「エドさんとふしぎな毎日(童話)」
    エドさんと緑の森の家(童話掌編シリーズ・完結)

    エドさんと緑の森の家・10月28日

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    「便利屋さん。わたしは、あなたに謝らなくてはいけません」

     珍しく司祭さまは、エドさんの家へやってきて、開口一番、そういいました。

    「謝る?」

     エドさんとクロエさんは、顔を見合わせました。

    「なにか、わたしたち、司祭さまに謝られるようなことをしましたっけ?」

    「悪魔の存在についてです。彼らは、現実に存在しているのです。わたしは、それを思い知らされたのです。せいぜい、心の中の問題だと思っていたことを、あなたに詫びねばなりません」

    「どういうことですか?」

    「わたしは調べました」

     司祭さまはノートを取り出しました。

    「あの日、あなたに投げかけられた言葉は、あまりにもひどすぎました。だから、その言葉を、いったい誰が発したのかを知りたかったので、あそこに集まっていた人々全員に、誰の声か聞いてみたのです。全員が全員、同じ答えをしました」

     司祭さまは、ノートを広げました。

    「『この村の誰かの声であることには間違いがないが、誰がしゃべった声なのかはわからない』というのが、その答えでした。しかも、誰かをかばっている、というわけではないようなのです」

    「つまり……その声は、この村の人間のそれに見せかけた、第三者によるものだと?」

    「そうとしか考えられません。そんなことができるのは、悪魔くらいのものでしょう。ちょうどいいタイミングで、悪意に満ちた言葉を投げかけることにより、人々の不安をあおり、この村に不穏な空気を呼び込もうとするなんて、人間のやることじゃありません」

     クロエさんが、青ざめた顔でいいました。

    「それで、わたしたちに何ができるんですか。対抗するには、どうしたらいいんですか」

    「相手が超自然的存在なら、こちらも超自然的な神の恩寵を期待するしかない、というのが、今のところの現実です。わたしも、人々の心に平安をもたらすためにできる限りのことをするつもりですが」

     司祭さまはグレンに視線を移しました。

    「グレンくんは、妖精なんですよね」

     エドさんはうなずきました。

    「わたしたちはそう信じています」

    「わたしもそう思います、便利屋さん。しかし、この子が悪魔の一族のものだというまことしやかな噂が流れています。それも、発信源は不明です。注意なされるべきですね」

    「なんてことだ。それも、悪魔の?」

    「わたしはそう思います。一度、グレンくんに、神の祝福を与える必要があるでしょう。とりあえず教会に、グレンくんの身を、少しの間、預けてはいただけないでしょうか?」

    「そうしていただけると……」

     クロエさんが答えかけたときです。

    「できません!」

     エドさんは大声で答えました。

    「なぜですか?」

     司祭さまは、びっくりしたようでした。エドさんは、その顔をにらみつけました。

    「なぜなら、あなたは、司祭さまじゃないからだ。人間の耳とはおかしなもので、誰かがしゃべった言葉は、誰かの声として認識してしまう。だから、あのノートには、誰の声だかわからない、ではなくて、あの人に似た声だ、この人に似た声だ、と書かれていなければおかしいはずだ。そもそも、聖職者であるあの人は、ノートなんか見せないだろう。違うかな? 地獄の国税局!」

    「わたしをも疑うんですか?」

     司祭さまは、悲しげな表情になりました。その顔を見て、エドさんに、クロエさんが何か言葉をかけようとしたときです。

     玄関の呼び鈴が鳴りました。

    「わたしは、これで失礼しましょう」

     玄関に来訪者を迎えに行った司祭さまは、立ち上がると、裏口のほうへ行こうとしました。エドさんはいいました。

    「なぜ、裏口から出る必要が?」

     玄関で、クロエさんが悲鳴を上げました。

    「あなた! 司祭さまが尋ねていらっしゃったわ! いったい、どうなっているの!」

     ついさっきまで、『司祭さま』だった男は、それを聞いてにやりと笑いました。

    「さすが探偵、用心深い。しかし、いつかグレンをいただきに参りますよ。では失礼!」

     悪魔はするりと閉まっているはずのドアを抜けて立ち去っていきました。

     エドさんは立ち尽くすしかできませんでした。そこに、本物の司祭さまが、クロエさんといっしょに、部屋に入ってきました……でも、ほんとうに司祭さまなのでしょうか?

     人は、信じていいものなのでしょうか?


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    ~ Comment ~

    Re: けいさん

    エドさんたちも黙ってやられっぱなしになっていたりはしませんよ。(^_^)

    これからの反撃と、知恵比べにご期待ください!

    ふふふ。少しづつ盛り上がってきましたね。
    距離がだんだん近づいているような。

    預けてはいけませんっ! 良かった・・・
    つけこんできますねぇ。こらこら。

    でも、守ってばかりでも・・・
    エドさん、どうする?

    Re: YUKAさん

    エドさんたち村人側と、狡猾極まりない悪魔との、知恵の限りを尽くした死闘は、これからが本番であります。

    いやー、敵味方ともども知性のあるやつらのバトルを書くのは楽しかったぜ。

    Re: いもかるびさん

    司祭さまは立派な人です。

    イヤらしく人の心の隙を突くのが悪魔。

    ただいまです!

    まったく、油断も隙もない。。。

    人は信じなければ。

    エドさんですから^^

    なまじ権威のある人ほど呼吸するように嘘付く人が多いとかなんとか。
    ips手術な人とか。

    Re: 山西 左紀さん

    「志村ーっ後ろ後ろ!」(違)

    作品世界に慣れ親しんでこられたようでありがたいですが、

    このシリーズも再来月で大団円です(^^)

    「グレンくんの身を、少しの間、預けてはいただけないでしょうか?」
    エドさん!エドさん!こいつ怪しい!!!
    と、読んでいて思えるぐらいこのお話に馴染んできました。

    Re: レルバルさん

    イヤなやつでしょう地獄の国税局(^_^)

    でも信じないとどうしようもないですよね。
    なんというか、そういうところに付け込んでくるから悪魔は……ってなります。
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