おう、わたしはそう心に誓った。心に誓うのは何十度目かはわからないが、とにかくそう誓った。
お巡りに捕まらないように、制限速度をきちんと守って走ってきたので、診療所に戻ったときにはいい具合に陽が傾きつつあった。今日の午後来たに違いない、逃がした客のことを考えると残念だったが、なに、わたしの仕事時間はこれからが本番だ。午後十時近くまで診療所は開けているのだから。
客が来ないうちに、やることはやっておかなくてはなるまい。
わたしは高宮秋子に電話をかけた。
発信音がした。一回……二回……三回……。
高宮秋子は出なかった。
四回……五回……六回……。
高宮秋子はまだ出ない。
十回を数えたとき、がちゃりという音が電話口の向こうでした。
「ああ、桐野ですが」
『……ただいま、高宮は留守にしております。ピーという発信音が鳴りましたら……』
わたしは鼻白んだ。
なんだよ、留守かよ。
留守電は嫌いだが、それでも用件だけはいっておくべきだろう。
わたしは発信音が鳴ったのを確認してから受話器にしゃべった。
「『桐野メンタルヘルス』の桐野です。なにか、お身体に変わったことがありましたら、連絡いただけるでしょうか。電話番号は……」電話番号をしゃべる。「……です。しばらくしたら、またかけます。それでは」
電話を切ると、わたしは再び来ない客を待ち続けた。
来ないと思ったが、嬉しい誤算だった。六時を回ったころ、親に連れられた難しい年ごろの女子高生が尋ねてきたのだ。
夢に入るには疲れすぎていたから、今日は話だけ聞いて帰した。夢に入るとしても明日以降だろう。
買ってきた「きつねどん兵衛」でも食べるか、そう思ったとき、電話が鳴った。
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