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    「エドさんとふしぎな毎日(童話)」
    エドさんと緑の森の家(童話掌編シリーズ・完結)

    エドさんと緑の森の家・11月25日

     ←断片012「忍び寄ってくるものだ」 →断片107「そうですか」
    「署長さん、何度もいうようですが、うちの宗派は寛容がモットーで、悪魔退治とかには距離を置いた立場を取っているんですよ。だから、そんなことをほうぼうに問い合わせているわたしは、すっかり有名人になってしまったくらいで。まるでホラー映画に出てくる聖職者の気分です」

     司祭さまは、小学校に向かう道すがら、ぶつぶつとこぼしました。

    「悪魔のやつも身を潜めているしな。有名人といえば、便利屋さん、あなたの奥さんはいったいなにをしてるんだ」

     同じく、道を歩きながら、署長さんは、グレンを肩に乗せたエドさんに尋ねました。

    「抽象画を描いてますよ。もう、一心不乱に。朝起きてから夜寝るまで、絵のことが頭から離れないみたいなんです。絵を描いている場合じゃないようにも思うんですが、あれにはあれで、なにか考えがあるらしくて」

    「話してくれないのか?」

    「話すと、悪魔のやつに聞かれるんじゃないかって、そういってました」

    「奥さんの言葉のほうに理があるな。たとえ名案があっても、口に出したらおしまいってわけか。それに対して、われわれ三人のほうと来たら、あれ以来いっこうに進まない会議を、延々とやるしか能がないと来ている」

    「カラン校長先生は、いい知恵を持っているでしょうか、便利屋さん?」

     エドさんは首を振りました。

    「あの人も、かなり自信を喪失しているみたいだし、子供たちに会わせる顔がないって、電話でいってきましたよ。むしろ、わたしとしては、チャンスだと思っているんですが」

    「……チャンス?」

     署長の不審そうなものいいに、エドさんは苦笑いしました。

    「悪魔に聞かれているかもしれませんよ」



     三人がやってきた小学校の講堂には、すでに大勢の村人が集まっていました。講壇の上に立つ校長先生は、重苦しい顔でした。

    「やあ、よく来てくれた、署長さんに、司祭さま。それに、便利屋さん」

     エドさんは、まじめな顔でいいました。

    「なにも約束はできませんが、わたしたちは、この異常な状態を元に戻して見せます」

    「そういってくれるとありがたいのだが……あいにくと、わたしは」

     司祭さまは、にこやかに笑いながら、校長先生の肩に手を置きました。

    「落ち込まないでください、校長先生。便利屋さんに、いい考えがあるようなんです」

     講堂の隅では、署長さんが退屈そうに足をぶらぶらさせていました。

    「とりあえず、あの人も、もとは腕利きの探偵だったそうだから、皆さん、便利屋さんの話を聞きましょう。なにがあるにしても、これ以上、悪くなることはないでしょう」

     エドさんは、校長先生の肩を、勇気づけるようにしっかりと抱き、マイクに向かってしゃべり始めました。

    「皆さん、皆さんをここに呼び出してもらったのは、この村を恐怖に陥れている狡猾な悪魔を罠にかけるためです。このことは、司祭さまにも、お話ししておきました。しかし、司祭さまにも、署長さんにも、どのように罠にかけるかについては、ひとことも話しておりません。それは、悪魔の好奇心を刺激して、おびきよせるためでもありました。そして、悪魔は、まんまとわたしの罠にかかったのです! つまり、普通の人間なら、一度探したところをもう一度探したりはしないだろう、とやつは考えたということです!」

     はっと気がついた司祭さまは、ポケットに忍ばせていたフラスコを取り出しました。聖水盤から仕込んできた聖水です。栓を抜くと、身動きが取れない校長先生の身体に……。

     白煙と、それとは別なまがまがしい煙が一瞬、混じり合いました。ひと目見ただけでもグレンのそれとは違う、おぞましいコウモリの翼をもった何かが、校長先生の身体のあったところから飛び立ちました。署長さんは、抜く手も見せずに銃を構えましたが、その場の人々が、悲鳴を上げて逃げ惑っていたので、狙いを定めることができません。とうとう、悪魔はどこかへ消えてしまいました。

    「悪運の強いやつだ。便利屋さん、いや名探偵、どうして校長先生が怪しいと?」

    「自信はなかったんですがね、署長さんの読みはずばりでした。あの悪魔、わたしの肩に乗った、グレンの姿が見えてません。見えていたら、『便利屋さんに、グレンくん』といったはずです」

    「それよりも、本物の校長先生を探すほうが先ですよ、名探偵さん、署長さん」

     校長先生はトイレの中で発見されました。気の毒な人もいるものです!


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    ~ Comment ~

    Re: けいさん

    全ての謎は12月のお話で解けます。(^^)

    どうぞお楽しみにしていてください!

    ぜったい満足させてみせます!!

    おお。何か緊迫してきた。
    隣にいる親しい人が、悪魔の変化だったら怖いですねぇ。

    見えないのか。見えないのになぜ追う?
    読み進めてしまうのが何だかもったいないような気もしてきました。読むけど。

    Re: limeさん

    「はい、次の依頼人は、古伊万里の壺です。オープン・ザ・プライス! ……ええっ! こんな高値が? 鑑定人のエドさん、解説を」

    「はい。さまざまな証拠から、古伊万里の壺に、間違いありません。いや~、いい仕事してますね~」

    「大事になさってくださいね。それでは、『開運! なん○も鑑定団』、次回の鑑定をご期待ください」


    ……などという妄想でふと笑ってしまった夜(^^;)

    Re: YUKAさん

    12月は怒涛のつじつま合わせ謎解きが始まりますからどうかお楽しみに。

    安易な意表を突く展開をお待ちくださいね~(^^)

    だんだんとエドさんも鑑定のプロになって、悪魔も追い詰められてきましたね。
    追い詰められた悪党は、思わぬ反撃に出ることがありますし。
    最終話に向けて、どんな展開になるのか、楽しみです。

    こんばんは^^

    やっぱり見えないのか!

    でもそこからどうするのか、さっぱりわかりません(笑)

    もう結末が来るのが寂しくて楽しみで^^

    今日も楽しませて頂きました♪
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