「ナイトメアハンター桐野(二次創作長編小説シリーズ)」
2 闇は千の目をもつ(完結)
闇は千の目をもつ 11-3
一瞬、相手がなにをいっているのかわからなかった。
「……え?」
「だから、妹はペストの症状を呈したんです。しかし」
「……医者は妹さんから一切ペスト菌を見つけ出すことができなかった、ということですか」
わたしは首をひねった。
「ええ、それで病院から帰されてしまったんです」
島田春江の声は途方に暮れていた。
「島田さん、とにかく、どこか病院と連絡を取ってください。なにか新手の伝染病かもしれません」
「ええ。……それが、医者の話だと、妹はまったくの健康体だというんです。生理学的には」
「でも……?」
「そうです。妹は、今も苦しんでいます。リンパ節が腫れて、ひどく痛んでいるらしくて……。しかし、あらゆるテストは陰性で、血圧や体温やその他は正常値。これでは、医者も……」
ペストと診断するわけにはいかないだろうな。わたしはひとりごちた。
「わかりました」
わたしは、今日も満足に寝られそうもないな、と思いながら時計を見た。
六時三十分。
「いいでしょう。そちらへ行きます。住所は、東村山の……?」
島田春江は道順を教えてくれた。
「わかりました」
もう一度そういって、わたしは電話を切った。
財布とキイをつかんでビートルに向かった。昔取った杵柄の診療鞄は、車に積みっぱなしになっている。最悪な状態に陥っても、それなりのことはできるだろう。
だが、高宮秋子の家に向かうまでに、やっておかねばならないことがあった。
わたしは一軒のコンビニを見つけると、ビートルを停めて、飛び込んだ。
「これください」
「梅干しと昆布のおにぎりと、お茶ですね。おにぎりは温めますか?」
温めるわけがないだろう、と怒鳴りそうになったが、わたしはわざとらしいスマイルでその場を押し通した。
代金の小銭を払うと、コンビニの外で、わたしはおにぎりにかぶりつき、お茶で流し込んだ。
腹が減ってはいくさができないというのは真実なのだ。
腹が満たされたところで、再びビートルに乗り、わたしは東村山を目指した。
このことで高宮秋子の命に影響でもあるようだったら、寝覚めが悪すぎるところだが……。
「……え?」
「だから、妹はペストの症状を呈したんです。しかし」
「……医者は妹さんから一切ペスト菌を見つけ出すことができなかった、ということですか」
わたしは首をひねった。
「ええ、それで病院から帰されてしまったんです」
島田春江の声は途方に暮れていた。
「島田さん、とにかく、どこか病院と連絡を取ってください。なにか新手の伝染病かもしれません」
「ええ。……それが、医者の話だと、妹はまったくの健康体だというんです。生理学的には」
「でも……?」
「そうです。妹は、今も苦しんでいます。リンパ節が腫れて、ひどく痛んでいるらしくて……。しかし、あらゆるテストは陰性で、血圧や体温やその他は正常値。これでは、医者も……」
ペストと診断するわけにはいかないだろうな。わたしはひとりごちた。
「わかりました」
わたしは、今日も満足に寝られそうもないな、と思いながら時計を見た。
六時三十分。
「いいでしょう。そちらへ行きます。住所は、東村山の……?」
島田春江は道順を教えてくれた。
「わかりました」
もう一度そういって、わたしは電話を切った。
財布とキイをつかんでビートルに向かった。昔取った杵柄の診療鞄は、車に積みっぱなしになっている。最悪な状態に陥っても、それなりのことはできるだろう。
だが、高宮秋子の家に向かうまでに、やっておかねばならないことがあった。
わたしは一軒のコンビニを見つけると、ビートルを停めて、飛び込んだ。
「これください」
「梅干しと昆布のおにぎりと、お茶ですね。おにぎりは温めますか?」
温めるわけがないだろう、と怒鳴りそうになったが、わたしはわざとらしいスマイルでその場を押し通した。
代金の小銭を払うと、コンビニの外で、わたしはおにぎりにかぶりつき、お茶で流し込んだ。
腹が減ってはいくさができないというのは真実なのだ。
腹が満たされたところで、再びビートルに乗り、わたしは東村山を目指した。
このことで高宮秋子の命に影響でもあるようだったら、寝覚めが悪すぎるところだが……。
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