「ショートショート」
    その他

    初めての友達

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     無口なやつだ、変なやつだ。不気味なやつだ。

     それが、ぼくが津久井くんをはじめて見たときの印象だった。

     同じ印象を、クラスの他の連中も感じたらしい。転校初日、普通なら、わっと取り巻く物好き連中も、その、他人を拒絶するような、人を寄せ付けない雰囲気に、誰ひとり近づこうともしなかった。

     なぜだろう、と思わなかったといったら嘘になる。だが、その理由を聞くこと自体が、なんとなくためらわれてしまうのだ。

     それに、ぼくたちにだって、やらなければいけないことは山ほどあるし。関わりあっているひまなんかない。

     そのはずだった。その日までは。

     ぼくは、子供会が自由に使えるグランドで、思いきり遊んだ野球の帰り、津久井くんの後ろ姿を見つけた。

     声をかける気はなかった。あの、暗い目でにらまれるのがおちだ。

     ぼくは、そのまま、角を曲がって帰ろうとした。

     どん、という音が聞こえた。「馬鹿!」という声も。振り向いたぼくの横を、テレビで見たピストとかいう自転車が、猛スピードで走り抜けていった。

     悪い予感がした。ぼくは自転車が走ってきた方向を見た。

    「津久井くん!」

     津久井くんは倒れていた。どこかを打ったらしく、立てないようだ。

     ぼくは駆け寄った。

    「大丈夫か!」

    「ぼくに近づくな! ぼくは、きみを、友達と思ってしまうかもしれないぞ!」

     ぼくは、津久井くんのその言葉に、面食らった。

    「友達と思ったら、どうだっていうんだ」

    「死んじゃうぞ」

     怪我を調べるために、そばにかがみこんだぼくを、津久井くんは、どこかおびえた目で見た。

    「どうして死ぬんだよ」

    「それは……」

     津久井くんは、痛みに顔をしかめながら、前の学校でのことを話した。

    「ぼくには、前の学校で、三人の友達がいたんだ。だけど、遠足のとき、バスが事故にあって……」

    「それで?」

    「その三人だけが、死んじゃったんだ。ぼくや、ほかのクラスのみんなは、かすり傷だったのに」

    「あきれたやつだな」

     ぼくは、心の底から腹を立てていった。

    「だから、友達がみんな死ぬって? じゃ、きみにとって、クラスのほかのみんなは、友達でもなんでもない、ただの誰かだっていうのか? そんな自分勝手なやつと友達になるなんて、こっちからお断りだ!」

     津久井くんの怪我は、ただの打ち身のようだったが、歩いて帰るには、難しいかもしれなかった。

     ぼくは津久井くんに肩を貸した。そのまま、教えられるままに津久井くんの家まで歩いた。

     帰り際に、ぼくはいった。

    「いいか。ぼくは、きみみたいなやつとは、友達でもなんでもないからな」

     そのままぼくは、後ろも振り向かないで家へ帰った。



     次の日の放課後、ぼくがいつものように野球を友達とやっていると、誰かが思いつめた顔でやってきた。

     津久井くんだった。手にはノートを持っていた。

    「スコア、つけさせてくれないか」

     みんなが驚いた顔をする中、ぼくはうなずいた。

    「そこのベンチに座れよ」

     それが、ぼくたちと津久井くんが、友達になった最初の一歩だった。

     津久井くんにとっては……初めての、ほんとうの友達だったんじゃないかと、ぼくは思う。
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    ~ Comment ~

    Re: YUKAさん

    もしかして、わたし、バッドエンドを期待されているのか?(^_^;)

    そうでなかったら、よほど信用がないらしい(笑)

    Re: レルバルさん

    ……来て止まる。(笑)

    Re: ヒロハルさん

    よく考えたら、この話、オチがなかったな(汗)

    オチがないほうがいい話もあるってことで……(逃げ?)

    わたしとリンクしている人も、けっこうな割合でしくしく(T_T)

    そして次の瞬間……ダンプが目の前に……。

    続くんですか? このお話。
    いいえ、時には続かないほうが美しいこともある。このお話はまさにそれですね。

    ところで私とリンクした人は、次々にブログを辞めていかれるのですが、なぜでしょう?
    死神ですよ。私は。

    こんばんは^^

    よかった~~
    小学生らしくて、何だか凄く嬉しい^^

    そうそう。
    ヘンな思い込みって小さい頃はありました。
    彼はとても傷ついてたんだなぁ。

    よかった。バッドエンドじゃなくて^^

    Re: ダメ子さん

    少年たちの友情物語が書きたくなって、こういう話に。

    このシチュエーションでバッドエンドにしたら、わたしの寝覚めが悪いですので、ハッピーエンドでガマンしてください(^_^;)

    絶対バッドエンドだと思ったら…
    これでバッドエンドを予想するような奴だから
    友達ができないのかなあ…?

    Re: ミズマ。さん

    ホラーやミステリばかりでも精神衛生に悪いので、たまにはこういう話を書かなくちゃ、であります。

    わたしらしくない話かなあ(笑)

    どんなホラーになるんだろう、とドキドキしてしまいました(^-^;
    少年たちの友情に乾杯です。彼らにはずっと「友達じゃない」友達付き合いをしていって欲しいものですね。

    でもここからホラーとかミステリーに方向転換することも可能ですよ、ポールさん!←
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